ライター望月が、駅弁づくりのウラ側に潜入する「駅弁屋さんの厨房ですよ!」。
これまで伊東駅弁「祇園」、小淵沢駅弁「丸政」をレポートしてきましたが、ようやく第3弾!
今回は、水戸駅弁を手がける「しまだフーズ」の厨房を訪問します。
旅のスタートは、やっぱり東京駅!
8番線に東京6:53発、E657系電車の特急「ひたち1号」が入ってきましたよ!
シリーズ「駅弁屋さんの厨房ですよ!」
(vol.1「祇園」編)~伊東駅「いなり寿し」(600円)
(vol.2「丸政」編①)~小淵沢駅「甲州かつサンド」(700円)
特急「ひたち」は、平成27(2015)年の上野東京ライン開業で、概ね品川発着となりました。
同時に常磐線特急の再編も行われ、停車駅の少ない「いわき行」の列車が「ひたち」に・・・。
主に停車駅多めの近距離列車が「ときわ」となり、国鉄時代の特急・急行の関係に戻りました。
私自身、東京駅から常磐線に乗れるようになったのは、本当に楽チン!
常磐線沿線から、東海道新幹線・羽田空港方面へのアクセスも良くなったことでしょう。
特急「ひたち1号」は、上野、土浦の2駅停車で、水戸には8:10着。
日中の上野~水戸ノンストップ列車なら、東京~水戸間・最速72分で走破します。
水戸駅から10分ほど歩いてやって来たのは、「北のしまだ」南町店。
水戸駅弁を手がける「しまだフーズ」は、水戸市内で北海道居酒屋「北のしまだ」を展開している「株式会社しまだ」の弁当部門のグループ会社なのです。
入念な消毒を行い、厨房に入らせていただくと、ちょうど駅弁の調製作業が行われていました。
実は「北のしまだ」南町店の厨房は、夜は居酒屋、昼は駅弁屋!
水戸駅は勿論、東京でも見かける「しまだフーズ」の駅弁は、ココで生み出されていたのです。
居酒屋の仕込みが始まる夕方前には明け渡す必要があるため、鉄道ダイヤのように綿密な駅弁作りのスケジュールが組まれ、限られた人数とスペースで、手際よく駅弁が作られていきます。
今回は「しまだフーズ」の名物駅弁、「常陸牛 牛べん」(1,050円)の調製作業に密着。
販売開始は、平成23(2011)年。
今や、東京駅の「駅弁屋・祭」でも、常に人気上位にランキングされる駅弁です。
まずは、山積みされた空の駅弁容器に、1つ1つ手作業で、白いご飯を詰めていきます。
お米はもちろん、茨城県産を使用しています。
その白いご飯の上に、甘く煮着けられた玉ねぎをサッと載せていきます。
「しまだフーズ」の強みは、何と言っても「北のしまだ」という居酒屋があること。
「常陸牛 牛べん」には、「北のしまだ」各店の中でも日本料理を手がける「しまだ別邸 響」の板前さんがこだわり抜いた“秘伝の”すき焼きのたれが使われているといいます。
いい匂いと共に、たれが白いご飯に沁み込んでいく様子に胸がときめきます!
さあ、いよいよ「常陸牛」の出番!
仕込まれた常陸牛のしぐれ煮を、1つ1つ重さを測って、ご飯の上に敷き詰めていきます。
「しまだフーズ」では、自前の牧場を持った精肉業者から「常陸牛」を仕入れています。
このお陰でマージンを抑えながら、比較的安価で「常陸牛」の駅弁を提供できるのだそう。
ブランド牛駅弁は花盛りですが、独自ルートを持っている駅弁屋さんは強いですね。
「常陸牛(ひたちぎゅう)」は、指定業者が茨城県内で最も長く飼育した黒毛和牛で、A4/B4以上にランキングされるブランド牛。
茨城の牛肉の歴史は、江戸後期の水戸藩主・徳川斉昭公が、天保3(1832)年に黒牛を飼育した記録にさかのぼるということで、既に200年近い歴史がある訳です。
「肉好き」として知られた斉昭公ゆかりの地の肉駅弁・・・自然と期待も高まります。
(参考:「茨城県畜産協会」ホームページ)
常陸牛のしぐれ煮を平らにならして、香の物を肉の隅にちょこん。
端の狭いスペースに、湯葉巻き、煮玉子を載せて・・・!
中味が詰まってきた弁当の上に薄いシートを敷いて、透明のふたを・・・。
ふたが閉められた弁当は、筒状の紙包装を施されます。
包装に製造時間、消費期限等のラベルを貼付して、ついに「常陸牛 牛べん」の完成!!
この後、時間が経っても安全に食べられるよう、急速に冷やされます。
そして翌日の早朝、水戸や東京の駅弁屋さんの店頭に並んでいくんですね。
発売から5年あまりで、人気駅弁の一角となってきた「常陸牛 牛べん」。
東京駅「祭」で観察していると、思いの外、女の人がよく手にしていく様子が見られます。
私の妻もしばしば自ら「常陸牛 牛べん」を選ぶことがあるのですが、その理由は、見た目以上に“上品な”味付けがクセになるからなんだそう。
そう、北関東の駅弁でありながら、濃すぎない味付けが嬉しい肉駅弁なのです。
私自身、正直に思うのは「5年で味がかなり進化している」ということ。
第一印象も良かったのですが、年を追ってどんどん美味しくなっているんです。
「しまだフーズ」の島田拓郎社長によると、一番気を遣っているのは「脂」なんだそう。
最初の頃は、脂の成分が白く浮き上がってしまうこともあって苦労したそうですが、1つ1つ問題点を解決しながら「常陸牛 牛べん」を作り上げてきたといいます。
先週末、2月18日(土)から、今シーズンも「水戸の梅まつり」が始まりました。
梅を観に水戸を訪れたなら、帰りの「ひたち・ときわ」では、まずは「常陸牛 牛べん」から!
もちろん「しまだフーズ」の水戸駅弁には、牛べんの他にも食べたいものがいっぱいあります。
今週は梅まつりが始まった水戸にちなんで、水戸駅弁を順を追ってご紹介していきましょう。
(取材・文:望月崇史)
連載情報
ライター望月の駅弁膝栗毛
「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!
著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/