米朝首脳会談中止~韓国仲介で伝言ゲームになってしまった「非核化」の認識

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5/25  FM93AM1242ニッポン放送『飯田浩司のOK! Cozy up!』今日の聴きどころ!①

トランプ大統領が6月12日の米朝首脳会談の中止を発表
7:10~お早う! ニュースネットワーク:コメンテーター宮家邦彦(外交評論家)

トランプ 大統領 ペンス 副大統領 ホワイトハウス

2018年5月24日、米ホワイトハウスで発言するトランプ大統領(左)を見つめるペンス副大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

「北朝鮮が核兵器を破棄することはない」とトランプ大統領が判断

来月12日にシンガポールで予定されていた米朝首脳会談について、ホワイトハウスは24日トランプ大統領が中止を告げる金正恩朝鮮労働党委員長宛ての書簡を公表した。この中でトランプ大統領は「会談を楽しみにしていたが、残念なことに北朝鮮の最近の声明で示されている怒りや敵意を受けて、私は現時点でこの会談を開くことは適切ではないと感じている」と中止の理由を綴っている。書簡は24日付で、トランプ氏自筆の署名もされている。

飯田)まずはこのニュース、衝撃が走ったというところですけれども、率直にどうご覧になりましたか?

宮家)いえ、衝撃は走っていないです。ああやっぱり、ということですよね。本来、力関係を冷静に見れば、やはり北が核兵器を本気で破棄するかについては恐らくその気はないんでしょうね。それがはっきりしたということだと思いますよ。
アメリカも基本的に完全、検証可能、不可逆的な非核化、これからずれなかったですよね。だからどんなに文在寅さんが頑張って両者を取り持とうとしても、そこには限界があったと。もう少し冷却期間を置いてやり直さなくてはいけないと思うけれども、決して簡単ではないと思いますね。

飯田)半年間の甘い夢に冷や水を浴びせられたという感じもありますが、専門家の方はどう見ていらっしゃるのか。北海道大学大学院教授で国際政治学者の鈴木一人さんと電話が繋がっています。鈴木さん、おはようございます。

鈴木)おはようございます。

飯田)よろしくお願いいたします。このニュースが流れてから鈴木さんも精力的にTwitterなどでも発信されていますけれども、まずはどうご覧になりましたか?

鈴木)宮家さんが仰る通り驚きではないというか、元々アメリカと北朝鮮の間の溝は非常に深くて、北朝鮮が一方的に対話ムードを作ってきたわけですけれども、それも一種の戦略があったと思うのですが、最終的に核兵器をアメリカが求めるような形で廃棄する気は元々なかった。ようやくトランプ大統領がそれに気が付いたというか理解したということなのだろうと思います。

韓国が仲介に入ったことで伝言ゲームのように誤解が生じた

飯田)トランプさんは最初に交渉に乗ったじゃないですか。しばらくの間誤解していたということでしょうか?

鈴木)誤解というか期待というか、韓国が仲介に入って北朝鮮は非核化に本気であると言ったときに、その非核化というのが何なのかきちんと詰めないまま自分の考える非核化、つまり完全で検証可能で不可逆的な非核化だと思っていたのが、実はそうではなかったという。間に韓国が挟まったせいで誤解が伝言ゲームのように起こってしまったのでは、と思っています。

飯田)直接面と向かってだと話始められなかったけれど、間に仲介者めいた韓国がいたからこの半年間が生まれたということになるわけですか?

鈴木)そうだと思います。間に韓国が仲介者として存在したが故に対話が始まったわけですけれども、やはり韓国はそこの溝を埋めきることができなかったのだろうなと思います。

難しい再度の対話

飯田)今後ですけれども、今回の書簡の書きぶりだとまたあるんじゃないかという人もいるわけですけれども、鈴木さんはどうご覧になっていますか?

鈴木)確かに文面だけ見るとそうですけれども、あれはトランプ大統領流の書き方で、公式文書としてはとても異様な文書だと思います。ただ同時に重要なポイントは、「北朝鮮の核兵器よりもアメリカの核兵器の方がより強力」、ということが書いてある。要するに次に何かあるにしてもアメリカの核の脅しのもとでやるんだと、だから俺の言うことを聞けというのがトランプ大統領の姿勢なので、北朝鮮がそれを受け入れなければ対話というのは非常に難しいだろうと思います。

飯田)うちの核の方が強いぞという後に「使わない事を神に祈っているけどな」というような一言があるじゃないですか。これはやはりちらつかせていると読むべきですね?

鈴木)ちらつかせているというか、そういう立場にアメリカはあるのだから、北朝鮮は言うことを聞けと、そういう姿勢を一貫してトランプ大統領は持っているということだと思います。

米朝首脳会談中止~韓国仲介で伝言ゲームになってしまった「非核化」の認識

アメリカの武力行使の可能性は低い

飯田)メールで質問がきているのでお答え頂きたいのですけれども、「外交において言葉使いが丁寧になると武力行使が近いと聞きました。今回もそうなるんでしょうか?」千葉佐倉市の「たけさく」さんから頂きましたが、お2人は今後のアメリカの軍事的な動きはどうご覧になっていますか?

鈴木)これは元外交官の宮家さんにお話頂く方がいいと思いますが、私としては言葉遣いが丁寧なのは武力行使を示唆しているというわけではないと思います。今回はトランプ大統領の期待がまだあると。金正恩がそれなりにいままで対話ムードでやってきた部分をとりあえず維持したいという願望と、北朝鮮の言いなりにはならないぞという姿勢の組み合わせなので。トランプ大統領というのは過去の一般的なルールというのはあまり当てはまらない人なので、外交の文書が丁寧だからといって武力行使を示唆するということではないと思います。

飯田)宮家さんは如何ですか?

宮家)その通りだと思います。ついでに言うと、アメリカが武力行使だとみんな言うけれど、何を根拠にどのようにしてやるのかと考えたら、下手をしたら北朝鮮と韓国は大戦争になるわけですよね。言うのは簡単だけれど実際にはそんなに簡単にはできない。トランプさんの場合には、相手に対して何かを本当にして欲しいときには凄く丁寧な言葉を使います。それでそれをやらないと凄い罵声を浴びせるというね。非常にわかりやすい人だと思います。外交的ではないですね。

飯田)最後に、これから先非核化はどうなっていくのですか? このまま平行線の間にどんどん開発しちゃうという悪夢みたいな展開はあり得るのでしょうか?

鈴木)今回核実験場を閉鎖するということで、核実験を次々やるということは当面ないだろうと思います。ただ交渉自体は一旦中止ということで、非核化の話というのは当面前には進まないと思います。
アメリカが何かの形で刺激をしてくると、例えばミサイル実験を再開するとか挑発的な行為はすると思いますが、ただもう既に6回核実験をやっていまして、これはインドやパキスタンも6回くらいなのです。ですから核実験の必要はあまりないので、我々が見えないところで核弾頭を生産していくということが続けられると思いますが、見える形で核兵器の開発を進めるということではなく、静かに核弾頭が増えていくという状態になると思います。

今後、日本はどうすればいいのか

飯田)北海道大学大学院教授で国際政治学者の鈴木一人さんに伺いました。
宮家さん、今後の我が国としてというところですけれども、北の核がどんどん増えていくかもしれない、日本に届く中距離ミサイルというのは既に200発以上が配備されているという話もあります。蚊帳の外論みたいなものがありましたけれども、これに対してはどうですか?

宮家)蚊帳の外だったらこんな風にならないでしょう。これは日本がずっと厳しく言い続けていることですよね。非核化の中身を詰めなくてはいけない。残念だと思いますが、今回トランプさんは正しい判断をしたのですよ。
北朝鮮が今後本当に生き延びていきたいと考えるなら、最後のチャンスだと思います。ある程度譲歩をしなければならない、しかしする気がなかった、ここで厳しい内容のレターがきた。それに対してどう対応するか次第ですよね。日本がそれに対して何をするかというのは簡単です。いままで通りやればいいのです。核兵器を作ったらこの国は終わるということを思わせない限り、彼らはやめませんから。日本とアメリカの連携をこれからも続ける、これが一番大事だと思います。

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