雨で外出できない日や、暑くて散歩時間が減る夏こそ、飼い主さんと愛犬とのスキンシップやコミュニケーションにもぴったりなマッサージやTタッチを自宅でゆったりとしてあげたいものです。今回は、初心者でも簡単なTタッチとマッサージ法を、ぱれっとの、なかしまなおみ先生にレクチャーしていただきます!
愛犬もうっとりTタッチ
筋肉に直接働きかけるのはマッサージですが、Tタッチは皮膚のすぐ下の神経に働きかけます。
人の手で犬に行うTタッチによって、ふだんは経験しないような刺激が細胞を活性化し、犬の心身のバランスを整えることができます。
「Tタッチを習慣にすると、健康維持に役立つんですよ。ただし、飼い主さんが『さぁ、やるぞ!』と意気込みすぎると愛犬も身構えてしまうかもしれません。飼い主さんもリラックスして、呼吸を整えてからマッサージやTタッチを行ってあげてくださいね」と、なかしま先生は語ります。
Tタッチを行う際は力加減が重要! まず、飼い主さんがご自身で試してみてください。親指を頬骨に添えて、残りの4本の指をまぶたの上に置いてみて、眼球に不快な感触がしないくらいの力加減がベスト。その力で愛犬の皮膚を触ったり動かすようにします。
いつでも気軽にできる、耳のタッチ
耳には多様なツボがあるので、Tタッチが健康を促進できます。
耳のTタッチを好む犬は多いようで、愛犬が心地よくなって目を細めてくれる確率の高いTタッチと言えます。
【耳の付け根をグルグル】
犬の耳の付け根をそっと握り、頭部全体の皮膚を動かすようにして軽い力で回しましょう。
そのまま、以下に紹介する「スライド」に移行するのがおすすめです。
【スライド】
耳の根元から先端に向かって、人の指をスーッとすべらせましょう。耳の内側にも指を添えます。外側の指を、犬の耳全体がスライドされるように、少しずつ動かしていきます。バラの花びらを扱うような力加減で行うのがポイント。
呼吸を整えるTタッチ
暑さでハァハァと苦しそうに呼吸をしている愛犬に、ぴったりのTタッチがあります。
専門用語ではパイソンリフトと呼ばれるTタッチで、これを行うことで呼吸を整えることができ、興奮も収まります。
【胸のリフト】
愛犬の肋骨に飼い主さんの手のひらをぴったりと合わせるようにして、愛犬の皮膚をそのまま上方へ、ずらすようにして持ち上げて下ろします。指は反らさず、犬の体をホールドするように指を肋骨に添わせるのが秘訣。「1、2、3」のカウントで皮膚を持ち上げて、「1、2、3、4、5」で下ろします。持ち上げるときよりも少し時間をかけて、皮膚がもともとある位置に戻すのもポイントです。
同じ場所を何度も動かすのではなく、一度動かしたら手の位置を少しずつずらしましょう。
ストレス軽減のマッサージ
夏は散歩時間も減ってしまって、暑くて、なんだか愛犬もイライラ……。
「そんなときは、肩甲骨のマッサージでストレスを軽減させてあげるのがおすすめですよ。犬は前方に重心がかかっていることが多いんです。そうすると、身体のバランスが不安定になって呼吸が浅くなったり、緊張したりとストレスのかかる原因に。でも、肩甲骨まわりをほぐしてあげれば、重心が正されて精神的にも落ち着くので、ストレス軽減につながるんです」と、なかしま先生。
【肩甲骨のマッサージ】
肩甲骨の脇に沿って、人の親指の腹で圧をかけていきます。指の腹で圧をかけるときは、犬の筋肉に対して垂直に。飼い主さんは息をスーッと吐きながら指の腹で圧し、息を同じテンポで吸いながら指の力をゆるめます。
指を肩甲骨に沿ってずらしながら、この動作を連続して行ってください。
内臓の働きを促進するマッサージ
夏バテという言葉があるように、犬や猫も夏に体調を崩すケースが少なくはありません。ということで最後に、内臓の動きを良好にするマッサージをご紹介します。
マッサージをする部位は、内臓のツボが集まる、背骨まわり。マッサージで刺激をしてあげれば、血行を良くして内臓の働きを促すことができます。
【背骨の両脇のマッサージ】
愛犬の背骨の上ではなく、骨の脇をゆっくりと圧します。まず「1、2」のカウントで親指の腹を垂直に愛犬の筋肉に圧し、「3、4」のカウントで指を放します。首の後ろからお尻に向かって、指を愛犬の皮膚から離さず次のポイントに向かってすべらせるようにして、このテンポを保ちながら続けてください。
両脇を両方同時に行っても、片側ずつ行ってもOKです。
愛犬にTタッチやマッサージをしているうちに、飼い主さんもきっと心が落ち着いてくるのではないでしょうか? それがさらに、愛犬をリラックスさせることにもつながります。
ぜひご自宅で実践してみてください!
連載情報
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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!
著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。