それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
人は誰も心の中に、幾つかの「つぶやき」を持っているといいます。言わなければならなかった誰かへの「ありがとう」言いそびれてしまった誰かへの想い。そして、もう届かない「ごめんなさいの言葉」も少なくないようです。
以前、スタッフが担当していたある「セミナー」の教え子に、埼玉県富士見市の41歳の主婦、キヨミさんという方がいらっしゃいます。キヨミさんは、今は亡きお父様への「ごめんなさい」を胸の中にかかえているそうです。その想いをお手紙に綴っていただきましたので、今朝はそれをご紹介させていただきます。
9月7日、家具職人だった父が亡くなりました。60年間、よその家の家具ばっかり作って、自分のイス一つさえ持てなかった人生・・・。でも、お酒と野球が大好きだった父の一生は、それなりに楽しかったのかなぁ・・・と、母と私は、そう思うことにしました。
父の遺品整理を始めました。すると、新品のグローブが二つ、出てきました。「ああ、それね、あんたとキャッチボールをしたくて買ったみたいよ」と、母が教えてくれました。
母が私をお腹に宿したとき、母の顔つきやお腹の形から、誰もが「男の子に違いない」と言っていたんだそうです。父は喜び勇んで「野球が好きな息子にするんだ」と、二つのグローブを買ってきて、ピカピカに磨き上げ、私の誕生を待っていたといいます。
ところが、出て来た私は女の子・・・。父は、さぞかしガッカリしたことでしょうが、そんなことは、いっさい口には出さず、ひとり娘の私を可愛がってくれました。
お仏壇の写真に、私は今日も語りかけます。「お父さん、男の子に生まれて来れなくて、ごめんね。土手で一緒に、キャッチボールをしたかったね・・・」
師岡正雄あさぼらけ 『あけの語りびと』
2017年12月20日(水) 師岡正雄あさぼらけ あけの語りびと より
朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ
番組情報
眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ