「頭上建築」を携えて、北茨城と建築の魅力を伝える女性のストーリー
公開: 更新:
番組スタッフが取材した「聴いて思わずグッとくるGOODな話」を毎週お届けしている【10時のグッとストーリー】
きょうは「建築物の魅力」をアピールするため、有名な建物の模型を作ってかぶり物のように頭の上に乗せる「頭上建築」というパフォーマンスで話題を呼び、地域の町おこしも始めた女性のグッとストーリーです。
茨城県の最北端にある、北茨城市。明治時代、近代日本美術の発展に大きな功績を残した岡倉天心は、晩年、北茨城の五浦(いづら)という街に居を構え、横山大観ら有望な画家たちを呼び寄せて指導。亡くなるまでこの地で新しい日本画の創造を目指しました。その岡倉天心が、思索の場所として自ら設計し建てたのが、この街のシンボルでもある「六角堂」です。
その六角堂の模型を自分で作り、頭の上に乗せる「頭上建築」が話題を呼び、「さかなクン」ならぬ「建築ちゃん」と呼ばれているのが都築響子さん・26歳。
「建築はその街に人を呼び寄せたり、人の心にも影響を与える力を持っているんです。頭上建築で、建築にちょっとでも興味を持ってもらえたらと思って、学生時代に始めました」
都築さんは、東京藝術大学・建築科出身で、岡倉天心はその前身にあたる「東京美術学校」の創立者でもあります。天心に惹かれ、大学の図書館にこもっていろいろ調べていくうちに、六角堂の存在を知り、北茨城の街にも興味を持った都築さん。
一般の大学の卒業論文に相当する大学の卒業設計では、北茨城の廃校になった小学校の敷地に、こんな建物があったらいいなと想像してアートホテルの設計図を作りました。
「そうしたら偶然にも、北茨城市がその廃校を舞台にアートで町おこしを始めることになって、協力隊の募集を始めたんです!」
なにか運命的なものを感じ 、自分が作った卒業設計を見てほしい一心で協力隊に応募した都築さん。設計は採用されませんでしたが、その熱意を買われ、卒業後の去年4月から北茨城市の「地域おこし協力隊員」として、「芸術によるまちづくり」をプロデュースすることになりました。
北茨城に住まいを移し活動。1年目の去年は「桃源郷芸術祭」を企画。地元の人たちと協力し、予想を大幅に上回る5千人以上の人々を街に呼び寄せました。
「初めての経験で準備はてんやわんやでしたけど、来てくれた人たちが楽しむのはもちろんですが、北茨城の魅力を知るきっかけなるようにと思って……」という都築さん。
髪をピンクに染め、六角堂を頭に乗せて活動しているうちに、街の人たちにも声を掛けられるようになりました。「建築ちゃん」手作りの頭上建築は六角堂だけではなく、現在建築中の新国立競技場、東京タワー、渋谷のヒカリエなど10個以上あります。
「ヒカリエは重いんですよ(笑)」という都築さん。
いまは来年3月に開催予定の、第2回・桃源郷芸術祭の準備に向けて多忙な日々を送っています。
「せっかく建築科を出たのに、建物や街に貢献していないなと思って、北茨城の建築物に目を向けてもらうための活動も始めました」
都築さんは茨城大学の教授に協力を仰ぎ、学生たちと一緒に「まちなみ調査」をスタート。温泉街の多くの民宿がホームページを開設しておらず、民宿組合のホームページが一つあるだけで、十分なアピールができていないのが現状です。
「実際に民宿を回ってみると、どれもが特徴のあるお風呂を持っていて、個性的なおかみさんがいることがわかりました。泊まったら他ではできない体験がありそうです!」という都築さん。
「うちの売りはここですよ!」というアピールポイントを調査して、その成果をいま、一冊の本にまとめようとしています。そういう建物や人と触れ合う体験を通じて、北茨城を好きな人が増えていく方法を考えていきたいそうです。都築さんは言います。
「北茨城は海と山の両方があって、しかもその距離が近いんです! 海へも山へも車で10分で行けるのは、北茨城と神戸くらいといいます。自然に囲まれ、思いっきり創作活動ができる環境は、作家にとって理想的な場所。これからも北茨城と建築の魅力を一人でも多くの人に伝えられるよう、活動していきたいです!」
八木亜希子 LOVE&MELODY
FM93AM1242ニッポン放送 土曜 8:00-10:50
番組情報
あなたのリクエスト曲にお応えする2時間20分の生放送!
今、聴きたい曲を書いて送ってくださいね。