罰は与えない! 資格や約束された将来を捨てて異端児ドッグトレーナーが誕生したワケは?

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【ペットと一緒に vol.94】

細野 栄作 ドッグトレーナー 犬 いぬ イヌ 愛犬

3歳の頃、祖父の愛犬であるセントバーナードにまたがって笑顔で写真に収まっていた、細野栄作さん。犬好きという軸はブレることなく、ハタチになると犬の訓練所の見習いに。ところが、そこで思わぬ壁にぶち当たり、大きな方向転換と果たします。

今回は、回り道をしながらも、犬と飼い主さんのしあわせの実現を追い求めた細野さんのストーリーをご紹介します。


訓練所の異端児!?

「たぶん、転職組が多い家庭犬のドッグトレーナーのなかで、犬の専門学校を経て訓練所出身という経歴を持つ人は少ないはず」と、細野さんは語ります。

実は細野さん、5年近い訓練所時代に訓練競技会の全国大会で2度の全国1位に輝きながら、同じ犬の世界とはいえ、違う道へと転身したレアケースなのだそう。

細野さんはあと少しで訓練教士の資格などを取れたそうで、訓練所を巣立ったあとには顧客を紹介してもらえたり、訓練競技会などをフィールドとした訓練士としての将来が約束されていたのだとか。

訓練所 時代 シェパード 犬 いぬ イヌ 愛犬

訓練所時代からシェパードがいつもそばに

「いい意味で道を踏み外す(笑)、大きなきっかけは日本一になったことでした。担当してお返しした受賞犬が、飼い主さんの言うことを聞かないという光景を目の当たりにしたときは、衝撃でしたね。自分の指示にはよく反応するのにな……、今まで自分が行ってきた方法では飼い主さんはハッピーにできていないんだ」と、細野さんは気づいたそうです。

当時細野さんが住み込んでいた訓練所は、犬に罰を与えての訓練が主流だったと言います。

「叱ったり、体罰を与えたりしていたので、犬は萎縮しているようにも見えました。まずは、その方法を見直す必要があるように感じました」。

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細野さんの愛犬と愛猫


人生のターニングポイント

細野さんが最初に行ったのは、海外のアニマルトレーナーや動物の行動学者の著書を読みあさることでした。

「本で得た知識を活かしつつ、飼い主さんでも愛犬に教えられるような方法を編み出そうと、訓練所にいる犬たちに試していたら、『勝手な方法を使うな!』と所長などから目をつけられてしまって。でも、犬も飼い主さんも楽しんで学べる方法を伝えられるインストラクターを目指したい! という思いが強くなっていたので、『今独立しても、食べていけない』と知りながら訓練所を退所しました」(細野さん)。

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犬に囲まれる生活は今も同じですが……

住み込みの見習いという立場で、携帯電話の所持禁止、月給(小遣いのようなもの)3万円。常時80頭の犬(8割はシェパード)に囲まれた細野さんの20代前半は終わり、新たな人生のステージがスタートしました。


迷いが晴れた2度目の転機

アルバイトをしながら、家庭犬のドッグトレーナーとして独立した細野さん。そのことを知った母校の専門学校から誘われ、週に2回、講師として働き始めもしました。

そんななか、2度目の転機が細野さんに訪れます。

「アメリカにドッグトレーニング研修に行ったんです。向こうで、罰を使わないトレーニングを行っている様子を見て、その手法にどっぷり浸かって、『よし!』と自分の方向性に確信が持てました」。

ドッグトレーナー アメリカ 研修 時代

実り多きアメリカ研修時代

「でもやっぱり、罰を完全に使わないトレーニングなんてできるだろうか?」と、帰国後なおも抱えていた疑問を、動物応用行動分析学を用いたトレーニング手法を実践している山本央子さんから学ぶうちに、すっかり解消できたそうです。

「訓練所での経験があるからこそ、今の自分がいます。でも、訓練所時代とはまったく違う自分に生まれ変わりました」と、細野さんは語ります。


犬と飼い主さんの笑顔に囲まれて

ジャーマン・シェパードの燦(さん)くんを連れての結婚を経て、千葉県柏市にDog’s home SUNKSをオープンした、細野さん。

子犬から成犬、そして老犬までが通えるドッグスクールやトリミングサロンのトレーナーとして、さらにはペットホテルのオーナーとして、充実した毎日を過ごしているそうです。

千葉県 柏市 Dog’s home SUNKS 長友 心平 絵 壁

長友心平さんが描いた絵が印象的なSUNKS

「『これまで預けていたペットホテルでは、下痢をしたり吐いたりしていたのに、SUNKSから帰宅したらすごく体調も良くて、ストレスもなかったようです』、『驚きました。自宅でしか見せない行動をSUNKSでしています!』という飼い主さんの言葉は、すごくうれしかったですね~」と笑顔を見せる細野さんは、それを聞いて幼少時代の自分を思い出してもいたそう。

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ペットホテルやドッグトレーニングで預かり中の犬たちと

小学生の頃、自宅にも雑種の愛犬がいたのに、近隣の家の犬の散歩もさせてもらっていた細野少年。なんと、散歩中に預かり犬のシェットランド・シープドッグを逃がしてしまったことがあったとか。

「焦りましたね。全力で追いかけたんですが、もちろん追いつかず。でも、犬が楽しそうに逃げているのを見て、犬は遊び感覚なんだって気づいたんです。そこで、犬に背を向けて逃げてみたところ、思ったとおりボクを追いかけてきたので無事に捕まえられました(笑)」。

幼少時代に付き合ってきた犬たちが見せた笑顔が今ふたたび、目の前に思い浮かぶのだと、細野さんは満面の笑顔で語っていました。

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細野さんも犬たちも笑顔満開!

連載情報

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ペットにまつわる様々な雑学やエピソードを紹介していきます!

著者:臼井京音
ドッグライターとして20年以上、日本や世界の犬事情を取材。小学生時代からの愛読誌『愛犬の友』をはじめ、新聞、週刊誌、書籍、ペット専門誌、Web媒体等で執筆活動を行う。30歳を過ぎてオーストラリアで犬の行動カウンセリングを学び、2007~2017年まで東京都中央区で「犬の幼稚園Urban Paws」も運営。主な著書は『室内犬の気持ちがわかる本』、タイの小島の犬のモノクロ写真集『うみいぬ』。かつてはヨークシャー・テリア、現在はノーリッチ・テリア2頭と暮らす。東京都中央区の動物との共生推進員。

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