“沈黙”を破って、堂々完成。『沈黙-サイレンス-』【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第137回】

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さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、1月21日から全国ロードショーとなる『沈黙-サイレンス-』を掘り起こします。

戦後日本文学の金字塔、アカデミー賞監督が完全映画化。

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17世紀、江戸初期。
日本では幕府により、厳しいキリシタン弾圧が行われていた。
日本での布教活動に情熱を注いでいた高名な宣教師フェレイラが捕えられ棄教したという情報を受けた弟子のロドリゴとガルペは、師の真相を探るために日本を目指す。

二人はキチジローという日本人の手引きで、マカオ経由で長崎に潜入。
そこには、弾圧をかいくぐりながらも自らの信仰心と向かい合うという、想像を絶する隠れキリシタンたちの生活があった。
やがてキチジローの裏切りに遭い、ロドリゴたちも捕えられてしまうことに。

頑に信仰を曲げないロドリゴに対し、長崎奉行は彼の犠牲になる人々を突きつける。
信仰を貫くべきか、棄教し信者たちの命を救うべきか。
ロドリゴは、究極の選択を迫られる…。

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1966年に遠藤周作によって書き下ろされた歴史小説「沈黙」。
江戸時代初期のキリシタン弾圧の渦中に置かれたポルトガル人の若き司祭を通じて、神と信仰の意義を命題に描いたこの小説は、世界13カ国で翻訳され、戦後日本文学の代表作として高く評価されています。

主人公ロドリゴ役には、『アメイジング・スパイダーマン』のアンドリュー・ガーフィールド。
ほか、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバーと実力派キャストが名を連ねます。
また日本人キャストも、キチジロー役の窪塚洋介をはじめ、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシが出演。
「人間にとって本当に大切なものとは何か」を問う、壮絶な人間ドラマが誕生しました。

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敬けんなクリスチャンとして知られる巨匠マーティン・スコセッシ監督は、1988年に原作の小説に出会って以来、映画化を切望。
紆余曲折の末、28年の時を経て、悲願を達成しました。
その間に『シャッターアイランド』や『アビエイター』『ヒューゴの不思議な発明』『ウルフ・オブ・ウォールストリート』といった数々の作品を世に送り出していることから考えても、それがいかに長い歳月であったかを窺い知るところ。
同時に、スコセッシ監督の本作にかける内なる思いがどれほど強いものであったかも伝わってきます。

スコセッシ作品を振り返ってみると、社会派ドラマであれエンターテイメント大作であれ、人間が生きていくうえで抱える矛盾と苦悩を追求しているものが多く、これら作品の底辺に流れるものが、ひいては遠藤周作の「沈黙」に繋がっているのではないか…と、感じざるを得ません。

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原作小説が発表されてから、50年。
マーティン・スコセッシ悲願の作品とその精神性が、21世紀の現代を生きる私たちにどのように受け入れられるか…。
注目したいところです。

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沈黙 ーサイレンスー
2017年1月21日から全国ロードショー
監督:マーティン・スコセッシ
原作:遠藤周作「沈黙」(新潮文庫刊)
出演:アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ ほか
©2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト http://chinmoku.jp/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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