陶芸の常識に挑戦する作品を次々に発表し、焼き物のイメージを変えた、ある陶芸家 【10時のグッとストーリー】

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陶芸の街として知られる、岐阜県土岐市(ときし)。
茶人・古田織部(ふるたおりべ)が「織部焼」(おりべやき)を始めたことでも名高いこの地にアトリエを開き、海外でも高い評価を得ている若き陶芸家がいます。
青木良太さん、37歳。

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山奥にあるアトリエを覗くと、ラップミュージックが “爆音”で鳴り響く中、片耳にピアス、頭に黒いターバンを巻き、コム・デ・ギャルソンを着た青木さんが、黙々と作業をしています。
そして、壁には日の丸が・・・青木さんは宣言します。

ボクは陶芸で、日本代表になりたいんです

学生時代は、陶芸とは全く無縁で、大学では経営戦略を勉強していた青木さん。
将来は好きなものを作って生活していこうと、独学で洋服やアクセサリーを作って販売。
それなりに売れたりもしましたが、今一つしっくり来ず、「何か違うんだよな…」と思っていたときに、たまたま雑貨屋さんで陶器製の湯飲みを見掛け、心惹かれたのがきっかけで、陶芸をやってみよう!と思い立ちました。

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陶芸というと『渋い』っていう印象でしたが、初めて土に触った瞬間、『ウワッ!これだ!これしかない!』と衝撃を受けて、すぐにのめり込みました

卒業したら陶芸家になろうと決心した青木さん。
どこかで基礎を学べないか探したところ、瀬戸市や常滑市など、焼き物で有名な街が研修所を開設していることを知ります。
青木さんは岐阜県多治見市の「陶磁器意匠研究所」に入所。

多治見は人間国宝がたくさん出ているので、自分も目指そうと思って。

と笑う青木さん。
研究所で熱心に取り組んだのが、釉薬(ゆうやく)の研究でした。
釉薬とは、ガラス質の「うわぐすり」のことで、陶器独特のピカッとした光沢を出すため表面にかけるものですが、そのツヤが嫌いだったという青木さん。
でも使わないと、表面がザラついてしまう・・・

じゃあ、釉薬を土に混ぜたらどうなるんだろう?

とひらめいた青木さんは、さっそく実験。

これが面白くて、意外な色が出るんです。
釉薬の調合を0.01g単位で
細かく変えていくと、また全然違う色になって、もうハマリましたね。

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「人真似はしたくない」という青木さんは、金属のような色合いの陶器も作っています。
その陰には、何万種類もの釉薬を試すという努力がありました。

また、陶器では珍しい「ワイングラス」も製作。
ガラス製と違って、陶器の場合は、焼いたときに細い軸の部分がすぐ折れてしまうため、作るのが非常に難しいのです。これも試行錯誤を重ねた末に完成。

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自分がほしいものを形にするためなら、どんな苦労も厭(いと)わないです。
ボクは、陶芸と心中する覚悟で、土と向き合ってますから。

独自の道を行く青木さん。
その斬新な作品への評価も高く、好きなものを作って食べていく、という夢も叶いました。

だから次は、陶芸界に“恩返し”をしたいんです

今から400年以上前、「茶の湯」の文化が生まれた桃山時代の陶芸家たちは、野心的な作品をたくさん作っていた。
しかしその後の陶芸家は、当時の作品を再現しているだけじゃないか…

ボクは、陶芸が廃れていったのは、それが原因だと思うんです。
桃山時代の陶芸家のように、その時代に合った新しい焼き物を作らないと。

後継者難に悩む陶芸界ですが、青木さんのように、意欲的な作品を作っている若い陶芸家は全国各地にいます。
青木さんは同じ志を持つ陶芸家たちをつなげようと、2008年に作家同士の交流イベント「イケヤン」を始めました。

イケヤン」とは「イケイケヤング陶芸家」の略。

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今カッコいい名前を付けても、100年後にはダサくなるから、これでいいんです。

という青木さん。
毎年夏に、全国の若手陶芸家たちが作品を持ち寄って、飲みながら熱く語り合う・・・
そこでコンペも行われ、上位に選抜された陶芸家たちは各地で展覧会も開けるなど、今や、「イケヤン」は陶芸界の新たな登竜門になりました。

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日本には面白い陶芸家がたくさんいます。
彼らの作品をもっと知ってほしいし、
作家同士、切磋琢磨することで、陶芸界全体が盛り上がる。
そんな中で、ボクは“日本代表”になりたいんです。

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陶芸の魅力は、400年経っても作品がそのまま残ることですね。
平成の時代に、
青木良太という陶芸家がいた、と後世に伝わるような作品を作っていきたいです。

八木亜希子LOVE&MELODY

番組情報

LOVE & MELODY

毎週土曜日 8:30~10:50

番組HP

あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
今、聴きたい曲を書いて送ってくださいね。

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