さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回ご紹介する映画は、ある意味「しゃベル」にピッタリです。
なんてったって「喋ってるだけ」の映画ですから。
…というコトで記念すべき20回目の「しゃベルシネマ」。
映画『セトウツミ』完成披露試写会の模様を掘り起こしながら、いまノリにノっている俳優、池松壮亮さん、菅田将暉さんの魅力に迫ります。
「ただ喋ってるだけ」が、こんなに面白いなんて衝撃!
関西の高校生2人が、放課後にまったりと喋るだけ。
全編ほぼ「会話」だけの此元和津也の同名コミックを『まほろ駅前』シリーズ、『さよなら渓谷』の大森立嗣監督が完全映画化。
内海と瀬戸の他愛もない放課後の会話を描いた青春コメディ『セトウツミ』。
この映画、事件は起こりません。
青春映画ですが、爽やかな学園ライフは出てきません。
ヒロインに恋しますが、壁ドンはありません。
繰り広げられるのは、男子高校生の放課後の“無駄話”。
ただ喋ってるだけなのに、どうしてこんなに面白いのでしょうか…。
そんな映画『セトウツミ』完成披露試写会の舞台挨拶に、大森立嗣監督、池松壮亮さん、菅田将暉さんが登壇。
八雲ふみねが司会を務めました。
タイトルの『セトウツミ』とは、主人公の瀬戸と内海の名前を組み合わせたもの。
放課後は毎日塾通いのインテリ眼鏡、内海役に池松壮亮さん。
元サッカー部のお調子者、瀬戸役は菅田将暉さん。
いま映画界で引っ張りだこのお二人、本作では息の合った掛け合いを見せています。
このツーショット、どことなくベテラン漫才師のような感じがしなくもなく…。
舞台挨拶でのトークも、生セトウツミ全開です。
セトウツミ舞台挨拶篇:痛い話
原作マンガの舞台である、大阪府堺市で撮影された本作。
主人公の瀬戸と内海が放課後に立ち寄る“河原”が、メインのロケ地です。
大森監督が「ほとんど河原で座ったままのお芝居だったのでお尻が痛くなるんですよ。撮影の途中から座布団を買ってきて敷いたりしたんですけど、本番でも座布団を敷いたまま撮影しちゃって。それで撮り直しになったこともあったよね」と話したことから、「お尻が痛かった」撮影当時を懐かしむ3人。
その後、主演のお二人に撮影後のエピソードを伺うと…。
池松さん「お尻が痛かったですね…。」
菅田さん「その話、したやんか!」(関西弁でツッコミ)
池松さん「こっからや!」(ここだけいきなり関西弁)
池松さん「スタッフが買ってきた座布団が100均のヤツだったんで、あまり効果がなくて…。やっぱり…。お尻が痛かったです。」
菅田さん「結局、痛い話やん…。」
話がビミョーに落ち切らなかったものの、菅田さんに突っ込まれた瞬間の池松さん、ちょっぴり嬉しそうでした。
セトウツミ舞台挨拶篇:合格点
本作では、出演者の関西弁でのお芝居も見どころのひとつ。
池松さんは福岡出身で、菅田さんは大阪出身。
お二人とも関西弁が持つニュアンスをうまく掴んで、絶妙なお芝居を見せて下さっています。
菅田さん「上京して7、8年経つんですけど、地元にいた頃の感覚がよみがえってきました。ボケとツッコミという漫才みたいなやり取りが日常にあるのを久しぶりに(ロケ地の大阪で)感じました。」
池松さん「(関西弁は)難しいですよね…。出来ればやりたくなかったです。映画を観た関西の人のチェックが入るのも本当に嫌で…。出来れば関西では公開してほしくないくらい…。でも、喋るだけの映画で関西弁が出来てなかった意味ないですから頑張りましたよ。」
菅田さん「いやぁ〜、すごく良かったよ!」
池松さん「…。僕の(劇中の)関西弁、78点って言うんですよ。」
池松さんのマイペースな話しぶりに、肩を振るわせて笑いに堪えている菅田さん。
ナイスコンビです。
セトウツミ舞台挨拶篇:ボケる人
そんな池松さんのことを菅田さんは…。
菅田さん「こう見えて、池松くんはボケる人なんです。ツッコむのが大変でした。」
池松さん「…。」(黙って立っている)
菅田さん「別にツッコまなくてもいいんですよ。でも目の前で散らかったものは片付けたくなるし…」
池松さん「…。」(相変わらず黙って立っている)
八雲「こうしてスッと立っている池松さんからは、想像がつきませんね。」
菅田さん「ボケる人って、こうやってスッと立っていられるモノなんですよ。」
池松さん「…。」(ニヤリ)
お二人とも、早くもボケとツッコミの奥義を極めてらっしゃるようで…。
セトウツミ舞台挨拶篇:あの名作をもう一度
本作は特報として、ショートムービー3本が公式サイトで公開中。
中でも「スタンディングオベーション」という予告編は、あまりの面白さにネットやツイッターで大きな話題となっています。
せっかくの機会なので、是非ご披露いただきたく…。
と、私がムチャぶり、いや、お願いすると…。
菅田さん「……。どういうことですか???」
池松さん「もう、別料金(が欲しい)ですよ!」
二人「映画観る前なのに、ココでやるってどういうコト???」
えっと…。
ツッコミ入れるときも息ぴったりですよね、お二人さん。
しかし観客からもリクエストを受け、関西弁の見事な掛け合いで「スタンディングオベーション」を披露。
そして。
客席のファンの皆さんも一緒に、スタンディングオベーション!
生セトウツミ、ブラボー!
…と、舞台挨拶でも息の合った漫才、いえ、トークを繰り広げて下さった主演のお二人。
そんな「セトとウツミ」ならぬ「イケマツとスダ」の関係性について「仲は良いんだけどベッタリと一緒にいるわけではない。撮影の合間も別々に過ごしてたり。“ベタつかない関係”がいいですね」と、大森監督。
私も池松さん、菅田さん共に他作品の舞台挨拶でも何度もご一緒させていただいてますが、お二人が並んだだけで「セトウツミ」になってしまうのがとても新鮮でした。
内海と瀬戸は、池松さんと菅田さんのコンビだからこそ成立したと言っても過言ではないと思います。
あとになればなるほどジワジワと笑いがこみ上げてくる映画『セトウツミ』。
私にとっては、2016年公開の日本映画ベスト3に入る傑作です!
2016年7月2日から新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:大森立嗣
原作:此元和津也 (秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)
出演:池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ、鈴木卓爾 、成田瑛基 、岡山天音 ほか
©此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 ©2016映画「セトウツミ」製作委員会
公式サイト http://www.setoutsumi.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/