タマゴが先か? ニワトリが先か? 勢力拡大の手法
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ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム「報道部畑中デスクの独り言」(第405回)
今月、出自が同じ2つの野党の党大会が相次いで開かれました。
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左:国民民主党大会(2月11日撮影)、右:立憲民主党大会(2月24日撮影)
2月11日、東京・両国では国民民主党が党大会を開きました。拍手の代わりに議員らがスティックバルーンをたたき、古川元久代表代行が気勢を上げた後、キャノン砲から金銀のテープが噴き出す場面は、イベントのファンミーティングのような趣がありました。
「まだまだ力が足りない。党が大きくなることが必要。調子にのったりおごったりすることなく、等身大で党勢を拡大し、前に進まなくてはならない」
古川代表代行はあいさつで党勢拡大への意欲を示しました。その上で、「三党協議は安易に妥協するつもりはない」として、いわゆる「年収103万円の壁」の178万円への引き上げの実現を、引き続き与党に対して求めていく考えを強調しました。
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記者会見する国民民主党・古川代表代行
榛葉賀津也幹事長も登壇。本来は幹事長として党の活動方針、予算・決算報告の場でしたが、「詳しい数字は出てきません。ほとんど“演説”です」と笑いを誘い、“熱弁”をふるいました。
「絶滅危惧政党、支持率はほぼ視力検査と同じだと言われたが、ここまで踏ん張って支援者から期待されるようになった」とこれまでを振り返り、7月の参議院選挙に向け、1人区をはじめ、積極的に候補者を擁立する考えを示しました。2人区も現職連合推薦のいない選挙区での擁立を目指します。
さらに、現在役職停止中の玉木雄一郎代表に向かって「訳あって表舞台に出ることにできない政治家がいる」と前置きし、「この党にはあんたが必要だ! もう一度われわれと先頭になって一緒に汗を流していこう」とエールを送りました。
その玉木代表は、党大会終了後、報道陣に囲まれます。榛葉幹事長のエールについては「一丸となって頑張ろうという激励をいただいた」と神妙に語り、参院選に向けては「できるだけ立てられる所に立てていく。国民民主党としての受け皿を選挙区でもつくっていくという公党としての責任。われわれに対する期待は国民からの“SOS”だ」と述べました。
2月24日には立憲民主党が国会近くのホテルで党大会を開きます。大会実行委員長の鎌田小百合議員が拍子木を鳴らしながら講談調であいさつ。求職者支援制度、子ども手当の導入、高校授業料実質無償化……、民主党政権時代の“実績”を強調していました。新年度の活動計画では夏の参院選で「与党の改選過半数割れを目指す」と明記しました。
「何が公開か! 顔を洗って出直してきやがれ、こんちくしょう」
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記者会見する立憲民主党・野田代表
野田佳彦代表はあいさつで啖呵を切りました。企業・団体献金の廃止をめぐり、自民党が「公開」を主張する企業・団体献金の公開率が5.6%であることへの憤りでした。
高額療養費制度の利用者負担上限額の引き上げ凍結にも活路を見出したい考えです。「命がかかっていることをいつまでも決断しないのなら、戦闘モードに入る」と覚悟を示しました。そのほか、選択的夫婦別姓制度の導入を目指す考えも明らかにしました。
一方、昨年の衆議院選挙では148議席を獲得したものの、他の野党の陰に隠れがちなのも事実です。教育無償化を訴える日本維新の会が、新年度予算案の修正で与党と合意。「年収103万円の壁」の見直しで国民民主党は与党と協議を続けています。立憲民主党との政策協議は乏しく、野田代表が掲げる「熟議」は不十分なのが実情です。
「影薄いぞとよく言われる。叱咤ばかり受ける」
野田代表はこんな声が多いことを挙げた上で、「横糸を通していくのが役割」と、野党連携の重要性を強調しました。
2つの党大会で明確に感じたのは、党勢拡大の手法をめぐる相違です。国民民主党は上昇中の政党支持率に自信を深め、単独での勢力拡大を鮮明にしています。とは言え議席は衆議院で立憲民主党の5分の1以下。野党第一党の立憲民主党は政権交代を目指して他党との連携を模索します。野田代表は「国会を動かすのは政党の支持率ではない、政党間の信頼関係ではない議席の数、リアルパワーだ」と与野党協議で先行する各党をけん制しました。
「ひとかたまり」になることで政権交代を目指すのか、政策実現のためにキャスティングボートを握るのか……。目指すゴールは同じだとしても、タマゴが先か、ニワトリが先かの議論のようです。
大所帯になると、主義主張をめぐって分裂を繰り返してきたのも歴史が示しています。当時、旧民主党の関係者が野党時代、「政権を取れば分裂することはない」と、政権奪取の重要性を強調していましたが、民主党政権の時は消費税増税をめぐって、党が分裂、少数与党に転落しました。
そんな中で、自民党には主義主張が違っても最終的にはまとまるという「権力維持装置」が備わっているように見えます。一時期を除いて60年以上に及ぶ政権が続く中で培われたノウハウでしょうか。その是非はともかく、野党が同様の装置を備えることができるのか、あるいは全く別のメカニズムを構築するのか……、その答えは見つかっていません。この夏の参議院選挙で明らかになるでしょうか。
2つの党大会に出席した人物がいました。両党の支援団体である連合の芳野友子会長は両党に対し、「連合と3者で心を合わせる、力を合わせる体制を早期に構築してほしい」と願いを込めました。両党を支援する連合の悩みも続きそうです。
(了)