安価でカスタムオーダーできる日本製腕時計が80年間できなかったワケ

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腕時計を製造・販売する「株式会社Knot」の代表取締役社長・遠藤弘満が、黒木瞳がパーソナリティの番組「あさナビ」(ニッポン放送)に出演。Knot(ノット)を立ち上げた当初の困難を語った。

安価でカスタムオーダーできる日本製腕時計が80年間できなかったワケ
黒木)今週のゲストは国産の腕時計を製造・販売する、株式会社Knotの代表取締役社長、遠藤弘満さんです。
国産の腕時計Knot、わずか4年で人気ブランドに成長させた遠藤さんですけれども、最初から上手く行ったのですか?

遠藤)いやあ、大変でした。Knotのビジネスモデルは、時計のビジネスをされた方であれば、誰もが1度は考えるビジネスモデルなのですね。日本製で、アジアの中国の工場で作っている時計とほぼ同じ価格で、日本製のクオリティ、そしてカスタムオーダーができる。こんなものがあったら絶対売れるよと。これは誰もが1度は考える。じゃあなぜ80年間、誰もやらなかったかと言うと、できなかったのです。

黒木)どうしてですか?

遠藤)このビジネスモデルをいろいろな方にお話する度に、いつも同じことを言われました。「遠藤さんそれは売れるよ、できればね。できないからやめときなさい」と。
まず何度もお話しさせていただいたように、国産です。メイド・イン・ジャパン。日本製の腕時計の定義というものは、使っている機械、時計のなかに入っているエンジンの部分が日本製でなくてはいけない。これが大きなルールの1つ。もう1つは最後の組み立てです。アッセンブル(組み立て)を全部国内の工場でやらなくてはいけない。国産のこの機械は、日本で2社しか作っていないのです。この2社は皆さん聞いたことのある、大手国産メーカーさんの関連会社です。ですからその関連会社が、ライバルとなるような企業に、このムーブメントの機械提供はしないわけです。

黒木)ああ、そういうことか。

遠藤)もう1つはルールの方で、日本で組み立てを行わなくてはいけません。時計に限らず、1900年代後半から製造業において、日本のメーカーはどんどんアジアの方にシフトして行きました。日本は時計屋の大国ですから、当時は日本にも多くの工場があったのですが、いまや5件もありません。少ないキャパシティのなかで、当時ちょうど東京オリンピックが決まった。政府も「インバウンドが年間2,000万人、これからはメイド・イン・ジャパンだ」ということで、大手メーカーさんも海外で生産していたのをまた日本に戻したり、少なくなってしまった工場のキャパシティを取り合っていたわけです。ここに新参者が、「月500個で良いので組み立ててください」と言っても、まあ門前払いだと。この大きな問題が2つありました。

黒木)でもいまがあるということは、それをクリアしたということでしょう。

遠藤)どうしたかと言うと、日本のメーカーさんが海外に輸出したものを、逆輸入で海外から買い戻しました。香港ですとかシンポールですとか。あくまでも日本で作って1度海外に出たものを買い上げているので、ルール内なのです。

黒木)作るところは?

遠藤)全ての工場に足を運びましたが、全部から断られました。たまたまあるきっかけで、十数年前に潰れたと言われていた工場が、実はまだやっているという噂を聞き付けて行ってみたら、やっていたのですね。世間的には潰れているという噂だったので、大手さんも仕事を依頼していなかったのです。田舎の工場なのですが、売店も持っていて、自分で作ったものを会社の前の売店でだけ売っていました。ですからもう職人さんもほとんどいなかったのですが、社長さんが非常に良い方で、お話をしたら、「よし、昔うちで働いていた職人を可能な限り呼び戻してあげる」と言ってくれたのです。

黒木)すごい(笑)。奇跡だ。

遠藤)ということで、まず1ヶ月500個から始めようということで、500個から作るようになりました。

黒木)大変でしたね。

安価でカスタムオーダーできる日本製腕時計が80年間できなかったワケ
遠藤弘満/株式会社Knot代表取締役社長

■1974年・東京都生まれ。
■通信販売会社のバイヤーを経て輸入商社を設立。
北欧の時計ブランド「スカーゲン」の総代理店になるも「スカーゲン」が買収され、代理権を失うが、2014年に「株式会社Knot(ノット)」を設立。

■ノット製品の価格帯は腕時計本体で1万~2万円が中心。ベルトは5000円前後。
心臓部にあたるムーブメントは日本の大手腕時計メーカーの系列企業による日本製。
本体とベルトを自由に組み合わせ、自分好みにカスタムできるのが特徴。
■デザインから製造、販売までを一貫して手掛けるSPA(製造小売り)方式のため、大手と同様の製品をより安く売ることが可能に。(*日本製腕時計が1~2万円程度で)
■また素材選びにも徹底的にこだわり、日本のものづくりの力を結集。
素材も組み合わせを楽しめるファッション性が高く評価されている。
■ネットでの購入が可能なのはもちろん、実店舗となるギャラリーショップも国内外で10店舗以上展開。
■創業4年目(平成29年11月期)の売上高は21億円に到達。

ENEOSプレゼンツ あさナビ
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49

番組情報

黒木瞳のあさナビ

毎週月曜〜金曜 6:41 - 6:47

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毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳

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