いつの時代も学食はおカネがない学生たちの味方。
でも学食ってのは安い分、“揚げ物がてんこ盛りで、濃い味付けでしょ?”と思っていませんか?
そこで、大学から遠ざかってだいぶ経っている方のために、今どきの学食がどうなっているのか、新たな方向性についてお話ししたいと思います。
まず、基本的な状況として・・・学食は2極化しています。それは、「学食をなくす大学」と「学食にどんどん力を入れる大学」です。
そもそも学食というのは、ビジネスとしては儲からない。
なぜなら、学生という人数が限られたパイが、昼をメインとした短い時間にしかやってこない。
しかも単価は安い。さらに1年のうち、夏休み、冬休み、春休み、試験休みと休みだらけ。飲食業の鉄則=人数をさばく、夜営業で儲ける、といった方程式はことごとく当てはまらず、儲からない要素ばかりです。
よって、大学側が学食を運営することは珍しく、少しでも赤字を減らす方向で、生協や外部飲食店に運営してもらうなど委託することが多い。
しかし、委託としたとしても補助は欠かせず、学食はなかなか黒字にはなりにくいですから、最近は、学生数の少ない単科大学や、授業数が多く学食でくつろぐ学生が少ない理系の大学を中心に、「学食を廃止」するパターンも後を絶ちません。その場合たいてい、“コンビニがあるだけの学食”というのが常となっています。
こうしてかつて学食があったところにコンビニがポツンとある、というような寂しい状況の大学がある一方で、様々なメニューと学生が溢れる華やかな学食がいくつも誕生しています。
その代表格が、あらゆる学食ランキングで1位に輝く、東洋大学白山キャンパス。5つある学食は、メニューや雰囲気、値段、用途がいろいろで、さすが王者、バリエーションが豊富です。
中でも一番にぎわっているのが、6号館地下1階にある、1,300席もの広いスペースの学生食堂。学食に足を踏み入れると、なんともいろんな美味しそうな香りがまじりあっています。
それもそのはず、インド人が焼くナンがつく「本格インドカレー」。本格派の洋食屋が作る「とろとろ半熟オムライス」。あつあつの鉄鍋でジュージューと香ばしさで食欲がそそる「鍋焼きビビンバごはん」。~と、まるで学食とは思えない充実のフードコートなのです。
一般のお客さんも入れますし、ふと見ると、箱根駅伝ランナーのあの選手が学食で食べていたりもする。東洋大学白山キャンパスは夜間もあるので、通う学生は2万人。その学生たちの胃袋を満たす、一大飲食店となっているわけです。学食を見学にきた受験生にとっては、非常に印象がイイですから、受験生にも良い宣伝になります。
あさラジが本当におススメしたいのは、市川市にある「千葉商科大学」。
学食が素晴らしくて、地域の人たちが大勢訪れるようになった、ある意味本当に“開かれた大学に変貌した”大学です。学内にある2種類の学食を、学生のみならず、市川や松戸といった近隣の人たちが“普段使い”しているのです。
まず一つ目の学食が、ちょうど1年前にオープンしたばかりの学食「The University DINING」。
【画像】千葉商科大学「The University DINING」ホームページより
4面全部が窓で光が溢れる、建築の賞も取った大変おしゃれな空間。
学食とは全く思えないゆとりの気持ちを生み出したのは、「sign」「bills」「MAX BRENNER」などのカフェやレストランを手掛け、空間のプロデュースで業界では有名なトランジットジェネラルオフィス。
トータルで料理も手掛けていますが、小鉢を色々ならべ、見た目にもおいしそうなプレートをメニューに考案していて、これが学生のみならず、近所の主婦や子供たち、散歩がてらに寄る中高年を惹きつけているのです。
【画像】千葉商科大学「The University DINING」HPより
また、千葉商科大学のもう一つのユニークな学食が、大学で学んだ学生が開業した食堂2店舗。
ひとつは、福建省の本格的な中華が大変リーズナブルに食べられる「中華食堂 つばき」。
もうひとつが、ハンバーグなどの洋食が美味しい「レストランBENI」。
学生が運営しているからと言って全く侮れない、本格的な味でリピーターもあっという間につきました。2組の学生はすでに卒業していますが、家賃を払いながら、店の経営を続けています。「つばき」に至っては、近隣に事業拡大でもう1店舗出店予定。いま場所を探している最中のようです。
そのほか、焼き立てパンも食べられるということで、子供連れのお母さん、自習室のように使っている近隣の中高生なども連日姿が見られます。
これには、大学側もふたを開けてみてびっくり。学食が地域を結ぶコミュニケーション空間になったと言えます。
千葉の方、いちど千葉商科大学へ一度足を運んでみてはどうでしょうか?
そしてもう一カ所、学食のメニューの中身に大変こだわって、志願者を伸ばし続けている大学があります。
「タニタ」の社員食堂を有名にした管理栄養士さんの出身大学で、坂戸と駒込にキャンパスがある女子栄養大学です。
開学からおよそ80年、栄養学について専門に教える大学の学食だけあって、学生食堂は、管理栄養士がしっかり考え抜いたメニューが伝統的に作られています。
【画像】坂戸校舎 カフェテリアメニュー(平成28年7月4日(月)~7月9日(土))*公式HPより
【画像】駒沢校舎 カフェテリアメニュー(平成28年7月4日(月)~7月8日(金))*公式HPより
使われる食材の質、種類の豊富さ、調理法、微妙な味付けと、それ自体が学生にとってお手本になるメニューが毎食、学食で食べられるのです。いまや学生はコミュニケーションの苦手意識から学食に行かない者も増えていると言いますが、女子栄養大学の学生は学食利用者が非常に多い。
残念ながら、一般の人たちの利用は出来ないのですが、オープンキャンパスで高校生たちに開放される際には、やはり学食が決め手となって学生数が増加。2.5倍から3倍にも伸びたと言われています。
定食は430円。原価率がかなり高い。おかずは単品でも買える。
女子栄養大学は、食品を栄養素の特徴別に4つの食品群に分け、各グループの食品をどのくらい食べたらよいかという食事のルールをわかりやすく示した「四群点数法」でメニューを考案。20万部と大ヒットした本『女子栄養大学の学生食堂』でも詳しく載っていますから、ご存じの方も多いことでしょう。
つまり、この大学の学生は、授業でも学食でも、健康に生活していくためには、「何をどれだけ食べたらよいのか」を知ることが出来るのです。
また、女子栄養大学の学食は、他大学と違って自前で経営。他社に委託するのではなく、赤字でも、食に力を入れていることがしっかりと学生に伝わっていると言えます。
あなたの母校、そして家の周りの大学の学食はどのようになっているでしょうか?
調べてみると、面白い取り組みがあるかもしれません。
7月5日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より