イランの反政府デモにより、北朝鮮の日本への脅威が増す

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1月4日(木)FM93AM1242ニッポン放送『高嶋ひでたけのあさラジ!』今日の聴きどころ!③

イランで拡大を続けるデモの原因とアメリカ・北朝鮮・日本への影響
7:10~やじうまニュースネットワーク:コメンテーター佐藤優(元外務省主任分析官・作家)

イランでデモ拡大 非難の矛先は経済政策から体制そのものへ

年末に始まったイランの反政府デモは全土で拡大を続け、4日で発生から1週間が経つが、混乱の着地点は見えていない。強権を握る治安当局が異論を弾圧してきたイランでは異例の事態で、政情の不安定化が懸念される。

イランで年末の28日から始まったデモは当初は物価の上昇だとか、政府の経済政策などに対する不満が原因でした。穏健派のロウハーニー大統領は2015年に欧米など6ヶ国と核合意を結びまして、経済制裁も解除されています。
ですが多くの国民は生活の改善を実感できていません。しかもアメリカのトランプ大統領がこの核合意の実効性を認めず、核合意破棄の可能性も囁かれています。

イランでは若者の失業率が29%を超えておりまして、通貨は下落。日用品の物価も上昇が止まらないという状況です。デモはイラン全土の40都市以上に拡大し、これまでに23人の死亡が伝わっている他、900人以上が拘束されたということです。非難の矛先が1979年以来続くイスラム共和制そのものに向いてきています。

デモでは最高指導者ハーメネイー氏を否定し、「独裁者に死を」といったスローガンが叫ばれています。1979年のイラン革命で親米独裁王政を打倒し、40年近くイスラム教シーア派の聖職者による統治を続けてきた今のイランの体制にとって、最大のタブーが破られた形です。

イランでは選挙で選ばれる大統領というのは行政の長に過ぎませんで、外交とか国防といった国の重要事項は最高指導者が大方針を決定しています。このままデモが長引きますと、軍事力が強大とされる革命防衛隊を投入する恐れもあるのですが、今回のデモは若者が中心で指導役がいないという風にも言われてまして、大規模な政変には発展しないのではないかという見方も強まっております。

一方でイランの指導部はアメリカのトランプ政権やスンニ派のサウジアラビアなどを念頭に、デモ拡大の裏に敵国の陰謀があると主張しています。また、イランを安全保障上の最大の脅威としているイスラエルのネタニヤフ首相はデモを支持する一方で、イスラエルはこのデモに関与していないと否定をしています。

ハーメネイー氏が否定される原因は聖職者階級の腐敗と、カリスマ性の無さ

高嶋)イランと言いますと、昔のバーレビ王朝のときに、倒してフランスからホメイニー氏というシーア派の偉い人がきて、すごい国だなって思ってたんですけど。今のハーメネイ―氏というのはなぜ否定されるのですか?

佐藤)基本は聖職者階級の腐敗です。ですから逆にこれ不思議なのですがね、制裁が解除されたでしょ? 経済は確かに上向きになっている。ただし分配はきちんとされていない。聖職者たちのところで分けちゃってるから。それは、選挙によって聖職者たちを変えることができないんです。イランのイスラム憲法では、最高指導者、かつてはホメイニーさんがやって今はハーメネイ―さんがやっている。そこのところは動かせないんですね。ところが、前のホメイニーさんを横綱とすると、ハーメネイ―さんというのは前頭くらいなのです。

高嶋)そんなに格が違うんですか。

佐藤)というのは、ハーメネイ―さんはゴムの神学院出身じゃないから。ゴムという街があって、そこの神学院出身者が上で占めているので、あんまりイランの聖職者の中ではあいつがすごいぞという感じは無いんですよ。

高嶋)カリスマ性に欠けていると。

イランの動乱によって利を得るイスラエルとサウジアラビア、デモの影にあるものは?

佐藤)ですから、前大統領のラフサンジャーニーさんという人、この人が亡くなっちゃったんで、全体のバランスが取れなくなっているということもある。あとイランの核開発と外国に兵士を送ったりしている最精鋭部隊は正規の国防軍じゃないですからね。革命防衛隊ですから。そういう意味において、イランはいま内政に集中している。となると、シリアに出て行くことができない。イエメンにもいけない。それによって得をする国がどこかって考えると、イスラエルとサウジアラビアなんですね。そうするとイスラエルのネタニヤフ首相が今回のデモには関与してないと言っても、これは関与してなければ関与してないって言いますし、この種の話は関与してても関与してないって言いますからね。サウジアラビアはイランの中に手を突っ込む能力無いですから。そうすると、アメリカのCIAとかイスラエルのモサドとか、その辺のスパイ小説に出てくる人たちが暗躍している。というような憶測は当然出て来ます。

高嶋)じゃあハーメネイ―氏の言う、アメリカのそういう謀略というか先導、そういう風に焚きつけてるんだと言うのも当たらずとも遠からずと。

佐藤)イランはあちこちの国でそういうことばかりやってますから。自分たちがよくやってるからやられてるときわかるんですよ、あっこれ人の手が入ってるって。ただ、根っこにあるところは自分たちの腐敗ですから。指導者がいれば指導者捕まえれば済むんですけど、これは大変ですね。

トランプ政権と日本への影響

高嶋)トランプ政権としてはどうなんですか? イスラエルも影響はある。それからイランは大嫌いですよね。

佐藤)状況はよくわからないけどイランがガタガタしてるのは良いことだと、その程度だと思いますね。ただ、ここに深入りしていくことになりますので、北朝鮮に手が回らなくなる。だから我々は北朝鮮との関係で、トランプ政権はどうなるかっていうことは死活的に重要なのですが、柱が半分くらい外れかけてる。これがさらに加速するという。今回のイランの騒動でそんな情勢だと思います。

高嶋)イランに対しては全く放っとくわけにはいない。どんどん深入りしていくだろう。そうすると北朝鮮問題に対してはトランプさんはそっけなくなっていくと。

佐藤)そういうことです。それから日本もイランへの投資とかで深入りしないことですね。何が起きるかわからない。

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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