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『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”

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『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。

『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”

森に囲まれた「音浴博物館」の外観

長崎県西海市、西彼杵(にしそのぎ)半島の、携帯電話も通じない森のなかに、小さな、小さな博物館があります。

音を浴びると書いて「音浴博物館」……ここは、16万枚のレコードをはじめ、蓄音機や大型スピーカー、真空管ラジオ、ジュークボックスなどを所蔵するだけでなく、レコードを見て触れて〝アナログの音〟が聴ける、体験型博物館です。

『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”

「音浴博物館」の初代館長、栗原榮一郎 さん

初代館長は、元・職業訓練校の講師、栗原榮一郎さん。岡山県倉敷市に住んでいた1990年代の後半、当時ゴミのように捨てられていたSPレコードや手回し蓄音機を見捨てられず、アパートに持ち帰りました。

すぐに部屋のなかは収集品であふれてしまい、倉庫を借ります。しかし、そこも出て行かなければならず、安く借りられる場所はないかと、インターネットを使って全国に問い合わせをしていると、長崎県庁から「空き家を貸してもいい」と連絡がありました。それが現在の西海市大瀬戸町にある小学校の分校跡でした。

『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”

小学校の分校跡である木造校舎を改築、博物館を建てた

ここは、満蒙開拓団の引き揚げ者が、戦後入植し、その子供たちが通っていた分校でした。昭和51年の廃校後は、日本に押し寄せたベトナム難民の収容施設になりますが、その役目を終えて朽ち果てたままの建物を、栗原さんはひと目で気に入ります。

安定した仕事を辞めた栗原さんは、2000年12月末からボランティアの手を借りて、わずか4カ月で建物を修理し、10トントラック4台分のコレクションを運び込みます。しかし地元からは、「どこの誰だかわらかないよそ者に、ガラクタを持ち込まれては困る」といった反対の声も上がったそうです。

2001年4月、「音浴博物館」が開館し、話題を呼び、お客さんが訪れるようになりますが、なにせ昭和32年の木造校舎、増える所蔵品の重みで床が抜ける危険性が出て来ました。
そんなとき、国から補助金が出ることになります。このときも「個人の趣味のために、国の予算を使っていいのか」という声が上がったそうです。

『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”

音浴博物館が所蔵するLPやスピーカーの数々

個人で始めた「音浴博物館」は、その後、大瀬戸町の「安らぎ交流施設」の事業として採用され、昭和の小学校の雰囲気を残して、2004年に全面改装されました。

ここまで苦労の連続でしたが、やっと本当のスタートが切れる! そう思った矢先、栗原榮一郎さんは体調を崩します。無理をしてきた体はガンに蝕まれ、すでに手遅れの状態でした。
音浴博物館が再スタートした翌年の2005年5月23日、59歳でこの世を去ります。

『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”

貴重なLPやジャケットなどが数多く展示されている

音浴博物館の館長代行、高島正和さんは言います。
「栗原さんは背が高くて、あご髭をはやし、飄々としていて、みんなに愛された方でした。でも、ここにたどり着くまで、相当な苦労とストレスで身を削ったんでしょうね。息を引き取ったときは、安らかで、やりとげた顔をしていましたよ。もし天国の栗原さんに伝えることができたら、『あなたのやって来たことが、いま見直されていますよ』と言ってあげたいですね」

音浴博物館へは、長崎駅からバスやタクシーを乗り継いで行かないと、たどり着けません。最近は旅行会社のツアーで訪れる人も増えています。長崎市内、ハウステンボス、世界遺産の教会群などを回りますが、ツアー客から「ここがいちばん良かった!」という声も多いとか。

時代物のスピーカーから流れてくるレコード音楽に耳を傾けていた人が、その包み込むような優しい音に感動して、涙をポロポロとこぼすそうです。
森に囲まれた「音浴博物館」……心を癒しにやって来る人が年々、増えています。

『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”

カーペンターズのジャケットが並ぶ

音浴博物館では、2018年12月24日まで『カーペンターズ展』を開催しています。
この企画展は、雲仙市の吉原朋子さんのコレクションを中心に、カーペンターズの貴重なレコードや来日公演のチケットなど、およそ70点が展示されています。

『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”

「カーペンターズ」カレン・カーペンター氏のお墓(上)

吉原さんは38歳で、カーペンターズを知らない世代……ドラマで流れていた曲でカーペンターズを知り、カレンの歌声に魅せられてCDを買ったのが始まりでした。

ある日、親戚のおばさんから「カーペンターズのカレンはもう亡くなっているのよ」と聞かされ、あまりのショックで号泣してしまったとか……。その後、カーペンターズの歌をレコードで聴いてみたいと、ネットオークションなどで買い集めて来ました。
LPレコード「ナウ・アンド・ゼン」のジャケットにデザインされたロサンゼルス近郊の実家を訪ね、カレンのお墓参りもしたそうです。

『音浴博物館』~アナログの音が聴ける“体験型博物館”
12月8日(土)・9日(日)、音浴博物館で、吉原さんの解説とカーペンターズのレコードによる「X’masコンサート」が開かれます。

「音浴博物館」
西海市大瀬戸町雪浦河通郷342-80
TEL:0959-37-0222
開館時間:10時~18時
休館日:月曜日(祝日除く)
入館料:大人 510円、小中学生 250円、小学生未満 無料

音浴博物館の最新情報は、Facebookで検索してください。
https://www.facebook.com/843395045678996/

上柳昌彦 あさぼらけ
FM93AM1242ニッポン放送 月曜 5:00-6:00 火-金 4:30-6:00

朗読BGM作曲・演奏 森丘ヒロキ

番組情報

上柳昌彦 あさぼらけ

月曜 5:00-6:00 火-金曜 4:30-6:00

番組HP

眠い朝、辛い朝、元気な朝、、、、それぞれの気持ちをもって朝を迎える皆さん一人一人に その日一日を10%前向きになってもらえるように心がけているトークラジオ

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