なぜ大飯原発運転差し止めは取り消されたのか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月5日放送)に国際政治学者の高橋和夫が出演。名古屋高裁金沢支部が大飯原発の運転差し止め命令を取り消した判決について解説した。

大飯原発運転差し止め取り消し~再び動かすにはいくつもある高いハードル

福井県大飯町の関西電力大飯原発3号機4号機の運転差し止めを周辺住民らが求めた訴訟で、名古屋高裁金沢支部は昨日、一審の福井地裁の判決を取り消し、差し止めを認めない判決を言い渡した。

原告コメント)福島の事故が起こって7年余り経つんですけど、このまま原発を動かしてもいいのか、不当な判決です。本当に原発を動かさなくても電気は足りている。それにも拘らず動かすということはやはり、福島の事故を再び起こすようなことを考えているのではないかと、怒りを感じます。

飯田)2基の危険性は社会通念上無視しうるほど管理・統制されているとして、住民らの人格権を侵害する具体的な危険性はないという判決です。判決文が読み上げられた瞬間、法廷内からは怒号も聞こえたというレポートもありました。
その一方で東海第二原発という茨城県にある原発ですが、原子力規制委員会が新規制基準に事実上の適合を意味する審査書案を出しました。これは被災原発としては初の出来事です。30日間のパブリックコメントを経て、これが出されるという事だそうです。原発については昨日かなり動きがありました。

高橋)高裁の判決が出ましたから、電力会社側としてはホッとしている。原発を再び動かそうという人たちは、やれやれという感情を持っているかもしれません。次々にほかの原発でも高裁の判決を求めていくことになると思います。ただ、裁判で勝っても周辺住民の不安は消えませんから難しいところです。東海第二の場合、特に人口密集地で100万人近い方が住んでおられて、もし万一事故が起こった場合、皆さんを避難させるのかという準備も十分にできない。身体に障がいを持っていらっしゃるとか寝たきりの方が1,000名ほどいると考えられていて、その人たちを全員安全なところまで動かせるのかどうか、という議論もあって、なかなか難しいです。
特に東海第二の場合は、すでに40年近く動かしていますから、これ以上動かすことは可能なのだろうかという議論もあって、もし原発を再び動かすということになると、越えなければいけないハードルはまだいくつもあると思われます。

現実的ではない絵に描いた餅のような計画

飯田)折しも、エネルギー基本計画というものが閣議決定されて、それを見ると2030年までと考えても、原発はベースロード電源として使う。一方で再生可能なエネルギーも2割強。これを主電源という形でも使うと。これが本当に可能なのか、20%も動かせるのか? という疑問もあります。

高橋)いまの反対している民衆のレベルを考えると、とても20%もいかないのではないかと。だからある意味、計画を作った人の希望的観測というか、これを書けよと誰かが言って書いたのかなという気はいたします。ちょっと絵に描いた餅ではないかなと思います。

飯田)そう考えると、新増設などには触れませんでしたね、今回も。
古い原発と新しい原発とを考えると、どっちがより安全なんだろうかと。

高橋)新たに原発を作るとなると難しい。新たに立地が難しいと、原発を動かしているときでも、すでにある原発の隣に作る、ということでどんどん1号、2号、3号と作っていったんですけど、それももう難しくなってきました。では日本のエネルギーはどうするんだということで、石油をめぐる情勢も難しい。日本はなかなか難しい所にいるなという気はいたします。

地熱発電は政治意識があれば可能

飯田)何とか地熱とかあの辺は日本が火山国なだけにとても有望だとも言われていますが、なかなか利用できていないですね。

高橋)私も実はアイスランドを取材したのですが、完全に地熱発電で動いていて、できないはずはないと思います。アイスランドで使っている技術はかなりの部分、日本の企業が提供していました。技術的には日本にもあるのですが、国立公園との兼ね合い、温泉業界との兼ね合いということもあるのですが、政治にやるという意識があれば解決可能な問題だと思うんですけどね。

飯田)もうすでに材料は揃っているんですものね。

高橋)地震があれば火山もある、地熱も利用できるということなんですよね。

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