入管難民法改正案~議論すべき重要なポイント
公開: 更新:
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月12日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。入管難民法改正案の審議について解説した。
外国人就労問題~明日の衆院本会議で審議入り
明日の衆議院本会議で、外国人労働者受け入れ拡大に伴う入管難民法改正案が審議入りし、外国人受け入れ見込み数の公表や、安倍総理出席での趣旨説明と質疑が行われる。焦点の1つである在留資格のうち、日本にいつまでも在留できる「特定技能2号」の、具体的な技能水準の定義が「現場監督を担えるレベル」だと週末明らかになり、議論を呼びそうだ。
飯田)外国人労働者受け入れ拡大問題は「社会保険料の増加」も焦点の1つになっていますね。保険料の長期滞納者については在留は認めない方針だとか、具体的な話がポロポロ出ています。
須田)これまで注目されていたのは、「特定技能2号の資格をどうするか」です。なぜなら、この部分が場合によっては「移民を容認する形につながってしまう」と、反対論が根強いからです。家族の帯同を認めていて、条件を満たせば永住が可能になるため、事実上の移民になりますからね。
保険料滞納について重要なのは「制度の整備をどうやって進めるか」
須田)一方で「社会保険料の滞納問題を認めるかどうか」も1つの条件になって来るということですが、この保険料滞納に関しては2つポイントがあります。
1つはこうした福利厚生費(社会保険料)に関して言うと、会社側と働いている側が折半なのです。これまで日本は、例えば建設土木現場の「1人親方制」のように「個人営業者の立場で、全部自分で負担しなさい。会社は負担しません」と、会社は福利厚生費を負担することなく、いいとこ取りで使い倒してきた側面があります。ただ、ここ近年では、特に公共事業投資に関しては「1人親方制は認めません。きちんと会社側が名簿を作って負担しなさい」という形になって来ました。徐々にその部分については浸透しています。
とはいえ、民間の建設工事現場ではその限りではない状況にある。日本の仕組みと言うか、会社側の対応の仕組みも変わらなければいけない部分があります。
もう1点は、前回もこのテーマを扱った際に申し上げましたが、社会保険料の点で言うと、消費税率が5%から上がった時点でわずかながら年金介護、医療の保険料を負担する形になっているのです。そこと整合性をどう持って行くのか。「消費税は納めているのだから、こちらを滞納してもいいじゃないか」という議論も、もしかしたら出かねない状況です。だから、その辺に関してどうやって制度を整備して行くかですね。「滞納しているか否か」ではなく、制度次第なのです。
あらゆる省庁に関わってくる側面がある問題
飯田)入管難民法という「法律」だから法務大臣、法務省が主管官庁になっていますが、社会保険料の話なら厚生労働省も主管な部分があります。本当は省庁横断で議論しなければいけない課題が入管法の話だけになってしまっているのは、まだ細かい部分を詰められていないのかな、という気がします。
須田)そうですね。制度設計がまだ甘いと思います。話を突き詰めて行くと、税金の納税をしてもらうのだから、財務省も関係して来る。本来なら日本人に対しての行いと同様に、ある意味で歳入庁的な発想ですね。「社会保険料を漏れなく取るために、税制・納税の部分をリンクさせた方がより効率的で完全ではないのか?」という問題があります。先行してそれを外国人労働者に適用するのは、議論が分かれるところではありますが、納税の部分と社会保険料納付の部分は、やはりリンクさせるべきだと思います。
飯田)捕捉している企業の数でも、税務署と社会保障の部分だとかなり違うという話もありますね。
須田)それから、網の目の細かさですね。税務署はきちんと捉えていて、ほぼ完璧ですが、滞納者に対して納付してもらうという、社会保険料に関して言うと、まだ甘い気がします。
もう1点、先ほど話に出て来た法務省、財務省、厚生労働省ですが、警察庁も同じです。実は「在留資格証」というカード型の証明書がけっこう偽造されている。偽造グループによると、在留資格証と国民健康保険証を1セットで偽造して提供するのですよ。場合によっては、違法な在留者の摘発にもつながります。きちんと社会保険料を納めてもらう点でも、警察庁との連携も必要になると思います。
飯田)犯罪を犯して強制送還した外国人労働者は再入国を厳しくするとか、その辺も考えなければ治安の面もありますよね。
須田)「滞納分を納付しなければ再入国を認めない」とか、そのような形で対処が必要だと思います。
飯田)問題はかなり多岐にわたりますね。明日からの国会で、それがちゃんと議論されればいいですね。
須田)それには時間不足な部分もありますけどね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。