【ペットと一緒に vol.55】
タイ人の夫と13歳の娘さんとタイのバンコクに暮らす日本人のマリさんは、2年前にヨークシャー・テリアを迎えました。タイで犬を飼うという初体験に戸惑いながらも、愛犬のおかげで娘のアンちゃんにもマリさんにも新しい世界が開けたと言います。今回は、バンコクの犬事情とともにマリさんとアンちゃんのドッグライフをご紹介します。
娘さんの願い叶ってブリーダーさん探し
東京で生まれ育ったマリさんは、日本では犬を飼っていた経験がある、大の犬好き。バンコク生活を送りながらもいつか犬と暮らしたいと望んでいましたが、バンコクの公園は犬の立ち入りが禁止されていたり、年中暑いので犬の健康管理がむずかしいだろうと思い、半ば諦めていました。
ところが、日本へ帰国するたびに日本の犬事情を見て犬との暮らしに憧れていた娘のアンちゃんから、「バンコクでも犬と暮らしたい!」と懇願されるように。そこで、日本でドッグトレーナーをしている友人のアドバイスをもとに、もう11歳になったので犬の面倒を見られると思ったアンちゃんと、犬種の検討とタイでのブリーダーさん探しを開始。ドッグショーに愛犬を出陳して健全な犬の繁殖を心がけ、断尾をしないポリシーのヨークシャー・テリアのブリーダーさんを見つけ、子犬を迎えたのです。
「ティラが来てからは、日本から持参した犬の育て方の本を片手に毎日奮闘しました。わからないことは、日本のドッグプロの友人に相談したり。なんだか、もう終わったと思っていた育児の大変さが蘇ってきたようで必死でしたね(笑)」と、マリさんは振り返ります。
まず、日本との違いを目の当たりにしたのが、ティラにたくさんのマダニがついたことだとか。
「日本でも愛犬に数匹はノミがついたこともあります。でも、常夏のタイは日本以上にマダニやノミに関しては要注意ですね。室内に卵を産んだりして、あっという間に増殖してしまったと思うんです。私も家で悲鳴をあげていました!」と言い、その教訓を活かし、今は、飲むタイプのマダニ&ノミ予防薬を年中欠かさず投与しているそうです。
愛犬のために毎週プールとドッグランへ
常夏のバンコクで日中にコンクリートの歩道を歩くのは、熱中症のリスクが高すぎます。さらに歩道そのものがデコボコしていたり不衛生で、夕方にはスコールが来ることも多いため、バンコクのコンドミニアム(マンション)で犬を飼っている人の多くは、あまり犬を散歩させないとか。
「でも、犬なのに終生室内飼育だなんてかわいそう。だから、我が家は気象条件のよい時は近所を散歩したりもするし、毎週1回、ドッグプールとドッグランとレストランが併設されている施設に、ティラに楽しい刺激を与えてあげようと思って通っています」と、マリさん。
外国人が多く居住するスクンビット地区にあるこの施設の利用者の半分は、タイ人以外だそうです。ドッグランだけの使用料は200バーツ(約600円)で、プールも利用すると合計で600バーツ(約1,800円)。プールには安全のためにインストラクターがついていて、泳いだあとのシャンプーとドライングもセット。
「おいしい料理がいただけるレストランでは、犬トモもできました!」と、アンちゃんは喜びます。アンちゃんは、ティラがスイスイと優雅に泳ぐ姿はもちろん、ティラとの生活をインスタグラムのtira_dairyにアップ。今ではフォロワーが2,000人を超えています。
「ティラのおかげで、インスタで世界中の人とメッセージのやりとりをしたり、インスタでの犬トモもできちゃった」と、アンちゃん。
「ティラのおかげで、娘の世界も私の世界もものすごく広がりました」とマリさんは語ります。
「ティラのおかげ」が満載のバンコクライフ
もともと絵を描くのが好きだったアンちゃんですが、犬トモの愛犬の写真をアプリで加工して絵にすることも始め、それが犬トモなどに大好評にもなっているそうです。
ティラが家族にならなかったら、アンちゃんの絵の才能も開花しなかったかもしれないし、活かすチャンスもなかったかもしれないと、マリさんは思っているそう。
「バンコクは治安の問題もあって、日本のように小学生や中学生がひとりで家に帰ってきたり、帰宅してから公園に友達と出かけていくなんてことはないんです。親やお手伝いさんが送迎するので、日本よりは平日に友達と遊べる機会は少ないでしょうね。アンはひとりっ子なので、ティラはアンの放課後の友達や姉妹として遊び友達の役割も果たしてくれているような気がします」(マリさん)。
アンちゃんは、「ママがティラを飼ってくれて、本当に良かった! ティラってね、本当にかわいくておかしいの。泳ぐのが大好きだから、この間の散歩では、ホテル前の噴水に飛び込もうとしてた(笑)。予想しないことをして、いつも家族を笑わせてもくれるんだよ」と、明るい声で語ってくれます。
ティラちゃんのかわいさに夢中になり、アンちゃんの同級生でも犬を飼い始める人が増えたのだとか。
犬にはフレンドリーだけれども、ほかの人に時々吠えてしまう癖を直したいこともあり、バンコクで評判のイギリス人のドッグトレーナーの指導も受けたというマリさん一家。現在通っているプールとドッグランのある施設が11月で閉鎖されるかわりに、そのイギリス人ドッグトレーナーがラマ9世通りにオープンする同様の施設に12月から通う予定だと言います。
「そこでも、ティラの友達も、犬トモも増えるかな?」と、マリさんとアンちゃん。
きっとまだまだ、ティラはマリさん一家に新しい世界を広げ続けてくれるに違いありません。
連載情報
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著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。