日馬富士引退~法だけで判断し、相撲界の掟を無視していいのか?
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11/30(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!②
コンプライアンスを100%適用して、強い相撲部屋は作れるのか
7:02~ ひでたけのニュースガツンと言わせて!:コメンテーター 佐藤優(元外務省主任分析官・作家)
それぞれの世界の掟と法律問題
同じモンゴル出身の貴ノ岩への暴行の責任をとり、横綱日馬富士が現役引退を表明した。大相撲という特殊な世界のローカルルールと法ということに触れ、今回の暴行問題に疑問を持つと佐藤優氏は言う。
日馬富士)横綱としての責任を感じ、本日もって引退をさせていただきます。先輩横綱として、弟弟子が礼儀と礼節がなっていないと思い、それを正し、直し、教えてあげるのは先輩としての義務だと思っています。
高嶋)昨日の横綱・日馬富士の引退会見です。佐藤さんはこの大相撲のいまの状況、日馬富士の身の処し方も含めてどういうふうに判断されていますか?
佐藤)あまりよくない、変なことだと思います。法律問題と掟というのは普段はだいたい同じですが、違う場合があります。あえて日馬富士の話から外して政界の話をします。最近の不倫問題で、女性議員がホテルにいるところに男性が来て、朝までいたと。本人はワインだけ飲んでいたというけど怪しいところです。その不倫は損害賠償訴訟を起こされないかぎりにおいて違法ではありません。しかし政治家がそういうことをしていい? と。掟の世界に反していますから。ここで法と掟がわかれます。この議員の場合は掟よりも法的に違反していないから何の問題もないだろうといって、開き直って再選して勝ちました。これは法と掟がわかれているのにどう処するかということで、掟を無視して法で戦って勝ったという発想ですよね。
高嶋)なるほど。
佐藤)日馬富士の場合は法で戦えば、いまの一連の報道からするならば起訴猶予という制度があります。本人が殴ったということはあったけど、本人の反省と社会的な制裁を受けているかに関してはもうこれでいいよというものがあります。例えばいま体調を崩された野中廣務さんも、政治資金規正法違反で起訴猶予になりましたよね。法律違反はあったけど軽微なもので社会的な制裁を受けているし、これまでの貢献を含めて刑事事件にするには値しない、となる可能性が十分にありました。ところが横綱が暴力をふるったという事実だけで掟として許されないと表に出た場合は。それで処理しました。ただ問題はハリウッドのセクハラ疑惑や企業の中の新人教育もそうですけど、もしコンプライアンスを100%適用してすべて法の基準で判断して掟を無視してしまうと、果たして強い相撲部屋になるのだろうか。優秀な官僚は生まれるのだろうか。よきスターたちが映画界から生まれるのだろうか。もし映画界で俺と寝ないと作品に出さないぞというのは論外ですが。ビール瓶でぶん殴るのも犯罪です。たださまざまな行き違いがあったときに、どこまで厳しくやるかというところです。
上司を含むみんなが弱腰、ローカルルールが適応されなくなってきている
高嶋)前回おっしゃった世の中全体が、その世界その世界独特のローカルルール当てはまらなくなっていると。
佐藤)フラット化しています。新自由主義ですよ。これがあらゆるところに及んでいます。
高嶋)その証拠に先輩後輩とかどこの組織でも、上司を含む全員の腰が引けていて、触らぬ神に祟りなしで「若いやつのこんなところが良くない」と思いながら誰も何も言わない。
佐藤)飲み会でも何でもいい。高嶋さんが主宰する飲み会で新人のアナウンサーが仮にいたとして、話をしているのにスマホの動画に熱中していて全然話を聞いていなかったら、怒鳴りますか?
高嶋)怒鳴りますね。
佐藤)高嶋さんは黙っていても、きっと森田さんあたりが「君、何をやっているんだ」と大きな声を出す可能性は十分にありますよ。そういうものでしょう? だから相撲の世界でもそこのアナロジーで考えると、手をあげたということは論外だけど。
高嶋)貴乃花親方の杓子定規も、旗印に例えるとこっちに向いているから絶対に勝ちます。世間もそれに従う人が多いですが、その世界その世界にはいろいろな慣習があって。
佐藤)ローカルルールがいろいろありますから。それを完全に無視して家庭の中でやったらどうなります? 外務省の次官の杉山晋輔さんだって奥さんを叩いて警察に行ったけど問題なしになっているではないですか。家族だからローカルルールが適用になっただけですよ。
高嶋)そうか。そのへんの微妙さというのを表現していかないといけませんね。
高嶋ひでたけのあさラジ!
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