外国人労働者受け入れの前に必要な“職場環境の改善”

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月15日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。外国人労働者受け入れについて、別の視点から解説した。

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外国人労働者受け入れ~政府が5年間で最大34万5,000人の試算を公表

外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理法改正案について、政府は2019年度からの5年間で、最大34万5,150人とする受け入れの見込み数を公表した。業種別では介護の分野がもっとも多く、6万人が見込まれるようだ。

飯田)来年4月に新たな制度が導入された場合に、その規模がどうなるかについての試算ですね。政府が衆院法務委員会理事懇談会で公表したようです。数字について朝刊各紙が詳しく出しています。例えば介護は「5年間で累計5万から6万で、初年度は5,000人」でいちばん多いそうです。

鈴木)介護は本当に切羽詰まった分野ですね。この問題について野党の意見で1つ正しいと思うのは、「法律の大枠を決めて細かいものは後ということで、どんどん先に決まって行く。順番がおかしい。中身がスカスカだ」と。こうやってその都度まず人数が出てくるわけですが、本当はこういうことは先に全部プランがあって、それで法律の議論をしなければいけない。これは確かに「拙速だ」という野党の指摘通りだと思います。
ただ、一方で拙速はあえてそうしているのかもしれない。現実として、すでに留学生や技能研修生などの外国人労働者が、いま日本のいろいろな分野・業種にいます。実態は進んでいるのに、むしろ法律が遅れていた。だから、法律を追いかけて合わせなければいけない。かと言って、この問題は必ず移民につながる。移民政策について、まさに安倍さんの足下の自民党にも反対派はいる。だから、できるだけ現実に追いつくために、急いで法律を整備する必要があるが、内輪には反対論もある。だから、できるだけ早く短期間で、あえて拙速に行っている背景があるのだと思います。しかし、この問題は法律も含めて取り組まなければいけない緊急課題でもあるわけです。

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政治 外国人労働者・野党合同ヒアリングで技能実習生ら(左)から聞き取りを行う野党議員ら(右奥)=2018年11月8日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

「まずはその職場環境の改善から始めるべき」という意見

鈴木)いろいろな反対論があるなかで、何が必要か。自民党内では「移民政策につながるのでは」とか「保険や社会保障問題はどうなるのか」という部分からの厳しい見方や批判もありますが、取材をしていて、新しい視点だなと思ったのは、公明党前代表で前国交大臣の太田昭宏さんの意見です。「労働力不足で外国人が必要と言っている職場の環境をもう1度考えるのが先じゃないか」と言ったのです。「基本的に外国人労働者を受け入れようとしている業種は、俗に言う3K(きつい・汚い・危険)が多い。日本人が3K職に来ない。だから外国人を呼ぼう、というのは違うだろう。まずは日本人でも3K職に希望を持って来るような環境づくりをやるべきだ」と。太田さんは国交大臣のときに、建設業などをかなり改善しているのです。公共事業に絡むのですが、建設業の労働単価を引き上げて、希望が持てるような職場にした。給料もちゃんともらえてやっていけるように改善をして来たのです。

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日本人も働けるような職場の環境作りが先決ではないか

鈴木)だから、いま「14業種で受け入れ」と言っているけれど、その14業種それぞれの監督省庁、大臣が、まず日本人が来ないと言われている業種を改善するのが先ではないか。「その努力をしてもどうしても人手不足のとき、初めて外国人の話になる」と言っていました。少し違う視点での手順論というか、慎重論ですね。
この問題の考え方は「外国人労働者をどうするか」とか「移民」という視点もあるけれど、「日本人の職場環境をどう改善するのか」というところなのではないか。これからもっと高齢化社会になって行きますが、高齢者でも、「建設業をやってもいいな」と思うような。

飯田)これだけ技術が進歩していますからね。

鈴木)こういう、まず日本人が「やってもいいよな」となる流れを作るべきです。こんな視点の議論も、ぜひ国会では必要だと思います。

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“日本人の働き方改革”のテーマとして考える必要がある

飯田)本会議で法案審議が始まるときに、山尾志桜里さんの意見で「なるほど」と思ったのが、「総理は外国人労働者を入れることで、日本人の給料を下げるつもりですか。賃金が下がるのですか?」という質問です。確かに、そこは賃金という面だけですが、太田さんの意見とかなり同じですよね。

鈴木)だから、まずは日本人がこの少子高齢化のなかで、どのような職場環境を作って行くかです。まずはそこをやるべきです。日本人の働き方改革のテーマとして、捉えなければいけないでしょう。そういう議論を、ぜひやってもらいたいですね。

飯田)経済界から出て来るのは、突き詰めれば「安い労働力が欲しい」になってしまいますよね。

鈴木)ある意味で目の前の喫緊の問題として、対処療法的なニュアンスがあると思います。しかし、それでは経済がよくなったら、簡単に帰国させるのか。それは違いますよね。「まずは日本人が働ける職場環境について、各大臣はもっとやらないとダメだ」と太田さんはおっしゃっていました。なかなか面白い話でした。

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