新潟の名物駅弁「えび千両ちらし」、ネタが「隠れた」理由とは?

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【ライター望月の駅弁膝栗毛】
「駅弁」食べ歩き20年・5000個の放送作家・ライター望月が、自分の足で現地へ足を運びながら名作・新作合わせて、「いま味わうべき駅弁」をご紹介します。

えび千両ちらし

画像を見る(全9枚) えび千両ちらし

2月13日まで新潟県内の駅弁屋さん7社が共同で開催している「越の駅弁7箇所巡り」。「駅弁御朱印帳」を片手に各駅弁屋さんの直売所を巡って、オリジナルのスタンプを集めていく取り組みです。新潟・新津・長岡・越後湯沢・直江津にあるチェックポイントを回って、コンプリートすると特別なスタンプも集めることができます。今回は、新津にある「新発田三新軒」を訪ねました。

E653系電車・特急「いなほ」、白新線・西新発田~佐々木間

E653系電車・特急「いなほ」、白新線・西新発田~佐々木間

新潟「駅弁御朱印帳」の旅 ~新津駅弁・新発田三新軒(第6回/全7回)

秋田から3時間あまりをかけて、特急「いなほ」号が上って来ました。20年あまり前まで、この区間は特急「白鳥」が12時間以上かけて大阪~青森間を結んでいましたので、3時間は4分の1程度。でも、いまの在来線特急としては、十分に乗り応えのある列車です。ちなみに、白新線という路線名は、越後線の「白山」と新発田を結ぶ計画に基づいたもの。時代や周辺環境の変化によって、名前と実態が変わるのは、意外によくありますね。

三新軒ビル

三新軒ビル

新潟の駅弁では、「新発田三新軒」もその1つ。もともとは、羽越本線と白新線が接続する新発田駅の駅弁屋さんでしたが、駅前の区画整理に伴って新潟市に移転。いまは、新津の三新軒ビルに本社を構え、調理場も共有しています。「越の駅弁7箇所巡り」では、この新発田三新軒事務所がチェックポイントとなります。三新軒事務所と同じ2階なので、スタンプラリー感覚ですと、1ヵ所で2度オイシイ、ボーナスポイントがもらえた気分ですね。

えび千両ちらし

えび千両ちらし

新発田三新軒の“推し弁”は、何といっても「えび千両ちらし」(1380円)! 「駅弁味の陣2017」で見事、駅弁大将軍に輝いた名物駅弁です。絵はがきになった掛け紙の下には、いっぱいの厚焼き玉子が敷き詰められており、その下から、海老をはじめとしたいっぱいの海の幸が現れます。手に取ったときのずしりとした重みも大きな魅力の1つ。もちろん、新発田三新軒では一番人気の駅弁です。

オリジナルスタンプの押印

オリジナルスタンプの押印

三新軒ビルでは、新発田三新軒のお店の方と三新軒のお店の方が、入れ替わる感じで、それぞれのオリジナルスタンプを用意して下さいます。新発田三新軒のオリジナルスタンプは、「えび千両ちらし」の具材にちなんだえび・うなぎ・いか・こはだが描かれていました。

新発田三新軒のオリジナルスタンプ

新発田三新軒のオリジナルスタンプ

ここで購入すると、オリジナルボールペンのプレゼントもあります。営業時間は9:00~14:00。予約すれば16:00まで受け取り可能です(電話:0250-21-6220)。

えび千両ちらし

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【おしながき】
・すし飯……新潟米の精進合わせ
・うなぎ……蒲焼きのたれ仕込み
・こはだ……薄切り〆、わさび醤油からめ
・蒸し海老……酢通し醤油からめ
・いか……塩いかの一夜干し
・厚焼き玉子……出汁入り
・海老……むき海老のおぼろ
・ガリ……甘酢漬け

えび千両ちらし

えび千両ちらし

出汁の効いた厚焼き玉子の下から現れるえび・いか・うなぎ・こはだ。その下には昆布が敷かれ、ぎっしりと酢飯が詰められています。普通の駅弁では、メインのおかずは映えるように目立つ盛り付けが行われるのが一般的ですが、「えび千両ちらし」は、敢えてネタを「隠した」のが興味深いところです。『お客さまがいちばん楽しい駅弁を……』という、そんな作り手の“遊び心”と“お客様ファースト”の思いも、ぎっしり入った駅弁です。

E653系電車・特急「いなほ」、羽越本線・今川~桑川間

E653系電車・特急「いなほ」、羽越本線・今川~桑川間

見た目の玉子一色に反して、いろいろな海の幸が楽しめる新潟の駅弁「えび千両ちらし」。新潟~酒田・秋田間の特急「いなほ」号は、日本海の夕日にちなんだオレンジ色の他、はまなす色や瑠璃色の編成も活躍しています。3月のダイヤ改正では、一部の時間帯に4両編成で運行される列車も登場と伝えられています。その意味では、また違った色が、美しい景色に映えそうな「いなほ」号。新潟の海の幸とともに、もっと楽しみたい列車です。

(参考)JR東日本新潟支社ニュースリリース・2021年12月17日分

連載情報

ライター望月の駅弁膝栗毛

「駅弁」食べ歩き15年の放送作家が「1日1駅弁」ひたすら紹介!

著者:望月崇史
昭和50(1975)年、静岡県生まれ。早稲田大学在学中から、放送作家に。ラジオ番組をきっかけに始めた全国の駅弁食べ歩きは15年以上、およそ5000個!放送の合間に、ひたすら鉄道に乗り、駅弁を食して温泉に入る生活を送る。ニッポン放送「ライター望月の駅弁膝栗毛」における1日1駅弁のウェブサイト連載をはじめ、「鉄道のある旅」をテーマとした記事の連載を行っている。日本旅のペンクラブ理事。
駅弁ブログ・ライター望月の駅弁いい気分 https://ameblo.jp/ekiben-e-kibun/

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