ゴッホもゴーギャンもビックリ?ニッポンの浮世絵師の“底力”【やじうま好奇心】

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いま、上野の東京都美術館で、『ゴッホとゴーギャン展』が開催されています。※12/18(日)まで
ゴッホとゴーギャンといえば、19世紀を代表する画家で、同居していたほどの仲良し。
この天才画家ふたりの作品を、同時に鑑賞できるということで、展覧会は連日、大変な賑わいぶり。
なんと、すでに来場者数が20万人を突破したそうです。

さて、このゴッホとゴーギャン。
「江戸時代のニッポンの浮世絵」に、大変な影響を受けたことでもよく知られています。
とりわけゴッホは、浮世絵にホレ込むあまり、浮世絵ソックリの油絵作品を、何作も描いたほどです。

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⇒ゴッホが歌川広重の浮世絵に影響を受けて描いた『雨中の橋』。絵の周りには、ゴッホが書き連ねた「謎の漢字」が並んでいる。

さて、皆さんは、「江戸時代のニッポンの浮世絵」と聞くと、どんな絵を思い浮かべるでしょうか?
切手で有名、菱川師宣の『見返り美人図』…
あるいは東洲斎写楽の『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』…
人それぞれ、さまざまな浮世絵が思い浮かぶことでしょう。

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見返美人図 菱川師宣

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三代目大谷鬼次(二代目中村仲蔵)の江戸兵衛・寛政六年五月江戸河原崎座上演『恋女房染分手綱』 東洲斎写楽

実は、これらのニッポンの浮世絵には、ある「共通点」があります。(お気付きでしょうか?)
それは、ズバリ… 「写実的な絵ではない」というところ!

ヨーロッパでは、そこにあるモノを忠実に絵筆で再現する「写実画」が発達してきました。
まだカメラがない時代、王族、貴族が画家を雇いまして、自分の姿に忠実な肖像画を描かせた…
これが、ヨーロッパにおいて、写実画が発達した、おおきな理由のひとつだとされています。
ところが、浮世絵に代表されるニッポンの「昔の絵」というのは、なぜか、写実画とは程遠い。
写真と見まごうばかりの写実的な絵というのは、ちょっと見当たりません。
どれもが、大胆にデフォルメされています。
※まぁ、だからこそゴッホは、「なんて大胆なデッサンなんだ!」と、衝撃を受けたワケなんですが…

「いったいなぜ、日本では、立体的な写実画が発達しなかったのか?」
実はコレ… 専門筋の間でも、日本美術界における「大きな謎のひとつ」とされてきたんです。

筆を握れば、自分が見えているとおりに書きたくなるのが、画家たるものの本能とも思えます。
それなのに…
いったいなぜ、日本には(ごく一部の例外を除き)まるで写真のような絵が残されていないのか?

この理由に関しては、諸説ありまして、いろんなヒトが、いろんなことを言ってます。

あるヒト、いわく…
「浮世絵は木版画だから、奥行きのある陰影をつけるのが難しい。ゆえに、写実画が発達しなかったのだ。」

またあるヒト、いわく…
「江戸時代の日本人たちは、世界一、識字率(※「読み書き」率)が高かった。西洋では、文字の代わりに絵で情報を伝えようとして、それが写実画の発展に繋がった。ところが、読み書きができる日本人たちは、そこまで絵というものに必要性を感じなかったのだ。」

またあるヒト、いわく…
「日本では、昔から、写実的に描くと魂が抜かれる…という考え方があった。のちに外国からカメラが入ってきたとき、みんなが写真を撮られるのを嫌がったことからも、この考え方が全国にあまねく広まっていたことが分かる。だから、写実画が発展しなかったのだ。」

まさに議論百出、さまざまな理由が隠れていそうですね。
さぁ、ところが… ごく最近になって、なんと!
「江戸時代のニッポンにも、恐ろしくリアルで写実的な絵が、確かに存在した!」
「しかも、その絵を描いたのが、浮世絵界の、超大物だった!」
…そんなことが分かりまして、世界の美術界に、衝撃が走っているんです。

つい先ごろ10/22日、ある地方紙で、以下のような内容のニュースが報じられました。
オランダにある「ライデン国立民族学博物館」が、江戸時代の日本の風景とみられる絵画6点を所蔵していました。
これらの風景画は、日本にいたシーボルト医師によって持ち帰られたものでした。
なにしろこの風景画、ものすごくリアルに描かれていますから、博物館の職員たちも、「西洋の画家によって描かれたものだろう」と信じて疑いませんでした。

ところが… 調査の結果、この絵を描いた人物とは、誰あろう…
江戸時代の浮世絵師、「葛飾北斎」が描いた可能性が高いことがわかったんです!
※シーボルトの子孫が所蔵していた目録と照らし合わせたところ、「北斎が我々(西洋)のスタイルで描いたもの」という記述が見つかった!

葛飾北斎が描いたとみられる絵(ライデン国立民族学博物館提供)

⇒葛飾北斎が水彩絵の具を使って描いたことが判明した「写実的風景画」のひとつ。輪郭を黒く縁取りした後に色付けしていた当時の日本画と違い、縁取りがまったくない点も西洋画の影響が見て取れる。※『西日本新聞』より

~生前の葛飾北斎と、シーボルト医師は、長崎で出逢ったことがあったのだそうです。
天才・北斎は、絵心もあったシーボルトから西洋画の描き方を訊き、サラサラ~~ッと「超写実画」を描いてみせた… というのが「真相」のようです。

さらに、天才が天才を生んだ… という話があります。
葛飾北斎の娘さんで、葛飾応為という浮世絵師がいました。
この女性が描いた現存する作品は、10点前後と非常に少ないんです。
ですから、長い間、お父さん、葛飾北斎の影に隠れまして、あまりスポットが当たることがなかったのですが…
人によっては、娘さんの葛飾応為を、「父親以上の天才画家だ」と評する向きもあるんです。
なにしろ、その作品のほとんどが、当時としては異例の描き方で、「おそろしくリアル」なんです!

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葛飾応為『吉原格子先之図』

この「葛飾北斎、葛飾応為」という親子の例ひとつをとっただけでも、「一流の浮世絵師は、写実画を、“描こうと思えば描けた”」ことが分かります。
さしものゴッホも、浮世絵師のこうした凄みは、知らなかったのではないでしょうか?

ちなみに、折も折、この娘さんのほうの「葛飾応為」を主人公とした日本のアニメーション映画が、話題を呼んでいます。
その名を『百日紅(さるすべり)~Miss Hokusai』※2015年公開/原恵一監督。

女優の杏さんが応為の声を務めているコチラの作品、非常に評判がよろしいようで、新海誠監督の『君の名は。』と並びまして、来年のアカデミー賞長編アニメ賞にエントリーされることが分かりました。

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かつてゴッホやゴーギャンを驚かせたニッポンの作品が、
時を経て、こんどは「ジャパニメーション」として、またもや世界を驚かせつつある…。
なんだか嬉しくなってくるじゃありませんか。

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11月30日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

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