中国全人代から何が読み取れるか?
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月6日放送)に国際政治学者の高橋和夫が出演。5日開会した中国の全国人民代表大会(全人代)について解説した。
中国全人代が開幕~国防費は去年より7.5%増加
中国の国会に当たる全国人民代表大会、全人代が開幕した。国防費は去年より7.5%多い、日本円でおよそ20兆円を計上。また今年の経済成長率目標を6%~6.5%に設定するとしている。
飯田)日本の国会とはだいぶ仕組みが違うという感じもある全人代ですが、国防費がきょうは注目されていますね。読売新聞は一面、トップで伝えています。
高橋)経済が6~7%で伸びれば、格好つけずに自然増のようなつもりだと思います。特別に力を入れたということではない。これまで以上に割り振ったということでもない。さりながら額としては日本の4倍です。
ただ中国人はアメリカを見ていて「まだアメリカの4分の1だろう」というところでしょう。日本は自分と中国を比べるのですが、中国はおそらくアメリカと比べていて、まだまだぐらいの気持ちかもしれないです。
飯田)今回はだいたい1兆2千億元、日本円に直すと20兆円弱ということですが、GDPが1千兆強と考えると2%くらい。そう考えると規模としてはそれくらい。
高橋)日本がかつて1%と言っていて、人件費を入れていなかったので実質はそれほど変わらない数字ということで、無理をしている感じは受けないのですが、それでも周辺諸国にしてみれば中国の軍事力が確実に大きくなって行くのは、あまり気持ちのいいことではないですよね。
航空母艦を造る中国はオールドスクール
高橋)ただ見ていますと、中国のやっていることは航空母艦を造るとか目立つことをやっているのですが、アメリカでは「大きな航空母艦を海に浮かべていたら、ミサイル1発で沈められてしまうから航空母艦を造るのを止めよう」という議論が強いです。この間辞めたマティス国防長官などは、航空母艦止めよう派でした。でも航空母艦は存在感があって、政治的なアピールもできるので造ろうという人たちもいます。そういう意味では中国はオールドスクールと言うか、古い本流の方。もしかしたら1周遅れで首位に立っているような雰囲気のような気もします。あれだけ莫大なお金を使うのであれば、他のことにという発想はまだないのかもしれません。
飯田)先の大戦の主力の作戦ですから、70年以上前の概念がそのまま残っているということですよね。
高橋)第二次大戦が始まってから戦艦武蔵を造っていたような、そんな雰囲気かもしれません。決して戦争で試して欲しいとは思いませんが、軍は常に前の戦争の準備をします、前はこうだったからと。でも次の戦争は違うことが起こる。第一次大戦のときにはお互いに塹壕を掘ってヨーロッパでやりあったから、フランスは一生懸命前もって掘っておこうと作った。一方ドイツはもう塹壕の時代ではないと戦車を沢山作った。結局勝ったのはドイツでした。古い時代に適応しているのかもしれないなと。中国の人は賢いからきっと分かっていて議論しているとは思いますが。とりあえず政治指導部が国産空母で行くのだということで、文句が言えなくてやっているのかもしれません。
飯田)アメリカで「空母はどうなんだ?」と考えている人たちにとっては「しめしめ、空母に金を使ってくれている」という感じかもしれない。
高橋)アメリカの航空母艦が中国のミサイルの餌食になりやすいということは、中国の航空母艦がアメリカのミサイルの餌食になりやすいということですから。ただあの航空母艦が実際に海岸線に来るという、心理的な圧力は強い。潜水艦が強いミサイルを持っていても海に潜っていては見えませんから。そういう意味では航空母艦が持っている心理的な力を中国は使いたいということかもしれません。
ハイテクでアメリカを抜くという“中国製造2025”には言及せず
飯田)経済の面で言うと、アメリカとの間で貿易のみならずという感じで角を突き合わせていますが、この見通し、全人代で何か変化はありましたか?
高橋)私がいちばん強調しているのは、書いている新聞もありますが、中国がハイテクでアメリカを追い抜くのだという、中国製造2025をはっきり言わなかったですよね。アメリカはそれにいちばんカチンと来ていて、アメリカはハイテクの国、自分たちが科学技術の分野で世界をリードして来たという自負が強く、1950年代にソ連が最初に人工衛星を打ち上げたときにはすごいショックを受けていました。
飯田)スプートニクショックですよね。
高橋)それと同じことが起こるのではないかという議論で、中国はそれには気が付いたみたいですね。頑張るのは頑張っていいけれど、別にアメリカ人の神経を逆なでする必要はないので、「黙ってやろうぜ」ということだと思います。
飯田)そこは鄧小平氏が言っていた韜光養晦(とうこうようかい)に戻るという感じなわけですか。
高橋)その言葉を思い出してくれたのかなということです。でも鄧小平氏は軍事面ではあまり目立たないようにと言っていたのですけれどね。
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