吉田羊が涙をグッとこらえた訳は? 『嫌な女』“瞳組”初日舞台挨拶 しゃベルシネマ【第28回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」

ニッポン放送でもおなじみ、黒木瞳さんの初監督作品『嫌な女』がいよいよ全国公開!
そこで今回の「しゃベルシネマ」では、お祝いムードに包まれた初日舞台挨拶の模様をお届けします。

公開初日を迎える“監督”の思いとは…。

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『嫌な女』初日舞台挨拶には、黒木瞳監督、ダブル主演の吉田羊さん、木村佳乃さんに加え、中村蒼さん、古川雄大さん、ラサール石井さんが登壇。

女性陣は白、男性陣が紺がベースの衣装で勢揃い。
とても大人っぽい並びですね。

私はこれまで、さまざまな映画の初日舞台挨拶で司会を務めさせていただいてますが、その度に「公開初日という日は映画監督にとって特別な日なんだなぁ…」と、しみじみ感じます。
どんなにベテランの監督さんでも、初日舞台挨拶直前はどこかソワソワと落ち着かない様子で…。
自分が手塩にかけて制作してきた映画を、お客様にお金を払っていただいて見てもらう最初の日なワケですから、それだけでも感無量。

それと同時に、手塩にかけた“我が子”が巣立っていく一抹の寂しさを感じたり、映画を観たお客さんの反応も気になったり…。
とても複雑な心境になるという話を、何人もの映画監督から聞いてきました。

自身で映像化権を獲得してから5年。
初めて映画監督に挑んだ映画がついに初日を迎えた、この日。
黒木瞳監督の胸中は、いかがなものだったのでしょうか。

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朝早い時間の上映にもかかわらず劇場に詰めかけた、満員のお客様を目にした黒木監督。
舞台挨拶での第一声から「本当にありがとうございます。感無量です」と、声を詰まらせ瞳はウルウル。

「実は、(映画の完成まで)何度も挫けそうになりました。さらに告白しますと、撮影中も『帰ろうかな』と思ったことが一度あります」と、本音を吐露。

しかし「女優として(初日舞台挨拶の場に)立つのと、監督として立つのはまったく違って、今日はとても緊張しています。女優の時と変わらない気持ちになるように、今朝は焼きそばを食べてきました!」と、すぐにいつものお茶目な“瞳監督”に戻り、場の空気を和ませます。

黒木監督、音符で演技指導?!

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トークセッションでは、黒木瞳さんの監督ぶりが話題に。
「とても厳しい監督でした」と、撮影を振り返る木村佳乃さん。

「現場では“黒木組”ではなく“瞳組”と呼ばれていた座組。監督がお美しいので、とても華やかな現場でした」と現場の印象を語る、ラサール石井さん。

中でも登壇者全員で盛り上がったのが、黒木監督ならではの特殊な演技指導について。
「瞳さんは音にこだわる方。ナレーション収録のときに『羊ちゃん、いまのセリフはド、レ、ド、ド、でお願い』と言われて…」と、収録当時の戸惑いを語る主演の吉田羊さん。

それを受けて黒木監督が「例えば『受け入れるようになった』の『た』は、ミの音じゃないですか?」と解説すると、登壇者もお客様もポカンとした様子。

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空気を察したラサールさんが「ごめんね、ぜんぜん分かんないや(笑)」と口火を切ると、場内大爆笑。
それを受けて木村さんも中村さんも「難しいですねぇ…」と、困惑しながらも笑顔。
それでもラサールさんが「(今の話が)分かるのは、古川くんぐらいじゃない?」と、ミュージカル俳優としても活躍する古川さんに話を振ると…。

「ごめんなさい。僕、ミュージカルやってるんですけど、わからないです」と、まさかのカミングアウト。

黒木監督、敢えなく撃沈???やはり音符を使った演技指導は、黒木監督特有のものなんですねぇ〜。

吉田羊がグッと涙をこらえた訳とは…。

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お客様から登壇者へのサプライズ演出を用意されていた、この日の舞台挨拶。

私が「『嫌な女』公開初日!」と声をかけると、満員のお客様が声をそろえて「おめでとう!」と大合唱。
そして手には本作を象徴する花、ひまわりが彩られたうちわがヒラヒラ。
一瞬にして、映画館全体がひまわり畑に大変身しました。

それを見た登壇者の皆さんからは、歓声と拍手が。
そして、ひまわりに負けない明るい笑顔がこぼれました。

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そんな中、黒木監督と吉田羊さんの目にはキラリと光るものが…。

「私たちがみなさんを笑顔にしたいと思っていたのに、みなさんから元気をいただきました」と、黒木監督。
監督の言葉を聞きながら、溢れそうになる涙をグッとこらえ、笑顔を見せようとする吉田さん。

後で聞いたところによると「お客さんを笑顔にする映画なのに、この場で自分が泣くわけにはいかないと思って…」とのこと。

嬉しいとき、悲しいとき。
泣きたいときこそ、晴れやかな笑顔!
映画のテーマに伝わるような、ステキなお話でした。

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10月6日より開催される「第21回釜山国際映画祭」に正式出品されることも決まった、映画『嫌な女』。
人生いいコトばかりじゃないけれど、それを受け止めて前に進んでいく登場人物たちの姿に、きっと共感出来るハズ。

今週のレディース・デイに鑑賞するのもオススメの作品ですよ。

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2016年6月25日から丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
企画・監督:黒木瞳
原作:「嫌な女」桂望実(光文社文庫刊)
出演:吉田羊、木村佳乃、中村蒼、古川雄大、佐々木 希、袴田吉彦、田中麗奈、織本順吉、寺田農、ラサール石井、永島暎子 ほか
©2016「嫌な女」製作委員会
公式サイト http://iyanaonna.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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