ゴーン容疑者逮捕から半月過ぎ きょうは名車「ブルーバード」の命日

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「報道部畑中デスクの独り言」(第102回)では、ニッポン放送報道部畑中デスクが、2012年12月5日に引退した「ブルーバード」と、日産の歴史について解説する。

横浜の日産本社

日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者が逮捕されたのは、先月19日、半月が過ぎました。事件そのものの他、経営者の資質、会社のガバナンス(統治能力)、日仏の政府も巻き込んだ動きと、様々な視点で論じられています。

ところで、12月5日と言えば、日産のオールドファンにとっては思い出深い日です。

それは「ブルーバードの命日」…日産は6年前、2012年のこの日、新型セダン「シルフィ」を発表しました。それまで「ブルーバード・シルフィ」であった車名からブルーバードの名前が外され、1959年以来、53年4カ月、半世紀以上にわたったブルーバードの車名が消えたのです。翌日の朝刊各紙は「さらばブルーバード」「ブルーバード消える」「さよならブルーバード」…と、本来主役であるべき新車よりも大きな見出しで報じていました。

510型ブルーバードはサファリ・ラリーでも活躍した

ブルーバードは1959年、当時、小型車の定番だった「ダットサン210型」の後継、310型としてデビューします。そのとき、ブルーバードというペットネームが与えられました。その後、日産と言えばブルーバード、代表的車種として幾多のモデルチェンジを重ねますが、特に1967年に発売された510型と呼ばれる3代目は、名車としていまも語り継がれています。

スーパーソニックラインと呼ばれる直線的なデザイン、日産初の四輪独立懸架、三角窓のないデザイン、新設計のエンジン、そしてサファリ・ラリーの大活躍…シルフィの発表会で志賀俊之COO(当時)も、510型に「あこがれて入社した」と語っていました。

この510型を見ますと、いまでも当時の日産のCMテーマ「世界の恋人」が脳裏をよぎります。その後、910型(6代目)、U12型(8代目)などもヒットしましたが、そこに共通しているのはファミリーセダンという立ち位置は押さえながら、「走る」「曲がる」「止まる」の自動車としての基本性能の高さを持ち合わせていたことです。かつての「技術の日産」の真骨頂がここにありました。

510型(3代目)ブルーバード(1969年式)

しかし、時代は流れ、クルマの売れ筋はミニバン、コンパクトカー、軽自動車に移り、「セダン冬の時代」となります。U14型(10代目)が生産を終えて、「本筋」のブルーバードは消滅。パルサーと統合した車種が「ブルーバード・シルフィ」となり、サブネームの形で生き残りましたが、前述の通り、2012年のモデルチェンジを機にその歴史にピリオドを打ちました。

何よりも、日産有史以前からあったダットサンの源流を受け継ぐブルーバードの車名が消えたことに、当時、少なからぬ感慨を受けたのが正直なところです。ちなみに2018年10月の国内販売台数は、日産で最も売れているノートの9,740台に対し、シルフィは148台(日本自動車販売協会連合会調べ)と寂しい数字です。

日産ディーラー(東京都内で撮影)

さて、現在の日産です。激しい競争がある限り、好不調の波があるのはどんな企業にも当てはまりますが、日産の歴史をみますと、20~25年の周期でその波がやって来ていることがわかります。逆に言うと、いま起きている現象の萌芽は20~25年前にあったとも言えると思います。

今回の事件も、思えば20年前のルノーとの資本提携、ゴーン体制の発足に端を発するものでした。当時、日産は“瀕死”の状態にありましたが、その約20年前は日産で労使の対立が激しくなったころと重なります。そして、その対立の根源はさらに20数年前、1953年のいわゆる「日産争議」で第二組合が設立されたことにさかのぼります。

それらの賛否については様々な見方があり、断定は避けますが、こうした権力闘争が企業の体力を徐々に奪い、ルノーとの提携につながったのは衆目の一致するところではないかと思います。

ルノーの日産への出資比率は約43%、対する日産のルノーへのそれは約15%。ルノーは日産への議決権を保有するのに対して、日産はルノーへの議決権を持たず、その関係を見直すかどうかが焦点になっています。

東京・銀座にあった旧日産本社

現状の資本関係を維持するならば、ルノーが日産を支配するという状況は続き、合併・統合の可能性がついて回ることになります。一方、日産がルノー株を10%買い増して議決権を得ると、両社の関係は対等に近づきます。

一見よさそうに見えますが、対等であるということはこれまで迅速に決まっていた物事が停滞しないか、決めるためには多数化工作…権力闘争がまたぞろ始まるのではないか。これまでの歴史を見ると…ブルーバードの例を見るにつけ、この会社は歴史をあまり大切にしていないような節があるだけに…そういう懸念も拭えないと思います。

両社、特に日産に必要なのは、目先のことにとらわれず、連綿と続く歴史に学び、20年後に会社及びアライアンスがどうなっているか、どうして行くかを見据えて知恵を出していくことだと思います。それがいま流行りの言葉でいうところの「サステナブル=持続可能な」関係に発展することになるでしょう。ある意味、チャンスと言ってもいいかもしれません。

一方で判断を誤れば、「100年に1度の改革」と言われる自動車業界で、淘汰の憂き目に遭うことも否定できません。20年先のことは誰にもわからないのです。(了)

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