愛犬をほめることは撫でることではありません!【ペットと一緒に vol.35】

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犬

筆者が主宰する犬の幼稚園(しつけ教室)で10年間見てきて、飼い主さんが愛犬の気持ちに対してもっとも勘違いしがちなポイントを、今回はご紹介します。
参考にしていただければ、愛犬とのコミュニケーションがもっと深まると思います!


ほめられれば、愛犬も「そうか!」とわかる

犬のトレーニングにおいて、ほめることはとても大切なことです。
筆者が主宰する犬のしつけ教室でも、新しい行動は、トレーナーがほめることによって教えていきます。

愛犬をほめるシーンはたくさんあるはずです。
たとえば横断歩道を渡る前に赤信号で待つときに座るなど、覚えさせたい行動を愛犬がとったら、ほめる。
また、たとえばカフェで飼い主の足元で静かにくつろいで待つなど、飼い主が理想とする行動を愛犬がとっていたら、ほめるなど。

愛犬の良い行動は、「そう、それでOKなんだよ」ということを伝えるためにもほめてあげたいものです。

犬

筆者の経営する犬の幼稚園でのひとコマ。望ましい行動をとれたということは犬にちゃんと伝えています。


ほめる=撫でる、ではありません

みなさんがトレーナーに、「愛犬が良い行動をとったら、すぐにほめてあげてください」と言われたら、どうしますか?

愛犬が散歩中にほかの犬や鳩を見つけて興奮しそうになったとします。その前にすかさず飼い主さんが「オスワリ」と言いながら愛犬を落ち着けた場合、「そう、いい子~」と言いながら、頭を撫でていませんか?

実はこれ、愛犬からすれば「うわっ、びっくりした~。なに?」と驚くだけの結果になることも。
というのは、そもそもこのシチュエーションでは愛犬の意識は前方の犬や鳩に集中しているため、自分の頭上や後方から飼い主さんの手が自分を触るとはたぶん予想していないからです。

犬,おすわり

ほかのワンちゃんを前にしても座って待っている様子。これは、ほめるときに頭を撫でないほうがよい状況。

ふだんは飼い主さんにやさしく撫でられると、愛犬はうっとりと目を細めるかもしれません。
けれども、散歩中に座ったときに頭を撫でることは、ただ愛犬をびっくりさせるだけで、気持ちが良いとは感じられない可能性が高いと考えられます。
それどころか、このようなシチュエーションで頭を撫でられた犬が、ストレスを感じたときのサインのひとつである、舌をペロッと出す仕草を見せることも少なくありません。
トレーニングを積み重ねていない犬では、せっかく落ち着いていたのに、急に頭を触られたことが刺激になり、座っていたのに立ち上がってしまったり、興奮してしまったりする可能性もあります。

犬

人が犬の頭を撫でれば気持ちが良いと勘違いしないように……


効果的に「ほめる」には?

では、どうすれば愛犬が「ほめられたんだ~。わ~い♪」という気持ちになるでしょうか?
それは、犬の性格によっても多少異なってきます。

飼い主さんが大好きで陽気な犬ならば、「そう、いい子~」と声をかけられただけで、尻尾をフリフリ喜ぶかもしれません。
かなり感情を出さない落ち着いたタイプの犬では、言葉でほめられただけでは無反応かもしれません。その場合は、おやつをあげると「うれしい!次もがんばろう」という気分にさせてあげられることが多いかと思います。

愛犬が「うれしいな」と感じられる「ほめ方」が、意欲をアップさせます。それが、トレーニングのレベルアップにつながります。
トレーニングの過程で、望む行動を愛犬がとったらまずはすかさず「OKサイン」を出してあげましょう。
たとえば、「そう!」という言葉や、クリッカーを慣らすなど。
そして、ご褒美におやつをあげるのがおすすめです。ボールなどのおもちゃが好きならば、それらもご褒美に使えます。散歩前や散歩中であれば、静止していた状態から歩き出すことや走り出すことがご褒美にもなります。

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愛犬が確実に喜ぶことをご褒美に。でも、興奮しやすい性格の犬には、声かけやご褒美のタイミングも工夫して。

ほめられたと愛犬が認識したかどうかのバロメーターのひとつは、愛犬が尻尾を振ったかどうか。そして、愛犬がうれしそうな表情を見せたかや、「ドヤ顔」をしたかどうかでもわかるかもしれません。

ほめる=撫でるという固定概念を取り除き、愛犬はいつ、どんなとき、なにをされると喜ぶかを日頃からよく観察しておけば、臨機応変に、愛犬との適切なコミュニケーションが取れるようになるはずです。

連載情報

ペットと一緒に

ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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