鉄拳のパラパラ漫画に心を揺さぶられる理由

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【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第520回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベリたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、11月23日に公開された『家族のはなし』を掘り起こします。


岡田将生×鉄拳、パラパラ漫画と実写が融合した感動作

鉄拳のパラパラ漫画に心を揺さぶられる理由
子どもの頃、教科書やノートの隅に少しずつ変化していく絵を描いてパラパラ漫画を作って遊んだ経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。パラパラ漫画の少しぎこちない動きには、デジタル全盛の時代において却って新鮮味があり、同時に懐かしい雰囲気さえ覚えてしまいます。

そんなパラパラ漫画で一躍人気者となったのが、お笑い芸人の鉄拳。彼が描くパラパラ漫画は、とにかく泣けることで有名。そのなかでも“号泣必至!”と言われている名作「家族のはなし」が長編映画となりました。

鉄拳のパラパラ漫画に心を揺さぶられる理由
今作「家族のはなし」は、鉄拳が2013年に長野県の地方新聞(信濃毎日新聞)で発表。インターネットなどを通じて瞬時に知りたい情報を得ることができる現代は、“新聞離れ”が若者層を中心に急速に広がっています。

そこで新聞離れが進むこの時代に、改めて新聞というメディアの意義を伝えようと、地元・長野県出身の鉄拳とコラボしてパラパラ漫画を制作。信州と都会が舞台となったこの作品は、鉄拳自身の体験も盛り込まれた感動作として各所で話題となり、第17回「アジア太平洋広告祭」ではフィルム部門・プレス部門でW受賞しました。

鉄拳のパラパラ漫画に心を揺さぶられる理由
リンゴ農園を営む優しい両親、徹と愛子のもとで育った一人息子の拓也。彼は幼少期にはスポーツで神童と呼ばれるも怪我により挫折、上京して大学生活の傍らプロを目指したバンド活動も頓挫。うまく行きかけても肝心な自分につまづいてばかりの自分に苛立ちを覚えていた。

久しぶりに里帰りしても、拓也は両親に八つ当たりをするばかり。それでも何も言わず、笑顔で息子を受け止めてくれる父と母に触れるうち、拓也は“父親が大好きだった頃の自分”を思い出し…。

鉄拳のパラパラ漫画に心を揺さぶられる理由
主演に岡田将生、両親役に時任三郎と財前直見、そして幼馴染役に成海璃子と豪華なキャスティングを配し、家族の大切さや親子の不器用な愛情をストレートに表現した本作。鉄拳も、アートディレクターとして本作に参加。ストーリーのキーポイントで、書き下ろしたパラパラ漫画と実写を融合するという新たな試みにもチャレンジしています。

鉄拳ワールドは、誰もが味わった記憶がある人生の挫折や幸福をストレートに描いていることが最大の醍醐味。私たちが心を動かされてやまないのは、その優しくも温かな“視点”によるものなのでしょう。

鉄拳のパラパラ漫画に心を揺さぶられる理由
家族のはなし
2018年11月23日(金・祝日)から全国ロードショー
監督:山本剛義
脚本:青塚美穂
原作・アートディレクター:鉄拳
主題歌:サイダーガール「dialogue」(ユニバーサルJ)
出演:岡田将生、成海璃子、金子大地、佐藤寛太、水田信二、渡辺憲吉、財前直見、時任三郎 ほか
©『家族のはなし』製作委員会
公式サイト http://kazokunohanashi.official-movie.com/

連載情報

Tokyo cinema cloud X

シネマアナリストの八雲ふみねが、いま、観るべき映画を発信。

著者:八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com/

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