羽生善治三冠が語る『聖の青春』と村山聖【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第108回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回の「しゃベルシネマ」は、11/19(土)から全国公開となった映画『聖の青春』の初日舞台挨拶を通じて垣間見えた、本作の主人公・村山聖の魅力に迫ります。

この雨は、空の上にいる村山さんが降らせたのかも…。

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天才・羽生善治と並び称された実在の棋士・村山聖。
幼い頃から腎ネフローゼを患いながらも、難病と戦いながら将棋に人生を賭け、全力で駆け抜けた“怪童”の生きざまを映画化した『聖の青春』が、11/19(土)全国公開となりました。

公開を祝した初日舞台挨拶には、主演の松山ケンイチ、東出昌大、リリー・フランキー、柄本時生、森義隆監督が登壇。
さらに、スペシャルゲストとして羽生善治三冠も登場。
登壇者が語る主人公・村山聖とは…。

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都内は朝から冷たい雨が降っていた公開初日。
そんな空模様をについて 「空の上にいる村山さんの“ひねくれ”が出たなと…。僕が村山さんの立場でも、雨を降らすかなぁ…(笑)」と話し、会場の笑いを誘う松山ケンイチさん。
「今日が本当に村山さんが僕の体から抜けていってしまう日なのかも」と、ちょっぴり寂しげな一言も印象的でした。

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寂しげと言えば、村山聖の師匠・森信雄役のリリー・フランキーさん。
役作りのために20kgも増量して撮影に挑んだ松山さんですが、いまではすっかりスリムな姿に。
そんな松山さんをマジマジと見つめながら「コロコロしてる松山くんが好きだったのに…。」と、切ない表情を浮かべるリリーさん。
“師匠”という役どころを通じて見つめる村山聖は「本当に壮絶でスゴい人生。それと同時に、村山さんをここまで掻き立てる羽生善治さんという存在の大きさも実感します」。

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村山と共に切磋琢磨するプロ棋士仲間、荒崎学を演じた柄本時生さん。
左利きの柄本さんは、右手で将棋を差すことに苦労したとか。
「プロ棋士の方たちは、将棋を差す指先が美しいので、そこに到達するのはとても大変でした」。
これには、松山さんも東出さんも大きく頷いてらっしゃいました。

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羽生善治役・東出昌大さんの将棋愛と羽生さんへのリスペクトは特筆もの。
舞台挨拶中、日本将棋協会から贈呈された初段免状を、羽生善治三冠から手渡された松山さんと東出さん。
「(あまりの嬉しさに)すっかり舞い上がってます!」と満面の笑みを浮かべる東出さんに、登壇者もお客様も笑顔になりました。

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村山聖の最大のライバルであり、映画『聖の青春』のヒロインとも呼べる存在、羽生善治三冠。
スクリーンの中の東出さんがあまりにも羽生三冠にそっくりだからでしょうか、なんだか羽生三冠ご自身も出演してらっしゃったような錯覚さえ覚えてしまいます。
そして、この舞台上に羽生三冠が登場して以降、松山さんの表情が「松山ケンイチ」から「村山聖」に変貌する瞬間が何度も訪れ、まるで羽生善治&村山聖、奇跡の2ショットが実現したかのような不思議な空間に…。

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クールで飄々とした印象が強い羽生善治三冠ですが、この日は優しい表情。
「再び村山さんに会えたようで、本当に嬉しかった」と、本作をご覧になったときを振り返ります。
また「実際に村山さんが生活されていた場所はもちろんのこと、将棋会館での棋士たちの様子や対局シーンなど、昭和から平成へと変化していく当時の時代背景が忠実に再現されていて、懐かしくもありました」と、森監督の演出についても絶賛。
そしてご自身のキャラクターが映画に登場していることについては…。
「自分が出てくるのは気恥ずかしい気持ち。普通こういうのって、亡くなってからってことが多いので…」と話すと、会場からは大きな笑いが起こりました。

「映画を通じて、多くの人に村山さんのことを知ってもらえたら嬉しいです」。
その柔和な語り口から、羽生三冠もまた、村山さんの人柄や棋士としての生きざまに魅せられたお一人なのだろうかと感じました。

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森監督と松山さんが大崎善生氏による原作に出会ったのは、ともに29歳の時。
村山さんが志半ばに亡くなったのと同じ年齢です。
それから森監督は、8年の歳月をかけて本作の映画化を結実。
松山さんにとっては、ご本人がおっしゃっているとおり「一生に1本」の作品となりました。

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「この映画の中心には、いつも村山聖さんがいました。その周囲にはご両親や羽生善治さん、森信雄師匠、原作者の大崎善生さんといった生前の村山さんと親交があった方たちがいて、さらにその周りに我々が存在させてもらうことで映画化することが出来たと思います」と森監督が語るように、村山聖が持つ求心力に惹き付けられて集まった映画人が、言わば “何かに突き動かされるように”映画が完成したように思えてなりません。

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初日舞台挨拶のラスト。
松山ケンイチさんは目を潤ませながら、このような言葉で締めくくって下さいました。
「この作品を通じて、村山聖さんを愛せて幸せでした。村山さんの人生は、皆さんの人生にも何かを与えてくれると思います。映画とは、観客の皆さんとの“対局”。観た人の中に何かが生まれたら嬉しいです」。

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聖の青春
2016年11月19日から丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
監督:森義隆
原作:大崎善生(角川文庫/講談社文庫)
出演:松山ケンイチ、東出昌大、染谷将太、安田顕、柄本時生、北見敏之、筒井道隆、竹下景子、リリー・フランキー ほか
©2016「聖の青春」製作委員会
公式サイト http://satoshi-movie.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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