さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回の「しゃベルシネマ」では、大人が楽しめる話題作をご紹介。
ニッポン放送「笑福亭鶴瓶 日曜日のそれ」でお馴染み、笑福亭鶴瓶さんが出演する映画『後妻業の女』を掘り起こします。
お金と愛と男と女が織りなす人間喜劇
結婚相談所主催の結活パーティーで知り合い結婚した、小夜子と耕造。
二人は幸せな結婚生活を送るはずだったが、2年後に耕造がこの世を去ってしまった。
娘の朋美と尚子は、小夜子が全財産を受け継ぐという遺言証明書を突きつけられる。
納得のいかない朋美が調査すると、小夜子は後妻に入り財産を奪う“後妻業の女”だということが発覚。
しかもその背後には、結婚相談所の所長・柏木がいた。朋美は探偵の本多とともに、次々と“後妻業”を繰り返してきた小夜子と柏木の悪事を暴こうと奔走する。
一方小夜子は、次のターゲットである不動産王・舟山に本気で惹かれ始め…。
長寿化・核家族化に伴い、65歳以上の一人暮らしは600万人以上と言われている現代ニッポン。
シニア世代の恋愛や結婚が以前よりもオープンになった昨今、熟年離婚やその反動での熟年婚活も増加し、いまや空前の熟年婚活動ブームとなっています。
この世相を背景に、金持ち男の後妻に入り、財産を狙う…。
それが、この映画のテーマともなっている“後妻業の女”です。
原作は直木賞作家・黒川博行氏の受賞後第一作となる「後妻業」。
シリアスでハードボイルドなタッチの原作を名匠・鶴橋康夫監督がケレン味たっぷりの人間喜劇に仕上げました。
主人公・小夜子を演じるのは、日本を代表する名女優、大竹しのぶ。
結婚相談所所長の柏木に、日本映画界でも唯一無二の個性を放つ豊川悦司。
小夜子が惚れる不動産王の舟山には、笑福亭鶴瓶。
共演には津川雅彦、永瀬正敏、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ、風間俊介…と、実力派俳優たちがズラリ。
これだけの出演者が揃って、面白くないワケがない!
エンターテイメントとしても人間ドラマとしても「傑作」の呼べる一作となりました。
人間とは、かくも欲深く愛おしいモノ!?
誤解なきようお伝えしておきますと、本作で描かれているのは「犯罪」です。
現実に起こったならば、決して笑える事態ではありません。
そんな“笑えない設定”をシュールに、コメディタッチに描いているのが本作の魅力。
その魅力を最大限に引き出しているのは、やはり俳優陣の熱演の賜物でしょう。
観客をグイグイ巻き込んでいくような濃い〜芝居に、小気味よいコテコテの大阪弁。
騙す側も騙される側も、ひとクセもふたクセもあるキャラクターばかり。
例えるなら、ソースたっぷりマヨネーズこってりの大阪名物お好み焼きのような映画…といったところでしょうか。
しかしベテランも若手も関係なくユーモラスに展開する作品世界からは、「最後にもう一花咲かせたい」という男性の、「死ぬまでオンナでいたい」という女性の、それぞれの人間の性(さが)が透けて見えるよう。
同時に、矛盾に満ちた“人間”という生き物の切なさも感じます。
それにしても、小夜子を演じる大竹しのぶさんは、同性から見てもとてもチャーミング!
オトコに狙いを定めた時のコケティッシュなまなざし。天真爛漫な笑顔。
これじゃぁ、男性が騙されるのも無理はない…といった艶やかさでした。
2016年8月27日から全国東宝系にてロードショー
監督・脚本: 鶴橋康夫
原作: 黒川博行「後妻業」文春文庫刊出演:大竹しのぶ、豊川悦司、尾野真千子、長谷川京子、水川あさみ、風間俊介、笑福亭鶴瓶、津川雅彦、永瀬正敏 ほか
©2016「後妻業の女」製作委員会
公式サイト http://www.gosaigyo.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/