米が食べられない悩みから辿り着いた「豆腐が主食」という新たな選択

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豆腐マイスターの工藤詩織さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。『まいにち豆腐レシピ』(池田書店)の著者である工藤さんに、豆腐が食生活の中心になった理由、木綿豆腐と絹豆腐の違い、街のお豆腐屋さんが減り続けている現状について聞いた。

米が食べられない悩みから辿り着いた「豆腐が主食」という新たな選択

工藤さんは、幼少期から豆腐をはじめとする豆料理中心の生活を送り、大学院在学中に「食文化としての豆腐」に目覚め、「豆腐マイスター」を取得。国内外で手作り豆腐ワークショップや食育イベントなどの活動を行い、2024年11月には中央区日本橋人形町に「豆腐屋料理店 四方八方」をオープンした。

米が食べられない悩みから辿り着いた「豆腐が主食」という新たな選択

お米を食べられず、主食が豆腐になった

上柳:工藤さんは昨年2024年に、「豆腐屋料理店 四方八方」を開いたそうですね。

工藤さん:はい、11月に開店したばかりです。

上柳:場所が東京・人形町の甘酒横丁という、名店がずらっと並んでいる所で、最近だと外国人観光客の方も多く賑わっていますよね。

工藤さん:海外のお客様も多くて、まだオープンしたばかりですが可能性はすごく感じています。

上柳:豆腐のメニューが中心で、実際にお店で豆腐を作っていて、良質なタンパク質がとれそうですね。私の世代から言うと『こういうものがいいな、食べたいな』と思います。

工藤さん:お酒も進むような料理も揃えていますよ。

上柳:なぜ工藤さんが豆腐にこんなに惹かれたかというと、きっかけは米が食べられなかったからだそうですね。

工藤さん:そうなんです。幼少期の話ですが、私の家も1日3食普通にお米を食べていたのですが、1日3回も食べるのはちょっと多かったんです。たぶん、消化が遅かったのだと思います。

上柳:3回の食事で胃がもたれてしまったと?

工藤さん:はい、本当にお腹がパンパンになってしまったんです。それで、「夜はもう少し消化のいいものを食べたい」という私のわがままを聞いて、母が白米の代わりに冷ややっこを出してくれたのですが、ペロっと1丁食べたことが始まりです。

上柳:さらに牛乳も飲めないそうで……。

工藤さん:そうなんです。基本的にお腹が弱いからだと思うのですが、牛乳も苦手でした。なので、父が家の近くのお豆腐屋さんに、私が目覚める前に豆乳を買いに行ってくれたので、朝起きて冷蔵庫を開ければ瓶に入った豆乳が待っていました。牛乳の代わりにいつも豆乳を飲んでいました。

上柳:豆乳は飲んでも大丈夫だったのですか?

工藤さん:はい、豆乳は大好きでしたし、体が素直に受け付けているような感覚がありました。学校の給食でもあまり食べられず、お腹をすかせて帰ってくることもあったので、おやつ代わりに豆腐を食べていました。両親が共働きだったので、パック入りの豆腐なら火を使わず食べられますから。

上柳:エネルギー源となるお米や牛乳を食べられないということで、お父様もお母様も心配だったでしょうね。

米が食べられない悩みから辿り着いた「豆腐が主食」という新たな選択

木綿豆腐と絹豆腐の違い

工藤さん:木綿豆腐と絹豆腐の違いってご存じですか?

上柳:木綿豆腐は、きっと木綿を使っていると思うんです。だから表面に模様がつきますよね? だけどたしか、絹豆腐は絹を使っていなかった気がします。

工藤さん:大正解です(笑)

上柳:絹は使っていないけれど、豆腐の表面がつるんとしているから「絹みたいだ」ということで、絹豆腐と呼ばれているのですよね? それにしてもなぜ、あんなに差ができるのですか。

工藤さん:豆腐を固める型箱(かたばこ)に違いがあって、木綿豆腐を固める型箱には穴が開いているので、型箱の中に布を敷き、そこに豆腐を詰め、脱水をしながら上から重しをかけて、しっかり水を抜いているのが木綿豆腐です。

工藤さん:絹ごし豆腐はよりシンプルな作り方で、穴の開いていない型箱に豆乳を流し込み、にがりを撹拌して、じっと待てば完成です。

上柳:作る時間としては、どちらの方がかかるのですか?

工藤さん:木綿豆腐の方が時間はかかります。脱水にかかる時間がありますし、お豆腐屋さんによっては重しを少しずつ少しずつ重たくし、自然に水を抜く方も多いす。また、工程数も木綿豆腐の方が多くあります。

上柳:歴史的には絹ごしと木綿、どちらが先にあったのですか?

工藤さん:歴史的に先にあったのは木綿豆腐です。絹ごし豆腐の決め手は、豆乳のしっかりした濃度なので、濃い豆乳がないとピンと固まりません。ですから、絹ごし豆腐は濃い豆乳が絞れるようになってから登場した豆腐です。シンプルな工程の中にも、難しさがあるんです。

米が食べられない悩みから辿り着いた「豆腐が主食」という新たな選択

減り続ける街のお豆腐屋さん

上柳:お豆腐屋さんって朝が早いイメージがありますが、豆腐ができるまで大体どれぐらいの時間がかかるのですか?

工藤さん:前の晩から大豆を水に浸しておきますが、朝になって、大豆が水に浸されている状態から作り始めたとしても、熟成させる工程があるので1時間半~2時間はかかります。豆腐の「腐」は、中国では「熟成させる」という意味があるんです。そこからさらに、冷却する時間も入れるともう少しかかります。

朝ごはんに間に合うよう、お豆腐屋さんは明け方から豆腐作りをしていると言われていますが、豆腐作りは化学反応が連続していくような工程なので、気温があまり変化しない時間帯に作業をしたい、という考えもあるようです。

上柳:お豆腐屋さんの朝が早いのは、そんな理由もあったのですね。

豆腐作りに、にがりは欠かせないと思いますが、にがりは昔から変わらず同じものを使っているのでしょうか?

工藤さん:にがりは時代によって変化しています。「にがり」を科学的に言うと「塩化マグネシウム」という成分ですが、海水から塩を取り除いた後に残るものです。

戦時中は、にがりを使えなかった時代もあり、硫酸カルシウムが使われていたこともありました。

最近では、工業的に作る豆腐も増えていますので、そうした製法に向いた加工にがりもあるので、本当にいろいろなタイプのにがりがあります。

上柳:個人店の豆腐と、大手スーパーさんが出している豆腐では、それぞれの進化をしているのですね。ただ、個人店のお豆腐屋さんというと、昔に比べて数的には減っているでしょうね。私も『あぁ、ここのお豆腐屋さん閉まったんだな……』というお店をよく見かけます。

工藤さん:はい。昭和30年代には5万軒ぐらい、今のコンビニエンスストアぐらいあったと言われています。

上柳:家から徒歩圏内に、あそこにも、ここにもあったという感覚ですね。

工藤さん:昔は選べるぐらいお豆腐屋さんがあった、というような地域もあったそうですが、今は10分の1以下になっていて、5000軒を切って今は4000軒台ぐらいになっています。47都道府県で例外なく減っていて、年間で数百件も減少している状況です。

――ヘルシーでおいしく、栄養価も高い豆腐。しかし、昔ながらの街のお豆腐屋さんが減少しているのは寂しいもの。作りたての豆腐は香りが豊かで、口に入れると濃厚な大豆の甘みが広がるので、一度食べるとその違いに驚くはず。もし、近くに街のお豆腐屋さんがあるなら、訪れてみてはいかがだろうか。

米が食べられない悩みから辿り着いた「豆腐が主食」という新たな選択

豆腐マイスター・工藤詩織さんと上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHP(https://www.1242.com/genki/index.html)から、いつでも聞くことが可能だ。

番組情報

食は生きる力 今朝も元気にいただきます

毎週月曜・金曜 5:25頃

番組HP

「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/

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