あけの語りびと

「歩いてみないと気づかなかった」徒歩で本州一周、その楽しさと人生のあり方とは

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それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

本州一周を徒歩で達成した 小田征一 さん

「人生は、三毛作だと思うんです……」と言うのは、千葉市美浜区にお住いの、小田征一(ゆきかつ)さん、75歳。このほど5年をかけて、本州一周を歩いて達成されました。

昭和18年、館山市で生まれた小田さんは、大学を卒業後、京成電鉄に入社します。
「当時の京成は、鉄道もバスもデパートも、みんな赤字でね。唯一明るい話題になるはずだったスカイライナーが、過激派に放火され、成田空港の開港が遅れて、大変な時期でしたね」

小田さんの趣味は登山で、20代の週末は仕事が終わると、そのまま新宿駅へ直行し、仕事の憂さを晴らしに山を登りました。
しかし30代は仕事が忙しくなり、山へ出かける時間もなく、仕事、仕事の毎日だったそうです。

本州一周の途中、大好きな山登りもときどきするとのこと

40代、50代の小田さんは、まさに〝出世街道〟を驀進! 京成電鉄から独立した「京成バス」の社長に、60歳で就任。その後、会長を経て、71歳で相談役を退任されました。

さあ、これからの人生をどう過ごそうか、と考えた小田さん。
「人生は、三毛作だと思ったんです。生まれてから学校で学んだ時期が、まずは一毛作。会社に勤めて、がむしゃらに働いた時期が二毛作。そして、これから自分のために過ごす時期が、三毛作だと……」

大きな理由はなく、『一人旅をしてみよう』と思いついた小田さん。電車やバス、飛行機、豪華客船、そんな旅もありますが、自分の足で日本各地を見て歩く、これこそが旅の醍醐味ではないか。

一人歩きで使うリュック 重さは10キロにもなるそう

試しに、千葉県一周をしてみました。1日25キロほど歩いて、その日のうちに電車で自宅に帰る。再び前回の終了地点に戻り、その続きを歩く。これを繰り返し、延べ19日間で千葉県一周を達成……これが思いのほか楽しかった。
さあ、そこで本州一周、一人歩きの旅が始まります。

自宅を拠点に、月ごとに7日から10日ほど歩いて、一旦、新幹線で自宅に帰り、旅の日記などを整理します。翌月、前回の終了地点へ戻って、再び歩き始めます。

旅の記録は小さなメモ帳に書き込み、帰宅後に大きなノートへ整理する

5年前の平成25年に千葉県の銚子を出発し、太平洋側を西へ西へと歩き、およそ3年かけて山口県の下関に到着。次に、千葉から北上し、茨城、福島、宮城、青森をぐるりと回り、日本海に出て、秋田を南下し、北越、山陰を歩き、今年10月15日、山口県の下関に到着……延べ226日間、5,365キロを歩いて、本州一周を達成しました。

東日本大震災の爪痕が残る地域は、迂回を余儀なくされましたが、その他は海岸線をたどって歩きました。

旅の途中で神社仏閣には必ず立ち寄り、一律10円玉をお賽銭箱に

今年2月、日本海側は記録的な大雪に見舞われて前に進めず、夏の山陰地方では豪雨に出くわし、異常気象を肌で感じたそうです。
泊まる宿が見つからず、バス停や無人駅に野宿したこともありました。国道のトンネルで大型トラックが通るたびに、壁にへばりつき、雨や雪の日に車に泥水をかけられ、惨めな思いもしました。

忘れられない出会いが、ひとつ……。

「新潟の海岸線から佐渡島が見えたので、寄り道をしたんです。潰れそうな旅館に泊まったら、部屋の窓から大きな三日月が見えてね。宿の女将に『海岸でお月見をしませんか』と誘われ、出かけてみると、さざ波が月に照らされ、まるで光の道のように伸びていてね。その女将が『私は旅館に嫁いでから3回しか島を出たことがない』と言うんです。気ままな一人旅をしている私に、『あなたと一緒に旅に出てみたいわ』とぽつりとつぶやいたときは、しみじみと人生を考えてしまいましたね……」

「一人旅は、もちろん寂しいものだ」と小田さんは言います。
「でもね、山や川が、木や草が、風や鳥が、みんな友達になってくれるんですよ。いやぁ、日本がこんなに美しい国だったとは、歩いてみないと気づかなかっただろうな……」

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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