米中閣僚級貿易協議~背景にある中国の覇権挑戦
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月31日放送)に元航空自衛官・評論家の潮匡人が出演。30日に始まった米中の閣僚級貿易協議について解説した。
米中閣僚級貿易協議始まる~不均衡是正なるか
アメリカと中国による閣僚級の貿易協議が、30日に首都ワシントンで始まった。会談ではアメリカ側の代表を務めるUSTR(アメリカ合衆国通商代表部)のライトハイザー代表と中国の劉鶴副首相が向き合い、貿易不均衡の是正や知的財産権の保護などについて協議している。90日間の交渉が3月1日まで残り1ヵ月となるなかで、両国がどれだけ歩み寄れるかが争点となる。
飯田)去年の11月にブエノスアイレスで行われた米中首脳会談のなかで90日間の猶予が与えられ、期限まであと1ヵ月となりました。貿易だけの話に留まるでしょうか?
潮)そもそもこの問題の背景に、貿易以外の安全保障を含めた世界の覇権をめぐる米中の対立があることからこの問題について考えていかなければ、一面的な見方に終わってしまいます。単なる貿易の摩擦ということであれば、残り1ヵ月の間に何らかの妥結が図られる見通しも出て来るだろうと思います。しかしながらファーウェイに絡む安全保障上の問題がありますので、貿易問題があと1ヵ月で妥結しても、根本的な対立は解消されないと認識すべきでしょう。
背後にある安全保障上の問題
潮)単に貿易のことであれば、米中双方の言い分は立場が逆転しているような印象すら与えます。中国側が自由貿易の重要性を語り、アメリカはアメリカファーストと言っているので、それだけを見れば日本は中国側に肩入れしても良いような変な図式になっています。しかし、日本はあくまでもアメリカの同盟国であり、安全保障上の問題が背後にある上でこの問題について見ていかないと、米中の間に立って良いとこ取りをしようという下心を持つと、途方もないしっぺ返しが来ると思います。
大陸国家・中国の海洋国家・アメリカへの挑戦
飯田)もともと中国は、太平洋は米中で2分割できるという話をしていました。最初にこの話が出たのは10年くらい前でしょうか? そうすると中国は着々と物事を進めていると考えて良いですか?
潮)次世代の通信網を中国が握ることになって来ると、安全保障上の問題にも直ちに結びついて来ることだと思いますし、そもそも国際政治学の1つの考え方では海洋国家が世界の覇権を握り、それに大陸国家が挑戦する。それによって戦争が起こり、覇権が循環して行くというジョージ・モデルスキーさんという学者の打ち立てた理論があります。まさに海洋国家のアメリカに対して、大陸国家の中国が挑戦しているという図式で捉えるべきであり、島国の日本としてはどちらと手を携えるべきか明らかだと思います。
飯田)もともと大陸国家だった中国が、ここへ来て海へ進出しようとしています。空母も自前のものを作って3隻体制にする話も出ていますけれども、この脱皮は上手くいくのですか?
潮)少なくとも日本が持っていない空母を保有、運用していますので、一定の進捗が見られます。先程紹介した海洋国家、大陸国家という区分けは時代遅れであるという指摘も確かにあって、中国は海どころか宇宙にまで進出しているという新しい時代から考えると、これまでのような図式で世界を見て良いのかという疑問が生じるのだろうと思います。
宇宙進出の足場を固める中国
飯田)その延長で、宇宙で言うと中国は月の裏側まで行こうということで、ロボットを使った月の裏の探査に成功しましたよね。これはインパクトのある話なのですか?
潮)それは各国が最近そういう活動をしていない、あるいはそこまでの余力が無いというなかで中国が足場を固めているわけですし、これまでの間、衛星の破壊実験にも成功して来ました。アメリカが直近で掲げているミサイル防衛の戦略が、例えば弾道ミサイルの発射直後に宇宙からレーザービームを発射するなどして迎撃する考え方です。まさに宇宙が戦場になっているなかで、中国がそこに狙いを定めているということが重要だと思います。
飯田)中国、あるいはロシアも念頭にあるのかもしれませんが、アメリカ本土を防衛するレーダー施設の一部を日本にも作る報道がありましたよね。あれは日本の防衛に対して何かあるのですか?
潮)もちろんそれよってアメリカの核の傘がより丈夫になりますので、日本の安全保障にも資するということになりますし、そうした重要な施設が日本にあればアメリカとしても日本を同盟国のなかでも重視せざるを得ません。我々としては協力すべきテーマではないかと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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