さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、5月13日から先行公開となる『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』をいち早く掘り起こします。
現代人の憂鬱と希望を浮き彫りにする、最高密度の恋愛映画
女性としては最年少の21歳で第13回中原中也賞を受賞するなど「いま最も新しい表現者」として注目されている詩人、最果カヒ。
分かりやすい日常的な言葉の連なりで現代人の憂鬱と希望を浮き彫りにする作風で、世代を超えて多くの人に支持されています。
彼女が2016年に発表した「夜空はいつでも最高密度の青空だ」は、現代詩集にしては異例の累計27,000部の売り上げを記録。
その傑作詩集が映画になるとは、一体誰が予想したでしょう。
詩をドラマとして表現することに挑んだのは、石井裕也監督。
世界各国の国際映画祭で特集上映が組まれるなど、いまもっとも新作が待ち望まれている監督が描く“最高密度の恋愛映画”とは。
看護士として病院に勤務し、夜はガールズバーで働く美香。
患者の死に囲まれる仕事と折り合いをつけ、言葉にできない不安や孤独をやり過ごす日々を送っている。
工事現場で日雇いの仕事をしながら、古いアパートで一人暮らしをする慎二。
左目はほとんど見えず、仕事現場の同僚といつも一緒にいるが、漠然とした不安が常に慎二の胸の内を支配している。二人は夜の街で偶然出会う。
排他的な東京での生活に居心地の悪さを感じながらも、絶望と希望の狭間でひたむきに生きる二人は、次第に心を通わせていく…。
ヒロイン美香に抜擢されたのは、石橋凌と原田美枝子を両親に持つ期待の新人女優、石橋静河。
本作が初主演、現代人が抱えるいい知れぬ不安や孤独を抱え込む美香を鮮烈に演じています。
一方、美香に惹かれていく慎二には、日本映画界において、そして本作でも杞憂な存在感を放つ池松壮亮。
共演には松田龍平、市川実日子、田中哲司、三浦貴大と錚々たる顔ぶれ。
この映画に登場するキャラクターたちは皆、人間臭く愛おしい。
そんな匂いを出せるのも、このメンバーだからこそでしょう。
詩集が原作となっているだけに、言葉が全面に出てくる印象が強い本作。
都会で暮らすということはどこか鈍感にならなければやっていけない部分もあり、そんな時ほど普段は聞き流している言葉が突き刺さる瞬間に出会うことって、誰しも経験あるのではないでしょうか。
常に死を身近に感じる作品でありながら、生きる覚悟と希望が垣間見える作品です。
映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
2017年5月13日から新宿ピカデリー、ユーロスペースにて先行公開 5月27日から全国ロードショー
監督・脚本:石井裕也
原作:最果タヒ(リトルモア刊「夜空はいつでも最高密度の青色だ」)
出演:石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン、市川実日子、松田龍平、田中哲司 ほか
©2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
公式サイト http://www.yozora-movie.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/