引き分けでもダメ。絶対に負けられない試合には、負けない投手をぶつける。7回1失点と見事、期待に応えたウィーランドは、
「チームは、すごくいい試合をした。次の広島戦では、去年はいなかったけど、必ずその借りを返したい」
と気合が入っています。今季から新加入して、10勝を記録。ベイスターズでは10勝をあげた初の外国人投手となりました。
ストレートと、本人がナックルカーブと呼ぶ2つを切り札に、7月18日からペナントレースでは、12試合連続で負けていません。また、ペナントレースでも、広島には負けていないこともチームの大きな戦力と言えます。一方で、クローズアップされるのは、その打撃力。3本のホームランを放ったのは、かみそりシュートの平松以来、41年ぶりです。さらに広島戦では特に打率がいい。ここ一番のキーマンといわれるのも当然でしょう。
さまざまなところで、ラミレス監督の洞察力の素晴らしさが語られています。春季キャンプでは、ウィーランドの打撃練習を見るなり、「ただものではない」と感じた。ウィーランドは高校時代、通算30ホーマー以上を放っているのです。そこで、スタメンを構築する際、ちょっとしたアクセントを思いつきました。8番に投手を入れるというもの。独自のラミレス理論は、ウィーランドから得たものです。さらに、ファイナルステージでは、代打起用のプランまで浮上しています。一発があるのは投手とはいえ、相手には脅威となります。
アマチュア時代からバッティングが好きで、真剣に取り組んでいたそうです。しかし、高校時代、「本気で野球をやるのなら、投手になれ」とアドバイスを受け、投手を選んだ。ウィーランドも夢は二刀流。日本ハム・大谷を見て、
「彼の二刀流は、アメリカで10億円は楽に稼げる。でも、私はダメだ」
と言っています。
1年契約の9,000万円は今、思えば本当にお買い得でした。メジャーでは、わずか1勝。巨人へFA移籍した山口俊の穴を埋めるための獲得です。
日本からのオファーが届いた昨年、当初は戸惑いを隠せませんでした。米国内から出たことはなく、ましてや日本の野球を全く知らない。レベルがかなり低いと思い込んでいたに違いありません。でも、ウィーランドは周囲から、「必ず、キャリアアップになる」と助言を受けました。最終的にサインしたのは、1軍を確約されたからでした。しかし、来日する際の機内では、
「日本語が全くわからない。どうしたらいいか。そればかりを考えた」
そうです。
しかし、そんな心配は無用でした。ベイスターズは、ファミリーの集団。チームへ合流すると、
「会う選手が、英語を教えてほしい、と声をかけてくれた。これほど、距離を感じないチームでプレーするのは初めて。大感激」
とうれしそうに話している。加えて、日本文化にも興味を覚えました。サムライです。
「日本刀、甲冑など見るだけで、オーラを感じる」
と言います。そうしたことが知れ渡ると、チームメートが、ウィーランドへ玩具の刀などをプレゼントするといった具合です。
そして、好成績の陰には、この日同様、ロペスのサポートも。日本の打者の粘りは相当なものだからでした。序盤はコンスタントにアウトをとり、投球のリズムをつかみたい。気持ちが先走り、イライラしているとロペスが絶妙のタイミングで、マウンドへ。
「次はあそこへ投げろ」
とひとこと。全員で勝利のために一丸の姿勢は、短期決戦で素晴らしいパワーに変わるのです。
10月18日(水) 高嶋ひでたけのあさラジ!「スポーツ人間模様」