さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、6月17日から公開となる『ドッグ・イート・ドッグ』を掘り起こします。
これぞホンモノのハード・ボイルド?! ニコラス・ケイジがバイオレンス&アクションで大暴れ!
長年の刑務所務めを終え、シャバに出てきたトロイ。
刑務所仲間だったコカイン中毒のマッド・ドッグや巨漢の取り立て屋ディーゼルと再会する。
先が見えない人生とサヨナラしたい3人は人生のどん底から這い上がるべく、地元のイカれたギャングのボスから仕事の依頼を受けることに。
それは、借金の返済に応じない男の赤ん坊を誘拐するというものだった。75万ドルという高額な報酬の割に一見簡単に思えた仕事だったが、事態は思わぬ方向に…。
主演は名作からカルト作品まで、一度観たら忘れられない演技で観客を魅了するニコラス・ケイジ。
そして彼とトリオを組むのが、オスカー俳優のウィレム・デフォーに顔面凶器俳優クリストファー・マシュー・クックと、いぶし銀な顔ぶれ。
メガホンを取ったのは、『タクシードライバー』『レイジング・ブル』などの脚本家として知られるポール・シュレイダー監督。
ニコラス・ケイジとは『ラスト・リベンジ』に続く再タッグとなりました。
なんでも『ラスト・リベンジ』ではファイナル・カット権(最終編集権)を巡ってモメにモメたらしく、今作では「オレたちが思う“面白い映画”を作ってやるぜ!」と、気合いも充分。
物語のキーパーソンとなるギャングの首領エル・グリコをも自ら演じ、異彩を放っています。
原作は、エドワード・バンカーによる同名ハード・ボイルド小説。
エドワード・バンカーと言うよりエディ・バンカーと言った方が、ピンとくる映画ファンも多いのではないでしょうか。
クエンティン・タランティーノ監督『レザボア・ドッグス』でのMr.ブルーなど、俳優としても活躍した彼は、人生のほとんどを刑務所で過ごし、獄中で作家としての才能が開花。
自らの体験を元に犯罪小説を書き続けたという、異色の経歴の持ち主。
そんなホンモノのハード・ボイルド作品をポール・シュレイダー監督が、人生の負け犬たちのブラックコメディのように描いているのが本作の面白いところ。
初老に差しかかった崖っぷちトリオが人生大逆転を目指して、それでもやっぱり犯罪に手を染めてしまうダメダメっぷりが、テンポの良いセリフから伝わってきます。
もちろん映像表現においては、超過激なバイオレンス描写を追求。
アウトサイダーを描き続けるシュレイダー監督ならではのキレッキレの映像とコミカルなスタイル、この緩急がなんとも気持ちいいのです。
職業脚本家が監督すると脚本重視の作風になるのでは…という先入観を覆す、その映像センスにも注目です。
ドッグ・イート・ドッグ
2017年6月17日からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
監督:ポール・シュレイダー
原作:エドワード・バンカー 「ドッグ・イート・ドッグ」(早川書房)
出演:ニコラス・ケイジ、ウィレム・デフォー、クリストファー・マシュー・クック、オマール・ドーシー、ポール・シュレイダー ほか
©2015 BLUE BUDGIE DED PRODUCTIONS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト http://dogeatdog-movie.com/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/