さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
明日はレディース・デイ。
映画好きの女性にとっては週に一度のお楽しみ。
どの映画を観ようか、迷っている人もいらっしゃるのでは…。
そこで今回の「しゃベルシネマ」では、プリンセス気分に浸って夢見心地になれる映画をご紹介。
『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』を掘り起こします。
おとぎ話のような本当の話?!愛らしい王女の冒険ストーリー
時は、1945年5月8日。
6年間続いた戦争が正式に終わる、国をあげてヨーロッパ戦勝記念日を祝う夜。
当時19歳のエリザベス王女は「宮殿の外に出たい」と父親の国王ジョージ6世に懇願。
許可を得て、妹のマーガレットと共にバッキンガム宮殿をあとにする。
付き添いを追い払おうとするうち、マーガレットとはぐれてしまったエリザベス。
必死に妹を探しまわるうちに、エリザベスは熱狂と混乱の街中で出会った兵士ジャックと行動を共にすることに。
人生を変える一夜が幕を開ける…。
今年生誕90周年を迎え、イギリス史上最高齢・最長在位の君主、エリザベス女王2世。
エリザベス女王が登場する映画の数は非常に多く、ヘレン・ミレンの女王ぶりが素晴らしかった『クイーン』やアカデミー賞作品賞を受賞した『英国王のスピーチ』、そしてアニメとなった女王が登場した『ミニオンズ』。
こうして作品タイトルを挙げるだけでも、イギリス国民からの愛されぶりが分かるのではないでしょうか。
そんなエリザベス女王の言わば最新映画(!?)と呼べるのが、本作。
『キンキーブーツ』のヒットで知られるジュリアン・ジャロルド監督は膨大な資料や伝記をリサーチした上で、「エリザベス女王が19歳の時に、お忍びでロンドンの街に繰り出した…」という実話から着想を得て、プリンセスが自由を謳歌した“ときめきの一夜”をドラマにしました。
エリザベスとマーガレット、対照的なプリンセス像
注目したいのが、本作に登場する二人のプリンセス。
父である国王を説き伏せ、戦勝記念に沸き立つロンドンの街へと出かける二人の王女、エリザベスとマーガレット。
エリザベスには「世界でもっとも美しい顔ベスト100」に4年連続でランクインした、サラ・ガドン。
凛とした美しさと少女のような可憐さに、終始ウットリ。
民衆と共に国王の演説に耳を傾け、リッツ・ホテルでワルツを踊り、偶然出会った青年に淡い恋心を抱き…。
その一方で、街を歩きながら一般の人々の暮らしに目を向け、自分がこの先統治していくであろう国の姿をみることで、次期女王としての自覚に芽生え、王位を継承する覚悟を決めるまでの人間的な成長を、爽やかに演じています。
「責任感が強く、しっかり者の姉」に対して、妹のマーガレットは自由奔放な“やんちゃ姫”といった印象。
好奇心旺盛で危険な場所でも自ら足を踏み入れる、怖い者知らずな一面も。
「マーガレット王女をこんなにハジけたキャラクターに仕立て上げてしまって、英国王室からクレームは出なかったのだろうか」と、別の意味でハラハラすることも度々ありましたが、ベル・パウリーがチャーミングさにいつの間にかノックアウトされてしまいます。
聡明な姉と、気ままな妹。
この二人のコントラストが互いのキャラクターを引き立たせ、作品の世界観をより立体的に見せることに成功しています。
宮殿での窮屈な生活から開放されて、生まれて初めて体験する“自由”。
二人のプリンセスのドキドキ感がダイレクトに伝わってきて、観ている私たちもいつの間にかプリンセス気分!
ここでひとつ、こぼれ話を…。
カナダ出身の女優でありながら、完璧なクイーン・イングリッシュでエリザベスを演じたサラ・ガドン。
実は、彼女の祖父母はイギリス人。
そして1945年5月8日、ヨーロッパ戦勝記念日を祝うトラファルガー広場の喧騒の中に、サラの祖父母もいたとか。
ひょっとしたら、サラがエリザベス王女を演じたことは偶然ではなく、運命だったのかもしれませんね。
ハートフルでロマンティックなファンタジック・ストーリー。
あなたも映画館で、束の間のプリンセス体験をしてみてはいかが?
2016年6月4日からシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
監督:ジュリアン・ジャロルド
出演:サラ・ガドン、ベル・パウリー、エミリー・ワトソン、ルパート・エベレット、ジャック・レイナー ほか
©GNO Productions Limited
公式サイト http://gaga.ne.jp/royalnight/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/