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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第460回】
さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。
今回は、8月10日公開の『追想』を掘り起こします。
シアーシャ・ローナン×イアン・マキューアン ゴールデンコンビで感動を再び。
『ブルックリン』や『レディ・バード』など次々と話題作に主演し、24歳にしてアカデミー賞の常連女優と呼ばれているシアーシャ・ローナン。今世紀もっとも有名なイギリス人作家のひとりとされているブッカー賞作家、イアン・マキューアン。映画『つぐない』を大ヒットへと導いたタッグによって、新たな名作映画が世に送り出されました。
それは、長年映画化が熱望されていたイアンの傑作「初夜」を映画化した『追想』。原作者であるイアン自らが脚本を手がけ、原作とは違った解釈で描いたラブストーリーです。
1962年、夏。カルテットの一員となり大きな舞台でコンサートを開くことを夢見ている美しき野心家バイオリニスト、フローレンスは、ある男性と恋に落ちる。彼の名はエドワード。歴史学者を志す生真面目な青年だった。結婚式を無事に終え新婚旅行に向かった先は、美しい自然が広がるドーセット州のチェジル・ビーチ。しかしホテルに到着するやいなや、初夜を迎える興奮と緊張から気まずい雰囲気に。やがて口論へと発展し、フローレンスはホテルを飛び出してしまう…。
本作でシアーシャ・ローナンが演じるのは、若きバイオリニスト、フローレンス。青い瞳にブルーのドレスがとても映え、新妻の初々しさがあふれるその可憐さにはため息が漏れてしまいそう。美貌と才能に恵まれながらも厳格な父親と過保護な母親の間で育ち、心に闇を抱えている難しい役どころを演じきっています。
一方、エドワードを演じるのは英国俳優界の注目株、ビリー・ハウル。クシャッとした子犬のような笑顔が魅力的で、本作をきっかけに彼のファンになってしまう女性も多いのではないでしょうか。
本作の舞台となる1962年は、華やかな英国発のポップカルチャー“スウィンギング・ロンドン”が本格的に始まる直前で、まだまだ保守的な空気が社会を包み込む時代。若い二人が愛し合っているがゆえに起こってしまった“ボタンの掛け違い”は、生まれ育った環境の違いや家族にまつわる問題など、2人だけでは解決しきれないその社会的背景が持つ“困難さ”をも象徴しているよう。
“若さゆえの切ない物語”という受け取り方が出来ると同時に、もう少し俯瞰的に“大人の視点”で観ても面白い本作。文学作品ゆえの奥行きの深さが光る名作です。
追想
2018年8月10日からTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
監督:ドミニク・クック
原作・脚本:イアン・マキューアン(原作「初夜」村松潔訳、新潮クレスト・ブックス)
出演:シアーシャ・ローナン、ビリー・ハウル、エミリー・ワトソン、エイドリアン・スカーボロー、アンヌ=マリー・ダフ、サミュエル・ウェスト ほか
©British Broadcasting Corporation/ Number 9 Films (Chesil) Limited 2017
公式サイト http://tsuisou.jp/
連載情報
Tokyo cinema cloud X
シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。
著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/