タイ総選挙~本来の政治を取り戻すチャンスを逸してしまった
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月25日放送)にジャーナリストで拓殖大学教授の富坂聰が出演。8年ぶりに行われたタイの総選挙について解説した。
タイで8年ぶりの総選挙
タイでは24日、8年振りの総選挙が行われ、軍政のトップを務めているプラユット暫定首相の続投を目指す国民国家の力党がリードし、軍と対立するタクシン元首相派のタイ貢献党が第2位となっている。いずれの政党も単独過半数には届かず、連立の動きが予想されるが、プラユット首相の続投が濃厚となって真の民主政治への意向とは程遠い結果となった。
飯田)タイの総選挙、軍政からようやく選挙ということになりましたが、どうご覧になっていますか?
富阪)まだ軍政が続いているということは、リゾート地としてのタイのイメージとそぐわない感じがありますよね。タクシン派と反タクシン派の戦いのときは、本当に町のど真ん中でものすごい闘いをしていました。
飯田)赤いシャツと黄色いシャツ、ありましたよね。
富阪)タイでは王様が出て来て治めたりしますよね。
飯田)大体いつもそう。
利害調整をできないタイの政治は力量が低い
富阪)国民の強い求心力として王様の存在があることで、安定材料になっている半面、争いがその下で起きると、とことんまで闘うところもあって、これは長引くだろうと思います。さらにその下で、軍が変な錘の役割を果たして来ている。その利害調整は、政治が本来いちばん最初に持っている機能であるべきで、自分のことを主張するのも勿論いいと思うのですけれども、そうではなく、利害調整を王様なり宗教なりにあまりにも委ねすぎているような気もします。軍では無く、政治が出て行って利害調整するという機能を取り戻すチャンスだったと思うのですけれども、それを逸したなという感じはしますね。
飯田)確かに真ん中で妥協案を探るということが、こうなるとやりづらくなってしまう。
富阪)よく誤解されているのですけれど、本来政治というものは日本でも最近在りますが、主張を前に出すということでは無く、そもそもは利害調整なので、それができないということは政治家の力量が低いということです。タイの政治家の力量が低いというように外から見られているのは残念なことだと、彼らが自覚しなければいけないですね。
それを徳の高い王様や仏教が役割を果たしているので、そちらに委ねてしまっている部分があるのかなと思います。実は世界を見渡すと、台湾も同じような状況になっていますので、これは1つの潮流であるような気もします。
飯田)国民国家が分断されてしまうという。
富阪)ええ。かなり大きな分断するようなテーマで、さっきのイギリスも同じですね。こういうものが1つの傾向だから、タイだけの特有の問題とも言えない部分もあると思うのですけれどね。
どの国も中国に対して二分される
飯田)あと是非お聞きしたいのが、タクシン派には中国の共産党がかなり入っているのではないかとか、東南アジア全体に華僑のネットワークが強いようなことも言われているではないですか。この辺は政治に対して何かあるのですか?
富阪)中国に対する態度は、どこの国も二分されます。観光客が中国からタイに大量に来る、そうすると大体現地で迷惑をかけるので、それに利益を得る人とそうでない人に割れてしまう。日本もそうですが、国会からすべて真っ二つになるでしょう。アメリカもパンダ・ハガーとドラゴン・スレイヤーと言って真っ二つになります。これは中国と向き合う国の特徴であって、中国はそのどちらかの利害と結び付くことが多い。その範囲を越えるものでは無いと思います。ただ中国の影響というものはあります。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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