サンフランシスコ慰安婦像設置問題~日本は無視するべきか

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11/24(金)FM93AM1242ニッポン放送『宮家邦彦のあさラジ!』今日の聴きどころ!②

過度な反応は向こう側の追い風になってしまう
7:02~宮家邦彦のニュースガツンと言わせて!

慰安婦像 サンフランシスコ

セント・メリーズ公園展示スペースに設置された慰安婦像=2017年9月22日、米カリフォルニア州サンフランシスコ 写真提供:産経新聞社

サンフランシスコの慰安婦像~市長が設置受け入れで大阪市が姉妹都市解消へ

日本の大阪市と姉妹都市であるアメリカのサンフランシスコ市で、慰安婦像の設置を市長が受け入れた。日本にとっては、これはあまり好ましくない出来事である。しかし、今回の件について、アメリカ国内の、サンフランシスコ市の視点から見ると、今回の慰安婦像設置について、日本では気付きにくい、新たな政治的側面が見えて来た。

宮家)この時間注目するニュースは、「サンフランシスコの慰安婦少女像」についてです。

森田)サンフランシスコの少女像は、ベンチに座る像ではなく、中国・韓国・フィリピンの少女3人が背中合わせに手をつなぎ、立っているデザインです。これはいろいろなデザインがあるのですね。

宮家)作者が変われば、像も変わるのですかね。

森田)地元の中国や韓国系の団体等が、チャイナタウン(中華街)近くの民有地に像を設置し、その土地を市に寄贈し、市議会が像の受け入れを決めていました。「市長は10日後まで、決議への拒否権を行使できる」と定められていたのですが、サンフランシスコのリー市長が、22日に少女像設置を受け入れる文書に署名をしました。
これを受け、姉妹都市である大阪市の吉村市長が「信頼関係は消滅した」とコメントを出し、来月の12月中に、姉妹都市解消の手続きを完了させる方針を示したようです。

慰安婦像 バス

2017年8月14日、ソウル市内の路線バス車内に登場した慰安婦像 写真提供:産経新聞社

日系人との大きな違いは、韓国とアメリカ、両方のアイデンティティを持っていること

宮家)えげつないね。皆さんの腹立たしい気持ちは分かります。「けしからん!」と思います。だけどこれを「アメリカの国内政治」だと思うと、違う見方があります。
カリフォルニア州サンフランシスコ市には、私の娘もですが、アジア系が多いのです。中国系もいるし、韓国系もいるし、いろいろある。

森田)このリー市長の両親は中国人ですよね。

宮家)そうですね。まあ、必ずしも反日では無いかもしれませんが、やはり票を持っているわけです。そして、アメリカ国内ではアジア系と言えば、最初中国が入って、それから日本人もかなり移民しましたよね。しかし、日本の場合は第2次世界大戦があって、真珠湾以降は非常に辛い立場になってしまった。母国が敵国になってしまったのですから。その意味では、日本の移民、もしくは日系人は、あまり政治的に活動はしていなかった。むしろ、「静かにしていよう」ということでした。
ところが、韓国や中国の場合、そうしたしがらみもないし、その意味では「アメリカの普通の市民」としてやるのですが、そのときに、日本は二重国籍を認めないでしょう?

森田)そうですね。どちらかを選択します。

宮家)なので、「アメリカ人」になってしまうわけですが、韓国の場合、私の知る限りでは二重国籍を認めていると思うのです。ということは、韓国籍を持ちながら、アメリカ人でもありえて。つまり、「自分は半分韓国人である」というアイデンティティ的な部分。これが、
まず第1に、日系人とは違います。

慰安婦像 ブルックへブン

2017年6月30日、米南部ジョージア州のブルックへブン市の公園に設置された慰安婦像 写真提供:産経新聞社

日本が反応するほど韓国系の追い風となる

宮家)2つ目に違うのは、彼らは必ずしも結束しないのですよ。ご存じのとおり、韓国、朝鮮半島から来た人は、地域によって皆違います。ですから、アメリカでも「必ずしも一致妥結するわけではない」と言われています。しかし、矛先が日本となると急に皆元気になって、反日で結束するわけです。その意味では、このような像を作ること、そして、それを公式なものとして常に残していくのは、単に日本に対する嫌がらせだけでなく、アメリカ国内で票を固め、そして韓国のコミュニティを維持していくための1つの手段として使われているのだと思います。実際に、ロサンゼルスの近郊のグレンデール市にも、似たようなものが最初、造られました。あの場合は、市のものでは無いのですが、一度見に行ったことがあります。「近くで見ると、何をされるか分からない」と言われていたので、遠くから見ましたが、実際には何もありませんでした。ようするに、誰も見ていないわけです。「式典がある」と聞いて行ってみたけど、ほんの小さな集まりですよ。ですから、アジア系以外のアメリカ人にとっては、そんなに大きな関心を持つものではないのですよ。
その意味では、私は大阪市長の姉妹都市解消も、気持ちは分かります。しかし、それよりも、この問題は、日本が大きく反応すればするほど、怒れば怒るほど、向こうにとっては追い風になるわけです。それでますます大きくなって彼らが結束するのなら、「無視した方がいいかな」と思います。しかし、かといって無視もできないし、辛いところですね。

森田)今日の産経新聞は、「計画を察知して、それで関係者を説得するのが課題」と書いていますね。

宮家)それは、総領事館がやっていると思います。ただ、内政なので、どこまでやれるか、限界があることも事実ですね。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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