【しゃベルシネマ by 八雲ふみね・第373回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、3月10日に公開となった『彼の見つめる先に』を掘り起こします。
爽やか&胸キュン、世界中で話題をさらった青春映画の傑作
『セントラル・ステーション』や「シティ・オブ・ゴッド』など、日本でも根強いファンが多いブラジル映画。多くの名匠を生み出しているブラジル映画界が注目する新たな才能、ダニエル・ヒベイロ監督の作品が日本初公開となりました。
第64回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞とテディ賞を受賞、2015年アカデミー賞外国語映画賞ブラジル代表、そしてSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014長編コンペティション部門では脚本賞を受賞と、世界が熱視線を送った青春映画が鮮やかにスクリーンを彩ります。
ちょっぴり過保護な両親と優しいおばあちゃん、そしていつもそばにいてくれる幼なじみのジョヴァンナに囲まれて暮らす、少年レオ。目は見えないが、初めてのキスと留学を夢見るごく普通の高校生だった。
ある日、レオとジョヴァンナのクラスに転校生のガブリエルがやって来る。ほかのクラスメートのように目が見えないことをからかったりしない自然体のガブリエルと親しくなっていくレオとジョヴァンナ。
やがて3人それぞれに気持ちの変化が表れて…。
大人の入り口に立つティーンエイジャーたちの揺れ動く感情を瑞々しく切り取った本作。なるほど、三角関係のお話なのね…と、ここで皆さんがイメージしたのはジョヴァンナを巡った三角関係なのではないでしょうか。
この映画で描かれている三角関係は、なんとレオとジョヴァンナがガブリエルに恋心を抱く…という関係性。詳しいことはご覧いただくとして、この映画は“ボーイ・ミーツ・ボーイ”ムービーなのです。
ダニエル・ヒベイロ監督は自身がゲイであることを公表しており、ストレートのカップルを描くのと同じ感覚で同性愛を表現したかったのだとか。
身体的障害やマイノリティといったナーバスなテーマを扱いながらも、誰もが登場人物に共感出来る爽やかさが全編に渡って駆け抜け、心が洗われるような作品に仕上がっています。
レオとジョヴァンナ、ガブリエル。三者三様の“思いのベクトル”がほろ苦くて、甘酸っぱい。思春期特有の言葉に出来ないもどかしい気持ち、そして人生を鮮やかに変えていくかけがえのない出会い。
優しさと美しさに満ちた少年少女の成長物語は、老若男女を問わずほっこり温かな気持ちにさせてくれることでしょう。
「もっと自分に自信を持っていいんだよ」というヒベイロ監督の力強いメッセージが、観る者を優しく包み込んでくれますよ。
彼の見つめる先に
2018年3月10日から新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督・脚本:ダニエル・ヒベイロ
出演:ジュレルメ・ロボ、ファビオ・アウディ、テス・アモリン、ルシア・ホマノ、エウシー・デ・ソウザ、セウマ・エグレイ ほか
公式サイト http://www.mitsumeru-movie.com/index.html
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/