初めて迎えた保護猫が、家族の会話と笑顔を増やしてくれた!
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【ペットと一緒に vol.59】
ミルクボランティアのもとを卒業した子猫を迎えた、美香さん。初めての猫との生活は、戸惑いやハプニングもあれば、新しい発見や喜びも。今回は、保護猫との暮らしをスタートさせて4カ月の、美香さんのストーリーをお届けします。
保護猫を初めての猫に迎えたい
都内で80代の父親と暮らす美香さんは、半年ほど前に保護猫を迎えました。
「初めての猫との生活なんですよ。最初はもう、ドキドキでした」と、愛護団体が設けた約1週間のトライアル期間を振り返ります。
「10数年前に愛犬のシーズーを看取ったときは悲しくて、新しいペットを迎える気持ちになりませんでしたが、年月が経ち自分の生活も落ち着いてきた頃、また動物との生活がしたいな」と思ったのが、子猫を探すきっかけだったとか。もともとは犬派だったという美香さんですが、「私はフルタイムで働いているし、父も高齢で犬を飼っても満足に散歩をしてあげられないので難しいと思っていました」とのこと。そんななか、身近にいる猫好きの人たちから飼い方や猫との生活の話を聞いているうちに、「猫もかわいいかも!」と、心が惹かれ始めたそうです。
「迎えるなら、保護猫にしたいと当初から決めていました。我が家で1匹でも幸せにしてあげられたらなと思いました」(美香さん)。そこで、休日を利用して猫の譲渡会で話を聞いたり、インターネットで猫のことを調べたりしました。周囲に「子猫を家族に迎えたいの」と、口にするようにも。そうしていると、不思議と子猫の情報が美香さんのもとに集まり始め、同僚経由で、子猫のミルクボランティアの方と知り合い、里親募集をしている子猫とお見合いをすることになったそうです。
てんやわんやのトライアル期間
「お見合いで一目で気に入った子猫が我が家にトライアルで来る日は、うれしくて仕方がありませんでした」と、美香さん。けれども、やはりかわいいだけでは済みませんでした。初日から数日はお父様の部屋で寝かせていた子猫を、別の部屋でひとりで寝かせ始めた日、夜中に20分間ずっと「ニャーニャー」と鳴き通し。「戸惑いましたね。でも、ここでかまってあげると鳴き癖がつくかもしれないと思って、寝室でぐっとこらえて様子をみてみたんです」(美香さん)。その甲斐あって、翌日には夜鳴きは10分間程度になり、4日目には静かに寝るようになったそうです。
犬との生活しか知らなかった美香さんは、「子猫が予測不能な動きでじゃれついてきて、私の脚が引っかき傷だらけになったり、子猫が入ってはいけないところに入って出てこられなくなったり、急にスイッチが入ったかのように家中を走り回ったり……。もう、てんやわんやでした」と、当時を思い出して笑います。
「でも、幼少期に猫と暮らした経験があったという父は、私とは違ってちょっとやそっとのことでは動じず見守り、子猫の扱いがとても上手(笑)。子猫もすっかり父になついて安心しました」と、美香さんはトライアル期間が終了してからの未来予想図も次第に描けるようになっていったとか。
猫アレルギー発症!? 危機を乗り越えて
晴れて家族に迎えられた子猫は、あずきと名づけられました。「ほかにも名前の候補はあったんですが、子猫のかかとに黒毛の模様があって。それで『あっ、あずき、だ!』って(笑)」(美香さん)。
犬はしつけが必要ですが、猫はトイレを用意してあげればOKなことなど、猫との暮らしでは犬との違いなど新たな発見もあったと美香さんは語ります。
「それに、犬のかわいさとはまた違って、お互いがほどよい距離感で生活できるのも猫の魅力ですね」とも。
順調に進んでいた、あずきちゃんとの生活ですが、開始から数週間するとお父様の目が痒くなるといったアレルギー反応も出始めたとか。「えええー! と、それは心配しました。けれども、マメに掃除をしたり、空気清浄機を購入するなど、環境をあれこれと改善してみました」(美香さん)。すると、ほどなくしてお父様も症状が落ち着いたそうです。
今では、あずきちゃんが一家の中心だそうで、「リビングテーブルに物が出しっぱなしで、『なんでここにあるの?』となったら『え? あずきが出したんじゃない?』などと言って、大笑い。あずきは、家族の笑顔も増やしてくれました」と、美香さんは微笑みます。
あずきちゃんは、なかなかのアピール上手でもあるようで、自分の手で投げ飛ばしたおもちゃが取れないと「取ってニャー」と、お父様や美香さんを呼んだり、おもちゃを持ってきて「投げてニャー」とお願いしたりするそうです。
「見ていて、飽きないですよ(笑)。それに、帰宅すると玄関までお迎えにきてくれて、とってもかわいいんです」と、美香さんはデレデレのご様子。
美香さんもお父様も、子猫を迎えて本当によかったと感じていると言います。
「かわいそうな境遇の猫ちゃんを幸せにしてあげたいと思ったのに、こちらが逆にあずきに幸せにしてもらえているんです。こんなにも、様々なことを与えてもらえて、あずきとの出会いに本当に感謝しています」(美香さん)。
生後2カ月齢で迎えてから、4カ月。まだまだおてんば盛りのあずきちゃんは、これからも美香さん家族ににぎわいと驚きと楽しみを運んでくれることでしょう。笑顔に満ち溢れる日々は、まだ始まったばかりです。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。