さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回の「しゃベルシネマ」では、『少女』を掘り起こします。
“イヤミスの女王”湊かなえの100万部突破のベストセラー、完全映画化!
“イヤミス”という言葉をご存知ですか?
それは読んだ後、イヤ〜な気持ちになるミステリー小説のこと。
湊かなえさんと言えば、映画では『告白』『白ゆき姫殺人事件』、連続ドラマでは「夜行観覧車」「Nのために」などなど、映像化された作品のすべてが大ヒットを記録している小説家。
確かにどの映像作品もストーリーの展開から目が離せず、しかも観終わった後でなんとも言えないモヤッとした感覚が残るんですよね。
しかもそのモヤモヤを求めて、「湊かなえの小説を映画化」と聞くと観ずにはいられない独特の魅力があります。
緻密な構成と徹底した人物描写が読む人の心をとらえて離せない湊作品の中で、2009年に発表された小説「少女」が待望の映画化となりました。
高校2年生の由紀と親友の敦子は、夏休み前に転校生の詩織が「親友の死体を見た」と話すのを聞いて以来、自分も人の死を目撃してみたいという衝動に駆られるように。
そこで由紀は小児科病棟でボランティア活動を始め、余命わずかな少年たちと仲良くなって自らの欲望を満たそうとする。一方、陰湿ないじめに遭い、生きる希望を失いかけていた敦子は、誰かの死を見れば生きる勇気を取り戻せるのではないかと考え、由紀には内緒で老人ホームでボランティアをするようになる…。
「人が死ぬ瞬間を見たい」という願望を胸に過ごす、2人の女子高生の“心の闇”とそれぞれの夏休みを描いた本作。
この手のジャンルの映画は、登場する女子高生が美少女であればあるほど、より見応えも高まるもの。
知的でミステリアスな由紀役を本田翼が、過度の不安症を抱える敦子役を山本美月がそれぞれ好演。
これまでにない役どころにチャレンジしているお二人、新鮮な魅力を発揮しています。
また真剣佑、佐藤玲、児嶋一哉、稲垣吾郎ら演技派が脇を固め、湊ミステリーの世界観をしっかり構築。
監督は、美しい映像と共に多くの女性映画を手がけてきた三島有紀子監督。
“17歳”という年齢ゆえの純粋さと残酷さ、儚さと強さが交錯する中で、少女が抱える“心の闇”が浮き彫りになっていく…。
これまた“イヤミス”な映像作品が誕生しました。
劇中で度々登場する言葉、因果応報。
人は良い行いをすれば良い報いがあり、悪い行いをすれば 悪い報いがあるという意味ですが、実はこの言葉こそ本作の真テーマ。
消えたらいい
死ねばいい
自分自身に向ける「死にたい」という想い、そして他者に向ける「死ねばいいのに」という想い。
その先にある“因果応報”とは何なのか…。
女子高生の死生観を通じて人の死について深く考えざるを得ない、極上のドラマです。
少女
2016年10月8日から全国東映系にて公開
監督:三島有紀子
原作:湊かなえ『少女』(双葉文庫)
出演:本田翼、山本美月、真剣佑、佐藤玲、児島一哉、菅原大吉、川上麻衣子、銀粉蝶、白川和子、稲垣吾郎 ほか
©「少女」製作委員会
公式サイト http://www.shoujo.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/