トランプ大統領がアジア歴訪でできなかった3つのポイントとは?

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11/10(金)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!②

80点以上の成功であった今回のアジア歴訪
7:02~ひでたけのニュースガツンと言わせて!:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

トランプ大統領

トランプ米大統領初来日 日米首脳会談 共同記者会見に臨むトランプ米大統領=2017年11月6日、東京都港区の迎賓館・花鳥の間 写真提供:産経新聞社

まともなアメリカ大統領役をこなしたトランプ氏

アメリカのトランプ大統領は、順調にアジアの各国を回っています。今月9日には中国を訪れ、8日調印分と合わせて合計約29兆円に及ぶ大規模な商談が行われました。一見すると大成功に見える今回のアジア歴訪ですが、アメリカが本当に望んでいた「3つのポイント」は達成できていません。宮家邦彦さんに、その3つについての詳細を伺います。

高嶋)トランプ大統領が韓国、中国、そしてベトナムへと、動いています。「トランプ大統領も意外とお客さんができるじゃないか」と思いました。もっと、フリーハンドで勝手なことを言うのかと思っていたら、意外とまとまっていました。これはどう捉えますか?

宮家)あんなに原稿を読むとは思わなかったし、ツイートも、まともなことだけで、変なのが無い。どこかで何かが起きているのですよ。恐らくホワイトハウスの中だと思うのですが、トランプさんは黙っていると、自分がアメリカファーストだから、投票してくれた有権者にサービスをするわけです。でも、それを外国でやられたらたまらない。恐らく国家安全保障問題担当大統領補佐官のマクマスターさんを中心に、ある意味でトランプさんを封じ込めるというか、ちゃんとやらせるというか……それが上手くいっているということですよ。1つの理由は、恐らくですが、安倍晋三首相との関係が上手くいっていて、それがマクマスターの考えに近く、トランプは安倍さんの言うことは聞くから、説得しやすい。ということはないでしょうか。ちゃんとやれている、ということですよ。

高嶋)こう言っては失礼だけど、京劇を、あんなに広い、寒いところで見せられて……まあ、暖房とか、いろいろやったとは思いますが、けっこう、おとなしく見ていて。Twitterに上げていることも、中国側を刺激しないような内容でした。

アメリカが本当に望んでいた3つのポイントは改革できず

高嶋)貿易面についてですが、今日の新聞でも「28兆」とか「29兆」とか出ていますが、あれに対する満足感というのは前提にあるのでしょうか?

宮家)あれだけ数が出れば、あれを国内に持ち帰り、「ほら見ろ! ちゃんと中国に対してこんなにやったぞ!」と言えるわけですから。それはそれでいいと思います。だけど、米中関係全体で考えたら、やはり今回のアジア歴訪でアメリカにとって大事なことは、北朝鮮の非核化と、自由で開かれたインド太平洋。そして公正な貿易。これは全部中国が問題なのですよ。その意味で、北朝鮮問題には進展がない、それから、インド太平洋に関わる南シナ海も動かないとなれば、これはもう、貿易で金を使うしかない、ということです。だけど、本当にアメリカが望んでいるのは、むしろ経済システムの改革であって、貿易額の赤字の縮小では無いと思うのですよ。

高嶋)表面上の話だけではない、ということですね。

宮家)ですから、長続きしない。必ず、この制度上の問題がある限り、いずれ赤字問題は出てくる。

米中は、今後も重要な部分をうやむやにしたまま関係を続けていく

高嶋)そして、いちばん気になっていた北朝鮮の核やロケットに関する問題ですが、これは裏で相当な話し合いがあったと想像するべきですか?

宮家)ある程度の探り合いはしていると思います。ただ、アメリカの基本的立場は、「中国さん、ちゃんとやっていますよね。分かっています。ありがとう……でもね、全然不十分だけど」ですよね。それは、鍵を握る中国を強制するわけにはいかないから、アメリカはお願いをベースにやらなければいけない。しかし、中国は、アメリカが何を考えているか知らないが、そんな簡単に北朝鮮を潰すわけにはいかないのですよ。潰したら大変なことになりますから。その意味では、彼らは非常に慎重に、付き合っている“フリ”はするけれど、本当は付き合わない。

高嶋)金は出したけれど、北朝鮮とか、肝心要の部分はうやむやに?

宮家)安全保障に関わることを、そんな簡単に譲歩できません。

高嶋)トランプさんも、その辺を呑み込んだようなフシがありますね。

宮家)これから何年も、それをやるわけですから。べつに、いまが新しいわけでもないので。これは恐らく永久にうやむやのままだと思いますよ。中国はそういう国だから。

高嶋)ということは、日本にとって、トランプさんのアジア歴訪は、プラスマイナスで点数を付けると、どれくらいですか?

宮家)80点以上ですね。考え方の基本的な部分は一致していて、かなり刷り込んで成功していますから。

高嶋)そうですか。では、安倍さんも満足ですね。

高嶋ひでたけのあさラジ!
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