扉座とすみだパークスタジオが、2019年4月、50歳以上を対象とした演劇部を設立した。「スターを目指すアマチュア集団」として、基礎から実践的な内容のものまで、多角的な演技レッスンを行っている。なぜ、いまシニアを対象とした演劇部なのか、扉座主宰・「演劇部」顧問の横内謙介に訊いた。
「すみだパークスタジオ演劇部」を作ることになったきっかけは?
横内)すでに別のシニア教室に通った経験のある方たちから、扉座でもシニア向けの教室をやって欲しいと言う声がありました。小劇場系のものは珍しいと思います。
演劇、とくに小劇場やアングラ的なモノは、青春の思い出とするのがいままでの常識でしたが、歳をとっていまからやりたいという声がこんなにあるなら、これからは生涯関われるものとなるのかもしれない。そんな予感を感じたのも、創った理由の1つです。
なぜ50歳以上なのでしょうか?
横内)扉座の劇団員よりは上の年齢層を集めたいなと。ちなみに扉座の旗揚げメンバーは現在57、8歳です。当初はもう少し上の世代を考えていましたが、リサーチすると、40歳後半ぐらいからのニーズが最も多いようだったので、ここで区切りました。
今回は何人の応募があったのか、そして何人の方がオーディションに合格したのですか?
横内)29人の応募があり、全員合格にしました。演技の巧拙、経験の有無などは選考の基準にせず、やる気だけをみました。全員やる気に満ちていて、落とす理由がありませんでした。予定数オーバーですが……。
今回の応募者で最高年齢の方は何歳でしたか?
横内)72歳です。
応募した方にはどんな職業の方がいるのでしょうか?
横内)高学歴と、高キャリアの方がとても多いのに驚きました。現役新聞記者とか、会社社長とかがいます。学生時代に芝居をやっていたが、夢をあきらめて真面目に働いて来た、或いは家庭に収まった、という人が大半で、青春の思い残しを抱いている人がこんなにいるのか、と驚きます。この人たちが若かったころ、小劇場の芝居は大学生がやるものだったのが、たぶん影響しているのだろうと。扉座は、80年の小劇場ブームの中心にいた学生演劇あがりの集団でした。
部員になると、どんないいことがあるのでしょうか?
横内)今回は、扉座の本公演の一場面にアンサンブルとして参加します。いきなりの真剣な舞台体験です。また年内に、演劇部の公演を予定しています。
ここからいろいろな舞台やドラマなどで使われる、スター俳優・女優が生まれないかなと、私は期待しています。
尚、レッスンは毎週土曜日の14時~17時(基本)。レッスン料は1年間で11万4000円を4回に分けて支払う。今期の募集は終了しているが、次回は来年3月頃にオーディションを開催する予定とのこと。
横内謙介
劇作家・演出家・扉座主宰/すみだパークスタジオ演劇部顧問・演技実技主任講師
1961年生まれ。
'82年、扉座の前身「善人会議」を旗揚げ。
活動は劇団だけにとどまらず、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』、ジャニーズ、AKB48等アイドルの舞台、サンリオピューロランドの人気ショー『kawaii kabuki』等、創作は、ストレートプレイからミュージカル、小劇場からメジャー舞台、古典芸能から現代劇まで多岐にわたっている。
'97年、劇団附属の養成所を設立。'10年に小・中学校生を対象とした「あつぎ舞台アカデミー」(主催:(公財)厚木市文化振興財団)、'14年に高校生以上の若者を対象とした「マグカル・パフォーミングアーツ・アカデミー」(主催:神奈川県)の塾長・主任講師に就任。俳優・アーティスト・人材育成に力を注いでいる。
1992年 『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』にて第36回岸田國士戯曲賞受賞
1999年 スーパー歌舞伎『新・三国志』にて第28回大谷賞を史上最年少で受賞
2015年 スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』にて大谷賞を再び受賞
*問い合わせ先
■すみだパークスタジオ 03-3625-4640(平日9:00~17:30/土・日・祝休)
■扉座 03-3221-0530(平日12:00~18:00/土・日・祝休)