さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
殊に都会では、人間関係が希薄な現代社会。
ご近所にどんな人が住んでいるのか、そしてどうお付き合いをしていけばいいのか。
小さな悩みは尽きないかもしれませんが、もしもお隣さんが本作に登場するような不穏な人物だったら…。
私なら即、引っ越しすることでしょう。
そこで今回の「しゃベルシネマ」では、レディース・デイの明日、観るならこの映画!
『クリーピー 偽りの隣人』を掘り起こします。
あとからあとから不気味さが増してくる!衝撃のサスペンス・スリラー
刑事から犯罪心理学者に転身した高倉はある日、以前の同僚野上から6 年前の一家失踪事件の分析を頼まれる。
しかし事件の唯一の生き残りである長女の記憶を探るも、依然事件の真相は謎に包まれていた。
一方、新居に引っ越した高倉と妻の康子は、隣人の西野一家になんとも言い表わせない違和感を抱いていた。
病弱な妻と中学生の娘・澪と一緒に暮らす西野は、感情の起伏が激しく、どこか捉えどころがない。
彼の言動に翻弄され、困惑する高倉夫妻。
そしてある日、澪が告げた言葉に高倉は驚愕する。「あの人、お父さんじゃありません。全然知らない人です。」
『岸辺の旅』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞した黒沢清監督が、日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した前川裕の同名小説を大胆にアレンジ。
未解決の一家失踪事件と隣人一家との不可解な関係を軸に、平穏だったはずの日常が侵食されていく恐怖を生々しく描写した、サスペンススリラー。
主演を務めるのは、黒沢清監督とは4度目のタッグとなる西島秀俊。
犯罪心理学者として事件の謎を追いながら、知らないうちに大切な妻を狙われてしまう主人公・高倉を熱演。
その妻・康子を演じるのは、黒沢組初参加となる竹内結子。
隣人に翻弄され誘惑されていく女性を、情感豊かに艶やかに演じています。
そして不気味な隣人・西野を演じるのは、西島と同じく黒沢組は4度目となる香川照之。
ほか、川口春奈、東出昌大、藤野涼子といった黒沢組初参加となるフレッシュな面々が物語の重要な鍵を握る役どころを好演。
緊張と恐怖が途切れることがない、極上のエンターテインメント作品となりました。
西島秀俊×香川照之×黒沢清、名コンビと名匠が織りなす“最恐の戦慄”
繊細さの中にも獰猛な心の動きを秘めた俳優たちの動きから目が離せない本作。
中でも怪演を見せるのが、高倉家の隣人・西野役の香川照之。
元々“カメレオン俳優”の異名を持つ香川さんですが、本作での気持ち悪さと言ったら…(もちろん褒め言葉です)。
高倉家のドアを強引にガチャガチャと開けようとする時に見せる、常軌を逸した表情。
竹内結子さん演じる康子に「僕とご主人、どっちが魅力的ですか?」と迫る、ねちっこさ。
まるで獲物を狙っているかのように、大きく目を見開いて望遠鏡をのぞく姿。
いやもう、あまりにも不気味すぎて、存在そのものが気持ち悪いっ(しつこいようですが、褒め言葉です)。
香川さんの名優たるゆえんを堪能することが出来ます。
ちなみに、西島秀俊さんと香川照之さんの共演は「MOZU」シリーズや「流星ワゴン」に続いて5回目。
二人の共演は、黒沢監督たっての希望だったとのこと。
これまでにも数々の黒沢作品でその実力を遺憾なく発揮してきた、西島さんと香川さん。
「名コンビ」とも呼べる二人の息の合った演技は注目です。
『クリーピー 偽りの隣人』は、現在大ヒット公開中。
それと最後にもう一点。
ご覧になる時は、食事を済ませてから…の方がオススメです!
監督:黒沢清
原作:「クリーピー」前川 裕(光文社文庫刊)
出演:西島秀俊、竹内結子、川口春奈、東出昌大、香川照之、藤野涼子、戸田昌宏、馬場 徹、最所美咲、笹野高史 ほか
©2016「クリーピー」製作委員会
公式サイト http://creepy.asmik-ace.co.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/