阪神タイガースの栄養アドバイザーを担当する吉谷佳代さんが、上柳昌彦アナウンサーがパーソナリティを務める、ラジオ番組「上柳昌彦 あさぼらけ」内コーナー『食は生きる力 今朝も元気にいただきます』(ニッポン放送 毎週月・金曜 朝5時25分頃)にゲスト出演。管理栄養士、公認スポーツ栄養士である吉谷さんが、体をつくる食事、疲れをとる食事、体をしぼるための食事術について紹介した。
吉谷さんは食品メーカーで健康食品開発や、スポーツサプリメントの研究開発に従事する傍ら、管理栄養士、スポーツ栄養士として多くのアスリートへの栄養指導や食育イベントに携わる。2015年より、阪神タイガースの栄養アドバイザーを担当して筋肉強化や増量、減量など、パフォーマンス向上のための栄養指導を選手たちに直接行うほか、選手の妻たちへの栄養学・料理講習など、虎戦士たちの「食と栄養にまつわる指導」を一手に担っている。
体をつくる栄養素とは?
上柳:各球団に、吉谷さんのような栄養アドバイザーの方がいらっしゃるのですか?
吉谷さん:すべての球団にいらっしゃるかは分かりませんが、ほとんどのチームに栄養士さんがいると思います。
上柳:オリンピックでも栄養アドバイザーの方とか食品メーカーの方が帯同して、選手の食を全部見ていると聞きますが、今はそういうものなんですね。
吉谷さん:そうですね、食から選手をサポートすることは主流となっています。
上柳:吉谷さんが監修された『阪神タイガース認定レシピ集 トラめし 強い体、疲れない体をつくる!』(講談社)の中で、“トラめし”3つの特徴として「体をつくる」「リカバリーする」「体をしぼる」と書いてありますね。
吉谷さん:これは、阪神タイガースさんの中で1番多い3つの課題なんです。体をどうやったら筋肉を大きく、強くできるか。日々の試合で疲れがたまる中で、どうリカバリーしていくか。体脂肪をどうやって減らすのか、という3つの悩みに対してどんな食事をしていくかを本にまとめています。
上柳:スポーツをやっていて『体をつくりたい』『体重や筋肉をつけたい』と思われている方にも参考になりそうですね。
吉谷さん:体をつくる、筋肉をつくる為にはやっぱり筋肉の材料になるものが必要です。世の中的にはタンパク質をたくさん取らなければいけない、というイメージがあると思いますが、実は、私たちが1番たくさん取らなければいけない栄養素が「炭水化物」です。ぜひ、タンパク質と炭水化物をセットでとっていただきたいです。
上柳:タンパク質ももちろん重要だけど、それと同じぐらい炭水化物も体づくりにも重要なんですね。高校生とか中学生でいま一生懸命に体づくりをしている方も、お米を食べることもやっぱり大切なのでしょうね。
吉谷さん:そうですね。
疲れをとる食事 その1~究極の3点セット~
上柳:私なんかは疲れを断ち切りたいわけですけど、疲労がずーっと続いてる感じがするんですよ。選手たちはどういう風に疲労回復されているのですか?
吉谷さん:疲れた後に何を取るかというのが大事で、私がいつも究極の3点セットとして「炭水化物・糖質」「ビタミンB1」「アリシン」を提案しています。
炭水化物・糖質は世の中的にはちょっと避けられていますが、糖質・炭水化物が不足してくることによって、疲れがどんどん溜まってきてしまうんです。体を動かしたら、動かした分の炭水化物を取ってほしいです。
上柳:糖質・炭水化物の摂取はなんとなくわかりますが、ビタミンB1は何を食べればいいのでしょうか?
吉谷さん:ビタミンB1の代表的な食べものは豚肉で、とても豊富に含まれています。他にも、豆製品にビタミンB1は多く含まれていますので、納豆を食べたり豆乳を飲んだりするだけで、ビタミンB1がとれます。
上柳:豆乳はなんとなく『体にいいんだろうな』と思って飲むことがあるのですが、疲れた後に飲むといいのですね。最近はコンビニでも豆を使ったサラダとか、豚肉のサラダとかありますよね。
吉谷さん:おかずサラダみたいなものが今流行っていますよね。
上柳:アリシンをとるためには何を食べればいいでしょうか?
吉谷さん:アリシンは、においのする野菜をイメージしていただくと分かりやすいです。
上柳:におい?
吉谷さん:例えばネギ、ニンニク、ニラなどです。「香味野菜」と言われるにおいが強い野菜の、においの成分がアリシンです。
上柳:炭水化物、ビタミンB1、アリシンの3つが合わさることで、体の中のエネルギーが非常に回りやすくなるので、疲れたところに栄養が行き届くようなイメージです。
疲れをとる食事 その2~ビタミンACE(エース)~
吉谷さん:運動で体を動かしたことによって疲れが出たり、あるいは、最近は紫外線が強いので日光の影響で体が疲れ、活性酸素がたくさんできてしまいます。
上柳:「活性酸素」ってよく聞きますよね。
吉谷さん:活性酸素は、紫外線を浴びたり、酸素を吸うだけでも体の中にポコポコと出てきます。そんな活性酸素を取り除いてくれるのが「抗酸化」と言われているものです。
上柳:「抗酸化」という言葉もよく聞きますね。
吉谷さん:抗酸化パワーのある食材は本当にたくさんありますが、その中でも抗酸化作用のあるビタミンがあり、「ビタミンACE(エース)」と言います。ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEの3つのビタミンを総称しています。選手にも「ビタミンACEを積極的にとるように」と伝えています。
上柳:ビタミンACEをとるためには、具体的にどんな食べ物を選べばいいですか?
吉谷さん:色の濃い野菜やくだものです。いわゆる「緑黄色野菜」と言われているものに共通してビタミンA、ビタミンC、ビタミンEが結構含まれています。
食事をぱっと見ていただいて、彩りがあればある程度のビタミンACEが入っていと思っていただいて良いと思います。具体的には……
・パプリカ
・アボカド
・カボチャ
・にんじん
・アーモンド
・ツナ
・オレンジ
・キウイ
などが代表的な食べ物です。
疲れをとる食事 その3~発酵食品と食物繊維~
吉谷さん:他にも、お腹を強くすることも非常に重要なポイントです。
上柳:お腹を?
吉谷さん:体が疲れるか疲れないかは、腸が元気かどうか、ということに繋がってきます。腸が弱ってくると風邪も引きやすくなりますし、疲れも溜まります。選手にも「腸をとにかく強くするための食事をとりましょう」と伝えていて、発酵食品や食物繊維のある食品を勧めています。
上柳:いわゆるお腹の調子を整えてくれそうな食品ですね。
吉谷さん:食物繊維は野菜、キノコ、海藻などでしっかり取っていただきたいです。タイガースの選手にはみそ汁やお鍋を頻繁に出していて、どちらも具だくさんにして食物繊維を取っていただくようにしています。
体をしぼるための食事術
吉谷さん:「体をしぼりたい」というお悩みもたくさん寄せられます。皆さん、体をしぼるためにお米をカットされる方がとても多いですが、実はスポーツ選手にもそういう方が多いです。
しぼった体を維持させたいなら、炭水化物や糖質ではなく脂質カットがいいです。悪さをするのは体脂肪なので、脂質をカットする考え方の方が体を絞る近道です。
上柳:普通の家庭で脂質をカットするには、どんなことに気を付けたらいいですか?
吉谷さん:キーワードは「見える油を取らない」です。例えば、お肉の脂身は食べないようにするとか、普通のヨーグルトではなく低脂肪ヨーグルトを買うといいです。
――疲れた後に何を食べるかで、回復を早められる。運動後や忙しい一日の終わりに、正しい栄養を摂取すれば体の疲労を効率よくリセットできるので、「香味野菜」「緑黄色野菜」「発酵食品」などを積極的に取り入れれば、体はスムーズに回復し、翌日からのパフォーマンスも向上していくはずだ。
阪神タイガースの栄養アドバイザー・吉谷佳代さんと上柳昌彦アナウンサーの詳しいトーク内容は、「食は生きる力今朝も元気にいただきます」特設コーナーHP(https://www.1242.com/genki/index.html)から、いつでも聞くことが可能だ。
番組情報
「上柳昌彦 あさぼらけ」内で放送中。“食”の重要性を再認識し、「食でつくる健康」を追求し、食が持つ意味を考え、人生を楽しむためのより良い「食べもの」や「食事」の在り方を毎月それらに関わるエキスパートの方をお招きしお話をお伺い致します。
食の研究会HP:https://food.fordays.jp/