12/28(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③
慰安婦問題解決が不十分との内容の報告書が公開
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター佐藤優(作家・元外務省主任分析官)
韓国政府の作業部会が日韓合意検証の報告書を発表
慰安婦問題に関する日韓合意をめぐり、韓国政府が元慰安婦の意見集約が不十分だったとする検証結果を発表したことを受け、河野外務大臣は「合意の変更は断じて受け入れられない」と談話を通じて表明した。河野大臣はまた報告書に基づいて韓国政府が合意を変更しようとすれば日韓関係は対処不能となると警告した。
一昨年の今日12月28日に発表された慰安婦問題をめぐる日韓合意について、韓国政府の作業部会は昨日の午後この合意を検証した報告書を発表しました。
作業部会は韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相直属でして、報告書はまず日本と韓国の折衝が安倍総理の側近の谷内国家安全保障局長と朴槿恵(パク・クネ)前大統領の側近で駐日大使も務めた当時の李丙ギ(イ・ビョンギ)国家情報委員長の間で行われたとしています。その上で報告書は韓国側の交渉の権限が過度に大統領府に集中し、日韓関係の改善を重視した朴槿恵政権が交渉を主に政府の立場から決着させたと指摘しています。
被害者・元慰安婦の意見を十分に集約しておらず、政府間で最終的かつ不可逆的な解決を宣言しても、問題の再燃は避けられないと結論付けております。
また報告書は日韓合意に非公開部分があったことも明らかにしています。作業部会が示した非公開部分というのは、日本側は日韓合意への反発が予想される挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)などの説得を韓国側に要請した他、アメリカなどでの少女像設置の動きは不適切だと主張しました。これに対し韓国側は説得の要請を事実上受け入れて、海外での像の設置も支援しないと確認したということです。
さらに報告書は日本政府が拠出した10億円は客観的な算定基準に基づかず、元慰安婦らの意見が反映されなかったとも指摘しております。
ただこの報告書では日韓合意の見直しなどの提言はしていません。
日韓合意に関する問題はまるで芸能スキャンダルのよう 普通の外交ルールが通じていない
高嶋)佐藤さん、素朴に伺いたいのですけど、国と国とで交渉しますよね。そうすると国民や世界に向かって公表される部分というのは大体「結論はこれですよ」というのが出てくるわけですけど、その“見えない部分”が水面下に潜っていく。これは出て来る部分と見えない部分というのはどのくらいの割合ですか?
佐藤)こんなのは出て来ないのが普通です。30年後の外交文書解除のときに初めて分かるということなのですね。
これは“結婚と離婚”と同じで考えたら良いと思うのですよ。例えば松居一代さんと船越英一郎さんとか。結婚をするときは双方の合意ですよね。離婚のプロセスに至るときというのは、片方が「もう嫌だ」と言えばどんなにもう片方が相手を今のままにしようとしても駄目なのですよ。ただそのときに例えばYouTubeとかTwitterとかでありとあらゆることを言うとなると炎上するでしょう。韓国は今炎上させているわけですよ。炎上をさせることにメリットがあると思っているからなのですよ。そうするとこれは芸能ニュースと同じ構造で捉えた方が良いわけです。
高嶋)その発想で見た方が分かりやすいと。
佐藤)そうするとここでとにかく頭に来ていると。ここで炎上させると。韓国はそう考えているわけですよね。だから外交のルールでやっていないですよね。芸能スキャンダルに近いことになっています。
だから「マネージ不能」というのは間違えた話で、これはもう駄目になっている夫婦ですから、離婚しか無いわけですね。だから別居するなりクールダウンするべきで、駄目な上でどうやってマネージメントをするかと、これ以上YouTubeで余計なことを言わないようにする為にはどうすれば良いかと、こういう方向のマネージに入った方が良いと思いますね。
高嶋)ということは最終的にも不可逆的にもああいう表現というのは全部ぶっ飛んでしまったと。
佐藤)もう終わりです。これは常識で考えましょう。要するに結婚のときは両方の合意だけども、片方がこういうことを言い出してこの結婚生活を維持できるでしょうかという段階ですよね。
高嶋)でも佐藤さん、国のレベルでそんなことで良いのですか?
佐藤)これは珍しいのですが、起きてしまったことはどうしようも無い。要するに国家間関係でもひとつの国は今までのルールを守っていてひとつの国が極端に飛び跳ねたことをしてしまった場合にはそれが余計になってしまいますから。
でもそういう国はひとつではないでしょう? 今話している国のちょっと北の方にもそういう国があるでしょう。あの2つの国との関係というのは普通の外交のルールが通じない。約束はしたけども「守る」とは約束していないということになり得るということを常に考えた上で外交戦略を構築しなければいけないという、我々は非常に高い授業料を払ったと考えて先に進んで行くことが大切だと思いますね。
高嶋)過去の歴史の中でそういう国で象徴的なものはあったのですか?
佐藤)全く無いというわけではないですけど、ドイツ第三帝国とかですよね。
高嶋)ソ連が日ソ不可侵条約みたいなのをやりましたよね。
佐藤)ただあのときは連合国に言われているという側面との天秤がありますから。今回は天秤が無いのですよ。内政上の理由だからです。そうするとナチス・ドイツの第三帝国とかファッシ・イタリアとか、そういうところの方が先例に近いですよね。「一方的に外交のルールを決めることができる」「国際秩序は変更しても良いのだ」という考えはいかに国際社会の中で顰蹙を買うかと。
韓国にとっても大マイナスですよ。それから政権が変わっても国家が変わったわけでは無いですから。しかもそこで戦争があって革命があって政体が変わったわけでは無いですから。
合意は拘束するというのは国際法の大原則なのです。これは双方が合意しないところでこういった調査をすること自体おかしいし、しかも双方の国が秘密だと言っていることを一方の国が明らかにすると、今後もこういうことが有り得るということなので、秘密の話はできないですよね。だから韓国は今多くの物を失っているのですよね。
日本としてもこの合意ができなくなったら全部おしまいだというのは外交上の修辞としては良いですけど、もう終わったということを考えた上でどういう風に韓国との関係を再構築していくかという。嫌な人がいた場合人間だったら引っ越すという手がありますけど国家間は引っ越せないですから、こういう風に考えないといけないのです。ただこれによって日本が国際社会で失っている物は無いですからね。一方的に失っているのは韓国ですから。
高嶋)何だか文在寅(ムン・ジェイン)さんが中国に行ったときにもどうやら思うように接待してもらえなかったとか、何だか泣き言みたいなことをあそこは余計に言うのですよね。
佐藤)いずれにせよ内政上の理由で、今はおそらく「我々はコケにされている、軽く見られているんだ」ということを言うのが「何を!」というかたちで、だから「大統領頑張れ!」となっていると。「今までの大統領は本当に国の利益よりも外国の為に動いていましたね」と、こういう雰囲気を出そうとしている内政要因ですね。
韓国は自分のことしか考えていない”トランプ症候群“ 善悪ではなく快不快で動く外交になりつつある
高嶋)社会常識的なことで言うと、何だかトランプさんと少し似ていません? 自分のことだけ考えるみたいな。
佐藤)似ています。だからこれは“トランプ症候群”がこういうような形で世界中に広まっているのですよ。自国のことだけ良ければ構わないのだという発想ですよね。それで相手が激しく文句を言って来て、マイナスになったときに初めて考え直すと。しかしそれも心の底から反省しているのではなくて得か損かで動いているということですよね。
犬は「テーブルの上に乗るな」と言ったら本当に言うことを聞いて乗らないですけど、猫はテーブルの方がちょっと温かいと乗っている。それは善悪ではなく快不快で動いているのですよね。だから少しそういう風な外交になってきていますよね。だから「ばれなきゃ良いんだ」とか「文句言わなければ良いんだ」とか、あとはとりあえず大声で言ってみて後から妥協するにしても「大声で言った後で折り合いを付けるから自分の方に少しだけ有利になるんだろう」とか、これは“トランプ型”ですよ。
高嶋)常識的に考えれば、北朝鮮がいつ何をするか分からないようなおかしな状況になっているわけでしょう。それと休戦協定を結んでいて南の方で自由を謳歌しているわけですけど、アメリカや日本というのがこちら側の体制で韓国を押してくれるわけで、そういう状況から言えば、とてもこんなことを言えた義理では無いと僕は思うのですけどね。
佐藤)そこについては「それはそれ、これはこれ」という。だから「そこの部分は思い切り言わせてやるけども、北朝鮮に対して韓国が頑張るときにはちゃんと助けろよ。それはそれ、これはこれ」と、こういう話でしょ。
高嶋)河野さんも打つ手は無いですかね?
佐藤)無いですね。これは打つ手が無いです。だから逆に冷静に、打つ手が無いというところから認識して時間を掛けて向こうの対応が変わるまでは少し静かにしておくと。この合意は崩れたと見た方が良いと思います。
高嶋)来年の朝鮮半島って無茶苦茶面倒くさいですね。
佐藤)面倒くさいです。本当に大変で複雑です。これは何も無いということの確認が重要です。
高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00