これから日本で公開される注目作品をレポート!【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第102回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

六本木ヒルズを中心に開催された「第29回東京国際映画祭」10/25~11/3。
今年も世界中から映画人が集い、大盛況のうちに幕を閉じました。

そこで今回の「しゃベルシネマ」では上映作品の中から、これから日本でも公開となる注目作を中心にレポートをお届けします。

うつくしい熊本をいつまでも心に焼き付けて…。

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行定勲監督が、出身地・熊本の地域創生を目的とした「くまもと映画プロジェクト」で手がけた中編映画『うつくしいひと』。
過去と現在の思い出が交錯するように、美しくノスタルジックなラブストーリーです。
橋本愛、高良健吾、石田えりら熊本県出身の俳優が多数出演し、熊本城や夏目漱石旧居、菊池渓谷など、同県の名所旧跡で撮影。

本作は、行定監督がディレクターを務めた熊本県菊池市で開催の「菊池映画祭2016」で初披露。
今年4月の熊本地震以降は、各地でチャリティ上映されています。
そんな『うつくしいひと』が、東京国際映画祭で特別上映され、舞台挨拶には行定勲監督、橋本愛、高良健吾、姜尚中、米村亮太朗が登壇しました。

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「映画という形で“うつくしい熊本”を残すことが出来て良かったと、後になればなるほど思います。昨年撮影した作品なのですが、震災を間に挟んでいるので、3年くらい前のような感じなんです」と胸中を語る、行定監督。

またキャストの皆さんは、地元・熊本での撮影を楽しんだ様子。
「菊池渓谷の美しさが素晴らしくて。あんなに美しい場所があるということを、皆さんに知ってもらいたいし、行ってほしいです」と話す橋本さんの瞳も、キラキラ。

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舞台挨拶終盤には、くまモンも登場し、ひときわ賑やかに。
そして、熊本を舞台にしたシリーズ第2弾が製作されることも、発表されました。
「熊本の現状を全国の皆さんに見てもらいたい。そして震災を風化させることなく、みんなが熊本に遊びに来てくれるような映画にしたい」と、行定監督。
高良さんも、「今の熊本の姿を映像として残すことは、とても意味があること。映画の力を借りながら、恩返しすることができたらいいなと思っています」と真摯な面持ちで語って下さいました。

映画『うつくしいひと』は、全国各地で熊本支援チャリティー上映会を開催中。
またインターネットでも有料配信中で、売り上げは規定に基づき寄付されます。
詳しくは、コチラ>

日本初上映の注目作、2作品。その評判は???

来年以降に日本公開となるハリウッド大作をいち早く鑑賞出来るのも、映画祭ならではの楽しみ。
今年、八雲ふみねが注目したのは…。

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メッセージ
あの『ブレード・ランナー』続編の監督に大抜擢されたドゥニ・ヴィルヌーヴが手がける、感動のSF超大作。
名だたるSF文学賞を数多く受賞した米作家テッド・チャンの短編「あなたの人生の物語」を原作に、エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカーというア カデミー賞キャストで映画化しました。

突如地上に降り立った巨大な球体型宇宙船から発信される“ヘプタポッド”と呼ばれる知的生命体の言葉を解読するうちに、彼らが地球にやって来た驚くべき理由が明らかに。
その切なすぎるラストメッセージは、観る者も驚愕、そして号泣必至。
何よりも、結末を知るともう一度最初から映画を見直したくなるのが、この映画のスゴイところ。
いち早く本作を堪能した観客からは「傑作!」の声が続々。

日本公開は、2017年5月の予定。
その前に「第89回アカデミー賞」も賑わしそうな予感…。

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バース・オブ・ネイション
新進俳優ネイト・パーカーが7年の歳月をかけ、製作・監督・脚本・主演を務めた、魂と真実のドラマ。
1831年、黒人奴隷最初にして最大の反乱を率いた伝説的人物ナット・ターナーの、信仰と闘いの生涯を描いています。
美しく力強い映像とストーリーは観る者を圧倒。
サンダンス映画祭ではグランプリと観客賞の2冠を獲得した、衝撃作です。

何がスゴイって、これが長編初監督となるネイト・パーカーの手腕。
これほどまでに緻密に計算しつくされた映画を作ることが出来るとは、素晴らしい才能です。
映画のお手本と言われ続けているD・W・グリフィス作『國民の創生』へのアンチテーゼの意を込められた、まさに渾身の一本でした。
日本公開は、2017年の予定です。

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両作品の上映後には、映画評論家の町山智浩さんが登場。
映画を観たあとだからこそ語ることが出来る、映画解説をして下さいました。

松山ケンイチ&東出昌大が語る、国際映画祭の魅力とは。

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今年のクロージング上映作品は『聖の青春』。
伝説の棋士、村山聖の短くも激しい生涯を描いた感動作です。
上映前の舞台挨拶には、松山ケンイチ、東出昌大、森義隆監督が登壇。
八雲ふみねが司会を務めました。

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「レッドカーペットではメリル・ストリープさんや安倍晋三総理…。いや、安倍マリオさんにお会い出来て嬉しかったです」と松山さんが挨拶すると、客席からは歓声が。

さらに、国際映画祭の魅力を伺うと…。
「東京国際映画祭に参加する度に、お客さんからパワーや次へ進む勇気を貰っています」と、感謝を述べる松山さん。
一方、東出さんは「国際的な映画祭に、将棋という伝統的な文化を描いた作品と共に参加出来て嬉しいです」と、充実の面持ち。
また森監督も「静かな中にも激しさを秘めた対局は、日本が生んだ将棋ならではの魅力だと思います」と、外国人の観客に向けて本作の魅力を語って下さいました。

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舞台挨拶中盤には、リオデジャネイロ五輪メダリストの吉田沙保里選手、三宅宏実選手、羽根田卓也選手も駆けつけ、花束を贈呈。
アスリートと将棋、真剣勝負の世界についてトークを繰り広げました。
『聖の青春』は、いよいよ11月19日から東京・丸の内ピカデリーほか全国ロードショーです。

総製作費150億円!日中共同製作映画の展望が明らかに。

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東京国際映画祭会期中、日中共同製作映画『空海 KU-KAI』製作報告会見が行われました。
原作は、ベストセラー作家・夢枕漠による「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」。
遣唐使としてやっ てきた若き日の空海が、詩人の白楽天とともに、唐の首都・長安を揺るがす巨大な謎に挑むさまを描きます。
主演の空海に染谷将太、白楽天にホアン・シュアンと、日中の人気実力派俳優が共演。
メガホンを取るのは、中国映画界の巨匠チェン・カイコー監督。
総製作費150億円をかけ、巨大なオープンセットで長安の都を再現し、現在、オール中国ロケを敢行しています。

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会見には、中華人民共和国駐日本国特命全権大使の程永華氏、萩生田光一内閣官房副長官、KADOKAWA・角川歴彦取締役会長、東宝・島谷能成社長、原作者の夢枕氏、そして空海と白楽天が追いかける謎の鍵を握る女性・白玲を演じる松坂慶子さんが出席。
中国での撮影を終えたばかりの松坂さんは「長年の憧れだったチェン・カイコー監督の演出を受けさせていただき、夢のよう」と、ニッコリ。
また共演の染谷さんについて「お若いのに落ち着いていて、志も深い。天才と言われた空海にぴったりだなと思いました。撮影中も細やかにアドバイスしてくださったり、頼りがいがありました」と、お話して下さいました。

日中合作と呼ばれる映画は過去にも数多く製作されましたが、これまでの協力体制とは一線を画す新たなパートナーシップで展開する本作。
映画の完成は2017年、日本公開は2018年の予定です。

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今年は六本木ヒルズアリーナで無料野外上映が実施されるなど、映画がより身近に感じられる催しもありました。
私も、東京国際映画祭 Cinema Arenaで岩井俊二監督の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を鑑賞したり、「くまダイナー」で一流シェフによる熊本の食材を使ったお料理に舌鼓を打ったり。

映画祭では毎年、さまざまな作品の舞台挨拶やトークイベントで司会を務めさせていただいてます。
今年は上記の作品以外に、アニメーション特集「映画監督 細田守の世界」にも携わらせていただきましたが、私にとっても世界中から集まってくる映画人の方々と交流出来る、貴重な機会となっています。

さて、来年はどんな出会いが待っているのか…。いまからとても楽しみです!

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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