他人事じゃない!? 現代の恐怖「ネットリンチ」の闇

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ここ数年来、有名人のツイッターやブログでのちょいとした発言が、「ネットで炎上」した! … な~んていうニュースを、よく耳にしますよね。つい最近、この「炎上」という言葉に代わって、もっと恐ろしい言葉が生まれたそうです。

聴くだに恐ろしいその言葉とは、ズバリ… 「ネットリンチ」! 文字通り、「ネット上でリンチに遭う」という意味の言葉です。

「炎上」程度ですと、そのうち鎮火するものですよね。ところが… このネットリンチという状態になりますと“攻撃”の火の手は燃え盛る一方! 全世を敵に回し、人生のすべてが壊れてしまう事態にもなりかねないというんです。

この言葉、ジョン・ロンソンというイギリスの有名ルポライターが書いたノンフィクション、『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』(光文社新書)という本で、一躍有名になりました。ツイッターごときで人生が壊されるとは… 一体なにが起こったのでしょうか? 今日は、まさにSNSの時代ならではの、典型的な「ネットリンチ」! この本にも紹介されている、「世界最大のツイッター炎上事件」にスポットを当てます!

最初に、言っておきましょう。このネットリンチ事件の主人公は、芸能人でもなんでもありません。ごくごく普通の、アメリカの、30歳手前の白人女性。あるインターネット関連企業の、広報部に務めています。その名を、ジャスティン・サッコ。彼女は、ツイッターをやっているのですが…フォロワー(ツイッターにおける「読者」)の数は、170人程度。まぁ、最近ですと、これくらいのフォロワー数は当たり前。会社の広報の仕事をしていることを考えますと、むしろ少ないと言えるかもしれません。

さぁ、ここからが本題です。「史上最大のネット炎上事件」は、2013年、12月20日に起こりました。このとき、ジャスティン・サッコは、有給休暇をとっていました。彼女は、ヨーロッパを経由してアフリカに向かう一人旅を、満喫しようとしていたのです。

ヨーロッパ旅行を終えた彼女は、ロンドンのヒースロー空港で、アフリカ行きの乗継便を待っていました。いよいよ、飛行機への搭乗時間がやってきます。彼女は、離陸直前、こんなツイートをしました。

「アフリカに向かう。エイズにならないことを願う。冗談です。言ってみただけ。なるわけない。私、白人だから!」

ジャスティン・サッコとしては、ほんのジョークのつもりだったそうです。でも…当然ながら、エイズに罹患するかどうかという問題と、人種や国の違いは、「まったく」関係ありません。「白人だからエイズになるわけない」などという考え方は、不適切だの、非常識だのという以前の問題。100%「間違い」です。ジョークにしたところで、著しく配慮に欠けた言説というほかないでしょう。ところが…このたったひとつのツイートが、彼女の人生をガラリと暗転させていくんです。

彼女は、携帯の電源を切って、アフリカ行きの飛行機に乗り込みました。11時間の長いフライトです。もちろんそのあいだ、携帯は繋がりません。旅の疲れもあって、ジャスティン・サッコは、ほとんど眠っていました。ようやく飛行機が、アフリカ・ケープタウン国際空港への着陸態勢に入りました。彼女は、寝ぼけマナコをこすりながら、携帯の電源を入れました。すると… 昔の女友だちからの奇妙なメッセージが、目に飛び込んできたんです。

「こんなことになるなんて、とても悲しいよ」

さらに、ハンナという名前の親友からは、こんなメッセージが届きました。

「すぐに電話して!」
「今、あなたは、ツイッターで、全世界のトレンド第1位になっているのよ!」

いったい、どういうことなのか? そんなことを考えるヒマもないうちに…世界中の人々のメッセージが、ガンガンと飛び込んできました。

「ジャスティン・サッコのツイート。人種差別があまりにひどすぎて、恐ろしい!」
「言葉も出ないね。恐怖以上の何かを感じるよ…」
「ジャスティン・サッコという、このとんでもない女のことを、皆に知らせるべきだ!」
「本当はもう家に帰りたいんだけど、いまいるバーでみんながジャスティン・サッコに夢中になっているもんだから、帰るに帰れないわ!」
「破滅に一直線に向かっているのに、本人は飛行機に乗っていて気づいてない」

さらに…なんと、彼女が務めている会社の社長も、こんなツイートを行なっていたんです。

「(ジャスティン・サッコのツイートは)あまりに非常識で、言語道断なコメントという他ありません。確かに彼女は弊社の社員ですが、現在、国際線の飛行機に乗っており、連絡がつかないのです」

そして… 恐ろしいことには…世界の何者かによって、飛行機の行き先をリアルタイムで追跡できるサイトへのリンクが貼られたんです。要するに、彼女の乗っている飛行機が今どこにいるかを、世界中がリアルタイムで確認できるようになった… というわけなんです! するとすぐに、こんな新しいメッセージが飛び込んできました。

「ジャスティン・サッコの乗った飛行機が、あと9分で着陸するみたいだ! みものだぜ!」
「もうすぐ、リアルタイムで、あのバカ女がクビになるところが見られますよ!」
「おお、もう少しだ! 誰か、ケープタウンにいるヒト! 空港に言って、彼女が飛行機から出てくるところを実況できませんかね? できれば写真付きでお願いします!」

ゾッとするほかありませんが… 驚いちゃいけません。本当に、これに応える男が現れたんです。ケープタウン国際空港では、一人の男が、彼女の到着を今や遅しと待ち構えていました。そして… この男は、喜び勇んで写真を撮りまして、ツイッターに投稿したんです!

「おお! ジャスティン・サッコが、ついにケープタウン国際空港に到着したぞ。変装のつもりか、サングラスをかけている!」

ジャスティン・サッコは、真っ青になりながら、即座に問題のツイートを削除しました。ところが…その直後。『世界の誰か』から、こんなコメントが届いたんです。

「気の毒だね、ジャスティン・サッコ。 ツイートというのは…一度書いたら、永久に残るんだよ」

問題のツイートをおこなう前、彼女の名前が検索されたことは、ほとんどありませんでした。ところが… ツイート後、ジャスティン・サッコの名前がグーグルで検索された数は、なんと「122万回」にのぼっていたんです…。

結局、彼女は、会社を辞めざるを得なくなりました。彼女自身の言葉によると、あのツイートは、「アパルトヘイト(人種隔離政策)の後も続く南アフリカの過酷な状況を何も考えていないアメリカ人を、自虐的に揶揄するジョーク」だったのだそうです。でも… もう、すべては、遅すぎました。

「世界最大のツイッター炎上事件」を引き起こしたジャスティン・サッコ。その後、ジョン・ロンソンの取材に対しまして、こう答えています。

「私は30歳です。かつては、とても良い仕事に恵まれていました。でも、今、予定は、何もない…。恋愛だって無理です。私は独身ですが、この先、誰かと、つき合うのも難しいでしょう。いくら隠そうとしても、今はグーグルで検索すれば、すぐにわかってしまう。事件のことを知れば、相手は離れていくでしょう。もう私には、新しい出会いなど期待できないんです」

たったひとつのツイートで、ごく普通の一般人の人生が、壊れてしまうこともある…「ネットリンチ」のことを、「現代の公開羞恥刑」と呼ぶ人もいます。アナタはこの「ジャスティン・サッコ事件」を、どう思いますか?

2月21日(水)高嶋ひでたけのあさラジ!「三菱電機プレゼンツ・ひでたけのやじうま好奇心」より

高嶋ひでたけのあさラジ!
FM93AM1242ニッポン放送 月~金 6:00~8:00

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