早朝の和歌山線・橋本駅にやって来ました。
和歌山線は、奈良県の関西本線・王寺(おうじ)駅と和歌山駅を結ぶおよそ88キロの路線です。
橋本駅は、人口64000人あまりを擁する紀の川沿いの町「橋本市」の玄関口。
県庁所在地・和歌山からは、和歌山線の各駅停車で1時間程かかります。
訪れた時間は、かつて京阪神の新快速として活躍した「117系」電車が朝夕の通勤通学列車として停車中でした。
橋本は、南海高野線との接続駅でもあります。
「こうや」などの特急に乗れば、大阪・難波まではおよそ45分。
橋本市は県都・和歌山よりも大阪との結びつきが強いんでしょうね。
この日は、橋本駅から南海高野線の各停・極楽橋行に乗車。
橋本を出ると早速「紀の川」を渡って高野山へ分け入っていきます。
今回は高野山まで行かずに、橋本から10分の「九度山(くどやま)」で下車。
九度山はご存知、真田昌幸・信繁(幸村)親子が関ヶ原の戦いの後、蟄居を命じられて暮らした土地です。
実は訪れた日、私は都合で8:15~41までの「26分」しか九度山にいる時間が取れませんでした。
大河ドラマ1話の約半分「26分」でドコまで「九度山」を見られるのか?
“超高速”「九度山」攻略法を伝授いたしましょう。
狙うは真田親子の屋敷跡に建てられたお寺「真田庵」ただ1つ!
九度山駅のパンフレット棚から「クドヤマップ」なる地図を1部取り、駅を左に出て国道の歩道橋へ。
「真田のみち」と銘打たれた商店街を道なりに歩いて、公式情報徒歩で10分のところ、2分巻いて「真田庵」到着。
無事、この地で生涯を閉じた昌幸の霊を祀った真田地主大権現にお参りすることが出来ました。
朝7時から無料で拝観できますが、お寺ですので出入りの際は「一礼、合掌」をお忘れなく。
九度山駅から「真田庵」への道すがらで「真田古墳」を発見!
いわゆる「真田の抜け穴」です。
実際は昔の古墳だったそうですが「穴の向こうは大坂城に続いていて、幸村はこの抜け穴を使って戦場へ出向いた」という伝説が残ります。
観られるのは「真田庵」だけかなと思っていた分、抜け穴も観られて意外に満足!
この段階で時計の針は「8:30」を回り、残り時間はおよそ10分に・・・。
「真田のみち」を少し速足で歩いて8:38に九度山駅帰還、何とか「26分」で”九度山脱出”と相成りました。
本数が少ないローカル線旅の場合、時間も土地勘も無い時の観光法は「1点勝負」が基本です。
そして、限られた時間の折り返し点より少し前に、駅に引き返すこと。
旅の目的(マストの部分)をシンプルにすると、少しオプションが付いただけでも、旅の満足度は上がるんですよね。
今回は「真田庵」に絞って、時間に余裕があれば「真田の抜け穴」も・・・としたのが良かったようです。
「真田丸」を観て九度山を訪れた多くの人が、大阪から南海電車でやって来たものと思われますが、コレだけではちょっと勿体ない!
実は和歌山回りにすると、期間限定の“真田駅弁”をゲット出来るんです。
和歌山駅弁・和歌山水了軒が調製する、ズバリ「真田弁当」(900円)。
和歌山駅の駅弁売場でも「真田弁当」はセンターに陳列、多めに積まれ、売れ筋商品である様子が伺えました。
包装はもちろん赤備え、「真田」の筆文字が大きく躍ります。
【お品書き】
ご飯
ミニ田舎巻き(油揚げ、人参、牛蒡、いんげん、かんぴょう、高野豆腐)
柿の葉寿司(錦糸玉子、鯛、紅たて)
焼き鯖
玉子焼き
かまぼこ
鶏肉の照焼き
山芋と海老の湯葉包み
野菜とすり身の落とし揚げ
ゆず柿
「真田弁当」、たぶん今年発売された“真田系駅弁”の中で一番気合が入ってます。
まず容器が「戦国時代最後の武将・立体型ペーパージオラマ付」!
ふたを持ち上げると赤備えの鎧が3体立ち上がり、大坂冬の陣を想起させる雰囲気に。
おかずも少量多品種、飽きない作りでありながら「1,000円」を切る価格設定。
「年末まで和歌山に来なくてごめんなさい」というくらい素晴らしい作りです。
真田系駅弁のキモって、やっぱり「六文銭」なんですよね。
大抵ご飯の上に何かを載せるんですが、この駅弁では油揚げを使った「田舎巻き」!
しかも真ん中に、高野山ゆかりの「高野豆腐」を入れてくるあたりが心憎い。
お陰で口の中がしっとり潤って、とても心地よく箸が進みます。
デザートには、九度山名産に因んで「ゆず柿」にして入れ込んでいるのも和歌山ならではの“真田駅弁”!
紀の川流域のご当地食材「柿の葉寿司」も少しアレンジしたタイプで、やや甘めの食感。
「和歌山水了軒」十八番の「鯛」をさりげなく入れ込んで自己主張するあたりも好印象です。
和歌山駅の売場をのぞくと、去年の国体向けに登場した「きいちゃん弁当」も継続発売中。
「真田弁当」もぜひ「真田丸」が終わっても続いてくれると嬉しいなぁと思います。
ちなみに和歌山は、紀州徳川家のお膝元ゆえ、葵の紋の入った駅弁と六文銭の駅弁が一緒のケースに入っているのも、歴史好きにはちょっと面白いところ。
わずか26分の「九度山」脱出。
「時間が無くてあまり観られなかった」と考えるか、「26分で2ヶ所も観られた」と考えるか?
興味薄な場所であれば「クリアできた」と思えばよし、より興味をそそられたなら「また来よう」と思えばよし。
旅の満足度は、貴方の気持ちの持ちようただ1つ!
あまり考えずにブラッとする旅もイイですが、限られた時間で「訪れてよかったなぁ」という旅の余韻を残すには、真田の戦のようにしっかり「策」を練っておくのが大事です。
旅支度は、おのおの、ぬかりなく。
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/