日本人が大好きなモノのひとつに「美術展」があります。
先月末から国立新美術館で始まった、過去最大級の個展「草間彌生わが永遠の魂」。
スタートから3週間で、すでにおよそ10万人もの来場者を記録しているということで、今年の美術展来場者のベスト3には入りそうな勢いとなっています。
ちなみに、美術展にはどのくらいの人が訪れているのか?
美術雑誌の「美術手帖」によりますと・・・去年の1位は、やはり国立新美術館の「オルセー美術館・オランジェリー美術館所蔵 ルノワール展」およそ67万人!
そのあと、「始皇帝と兵馬俑(へいばよう)」展、「若冲展」と続きますが、ベスト10の中に「カラヴァッジョ」「ゴッホとゴーギャン」「ダリ」「ボッティチェリ」「モネ」と、有名西洋美術がズラリ。
世界を見渡してみても、30万人以上集める美術の企画展覧会はそうはなく、日本の展覧会はいつも「世界の美術展来場者ランキング」の上位を独占しています。
しかし、こうした日本の人気美術展のほとんどは、もうお気付きかと思いますが、海外の美術館やコレクターからの“借り物”で成り立っています。そんなわけで、美術館の成り立ちが、近ごろ変わってきています。
去年一番人を集めた展覧会が行われたのは、六本木にある「国立新美術館」。
国立としては一番新しい美術館で、この1月、ちょうどオープン10周年を迎えました。
国立新美術館では年間5つから10もの展覧会が行われていますが、この美術館のコンセプトは「企画展だけの美術館」。
私も、友人が絵を出品したというので見に行ったことがありますが、「公募展」の開催も積極的に行っています。公募も企画ものの一つ、と言えますからね。
つまり、最初から“所蔵品を持たない美術館”なのです。
企画展ありき、作品はどこかから借りてくる、が大前提となっています。
収蔵することもないので、学芸員が最少人数ですむ、という特徴もあります。
よって、美術館の人件費はおカネがかからない。
しかしながら、このやり方は来場者数の動員力ですさまじい結果を出しています。
過去10年間で歴代1位の動員は『オルセー美術館展2010「ポスト印象派」』(H22)およそ78万人。
2位『大回顧展 モネ 』(H19) 70万5千人。
3位『オルセー美術館展 印象派の誕生』(H26)およそ70万人。
こうした所蔵品を持たない、新しい美術館のカタチだけではなく、所蔵品を持っていても他から借りてきた作品で展覧会を構成する既存の美術館も増えている。つまり、借り物競走全盛、となっているわけです。
こうした美術展を主催するのは、新聞社にテレビ局などのマスコミ。
自社メディアで宣伝も出来るし、入場者が多ければうまみも大きい。
とはいえ、世界で来館者を多く集める美術館は価値ある収蔵品をコレクションし、自分たちの収蔵品だけで常設展を見せています。
その証拠に、世界で最も来館者が多い美術館は、
パリのルーヴル美術館 860万人
ロンドンの大英博物館 682万人
ニューヨークのメトロポリタン美術館 653万人。
企画展などせずとも、常設展だけでこの人数なのです。
しかし、日本の美術館が世界の美術館のコレクションに肩を並べるのは相当難しいと、素人目にもよくわかります。
それでは、日本の美術館はどう進むべきなのか?
今人を集める“空っぽのミュージアム”も、面白い企画展を行って美術を身近に感じさせるという点で、その存在は必要ではあるでしょう。
去年の来場者数第3位にランキングされた「生誕300年記念 若冲展」にヒントがあるのではないでしょうか。
去年1位のルノワール展は4か月で66万人。1か月あたり17万人弱。
ところが、3位・東京都美術館の「若冲展」は1か月の開催ながら、44万人!
20年前までは日本ですら殆ど知られず、異端視されていた若冲。
それがいまや、外国人も驚嘆し評価するメジャーアーティストになったわけです。
日本の美術を掘り起こし、日本のみならず世界に発信していける、こうした役割を美術館に期待していきたいと思うのは、私だけでしょうか?
3月14日(火) 高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より